悪魔がウチにおりまして・154
地雷子ちゃんが捕まっている。
コレ、どうすんのよ。
「ねぇ、牛……じゃない、ダレ?」
隣に居た人物は牛以外ありえないので聞く必要が無いのだが、あえて聞くしかあるまいて。
くたくたのトレンチコート、頭にはこれまたくたびれたハットをかぶり、無精ヒゲを生やした男が立っていた。
「ニンゲンさん、無粋はよしてください。ボクですよ」
なんでこう悪魔って面倒なヤツばかりなんだろう。
「こんな煙い夜にはタバコが似合いますね」
それ、砂糖じゃん。
「あ、ニンゲーン!兎田さーん!」
コンビニ入り口で刃物を向けられている悪魔は私たちに気付くと手を振ってきた。
アホの子かな?
「しかたない、仕事をしてきますか」
牛はシガレットを咥えながらゆっくりとパトカーの横に進んでいく。
「あなた!近付かないように!」
牛は警官に呼び止められるとなれなれしく肩を組みながら
「お巡りさん、すみませんね。アレ、知り合いなんです」
顎をしゃくりながら説明している。
「兎田さーん!」
「お前!騒ぐんじゃないよ!」
緊張感のない悪魔。
普段の悪魔の力を考えたらその反応なんだろうが、あなた今の見た目、地雷子ちゃんだからね?
「お兄さん、その子はボクの友だちでして。なんでそんなことになっているのか聞いてもいいですか?」
「このヒト、お金が欲しいみたいでーす。妹のちゅじゅつ費だってー」
悪魔、大事なところを噛むな。
「お兄さん……妹さんはそんな風に奪った金で命救われても喜ばないんじゃないですかい?」
お兄ちゃん犯人の刃物を持つてがブルブル震えだす。
「たしかに、あなたに感謝するかも知れない。でも、将来お兄さんが犯罪を犯して手に入れたことを知ったら、どう思うでしょうね」
「……お、オレは」
なんか説得できそう、牛すげえ。
犯人は刃物をゆっくりと下ろしていく。
その時、牛は指を突きつける。
「ミミさん、ゴー!」
「アッパー!!」
周囲、キョトン。
油断している犯人の顎に綺麗に決まった地雷子アッパー。
20㎝ほど宙に浮き、そのまま後ろに倒れていく犯人。
「……か、確保」
間の抜けた警官の号令。
そりゃ犯人伸びてたらそうなりますわ。
ウチらは交番に居る。
危ない事しちゃだめと叱られながら、お茶を出されている。




