悪魔がウチにおりまして・153
「男はシガーを咥えると深く息を吐く。
『この瞬間がたまらない、この至福のひと時が』
今度は肺に空気を満たす。
この甘ったるい香りはオレの疲れを癒して……」
「ちょいちょい、いきなり何してるの」
牛がいきなり始めた1人語りを途中で遮る。
「なんですか、せっかく雰囲気を出したというのに」
砂糖菓子のシガレットで雰囲気を作るんじゃない。
タバコじゃなくてよかったけども。
「で、なんでしたっけ?」
「アンタが悪魔と兄弟って話をしたら変な小芝居始めたんでしょうが」
シガレットをポリポリかじりながら納得の表情。
「まぁ、兄弟とかそういう関係ではないんですが。悪魔って逆にみんな兄弟みたいなものですし」
悪魔と羊と牛が兄弟……濃いな。
「その目は気にしないようにします」
牛はそう言うとのんびり立ち上がり外へ向かう。
「あれ、帰るの?」
「そろそろミミさん見に行ってあげないと。すねているでしょうから」
そういう面倒見の良さもお兄ちゃんっぽいんだよなぁ。
「私もついていきましょ。あの子が無駄遣いしてないか見とかないと」
「あなたも大概お姉さんですけどね」
牛は微笑む。
やかましいとばかりにどつくも、ひょいっとかわした。
できる。
コンビニに向かっているはずなのだが、どこに行ったかは検討が付かない。
近所には大手3社のひしめく三国志。
どこから行ったものか。
遠くからサイレンの音が聞こえる。
嫌な予感。
爆裂魔・地雷子ちゃん、もとい悪魔がコンビニを解体していないとも……。
しかし聞こえてきているサイレンは消防ではなくパトカーのものである。
ふう、一安心……数、多くありません?
「ニンゲンさん、ヤバいです。パンダを追いましょう」
………………パトカーね!
「ち、ちちち、近寄るな!」
パンダ、じゃないサイレンの音を頼りに追いかけるとお約束通りコンビニにたどり着く。
ねぇ、そのコンビニで刃物を持った男がいるでしょ?
で、捕まってるのが地雷子ちゃん。
「ニンゲンさん、コイツは事件かもしれませんよ」
起きてんだよ、目の前で!




