悪魔がウチにおりまして・148
ウチらは牧草の中に……。
じゃなかった羊宅に居る。
枕が変わると眠れない、そんなことは今までなかったけどさすがに床材まで変わると眠れないものである。
これが畳からフローリングくらいだったら関係なく眠れるんだろうが、いきなり芝生の上で寝ているようなものだからね。
他のメンツ、悪魔、クモ、狐は難なく寝たようだ。
うぱ?浮いてる。
「ニンゲン、もう朝なのです。早く起きないと遅刻するのですー」
おっと、もうそんな時間か。
浅い眠りのせいで寝た気がしない。
「ニンゲン、今日はケーキ買ってくるので早く帰ってくるのですよ」
「ケーキ?なんで?」
「今日はひな祭りなのですよ?」
他人の家に来てまでやるか?
「それでは、桃の節句を祝って」
『カンパーイ』
はたしてひな祭りは祝うことなのか、悪魔が祝っていいのか。
様々なツッコミはさておき、帰るとパーティが開かれる。
「ボクもお呼ばれしていいんですかね?」
ビールのコップを片手に泡を舐めている牛がから揚げに手を伸ばす。
疑問に思っているのに箸が動くのはさすがというべきなのだろう。
「いいんじゃない?人数多い方が楽しいし?」
「オレも居ていいのか困ってます」
お前は困れ。
誰だ、ザリガニ呼んだ悪魔は。
「タンク殿は我が領域で獅子奮迅の働きをちました。襲撃してきた魔龍を撃退ちた出来事は伝承に残るでしょう」
あっちの世界トンデモなこと普通に起きるな!?
「アイツ、そんなヤバいのだったんすか?」
ザリガニはおちょこにビールを注ぎ、溢さないように慎重に傾ける。
ターコイズブルーの殻がほんのり赤くなって、コレ何色だ?
「割と?ひとつの集落滅ぼちたと言い伝えが」
狐の話を聞いたザリガニはがたがたと震え始めた。
知らぬが仏とはよく言ったものだねぇ。
うぱがから揚げにかぶりついていて、頭の上からハートを飛ばしている。
そうか、から揚げ好きかー。
「タンク3号、がんばりましたねー」
悪魔がザリガニを撫でている。
エビ背をスッとまっすぐにするザリガニ。
まぁ、トラウマよね。
「ミミ君、魔龍の管理制御ってウチの会社の管轄では?」
「やべっ」
悪魔ー!?
ウチには悪魔がいる。
ひな祭りでも通常運転の悪魔が。




