悪魔がウチにおりまして・144
ウチには悪魔がいる。
いきなりジャージを引っ張り出して来た悪魔が。
「ニンゲンは逆上がりできますか?」
唐突に地雷子ちゃんから話しかけられて思わずのけ反ってしまう。
「昔はできたけど、今はどうかぁ……どうして?」
「先生!ボクに逆上がりを教えてください!」
その言葉でいろいろ察しましたが……マジで?
そんなこんなでやってきました近所の公園。
ジャージ地雷子もなかなかな光景だけど、なぜ私も?
しかもお前黒ジャージなのに私真っ赤で目立ちすぎるでしょ。
「ほら、こういう時になんて言いましたっけ?病は気から!」
壮絶に言葉を間違っている。
私が病になりそうですよ。
「おや、悪魔にニンゲン。こんな寒いところで何をしているんだい?」
頭を抱えていると通りすがりの……ネコ?
「定期的に忘れるのはやめてくれないかな?キミたちの物語に対して影響が少ないのは認めるけどね」
……あー、いたねぇ、不思議ネコ。
「なんだか不名誉なあだ名がついている気がするが、ボクは別に心が読めるわけじゃない……と言っておくよ」
冷静にネコから話しかけられているのに動揺しないのは前に会っていたからなんだな、うんうん。
「徹底的に無視するつもりかな?」
「お外でネコと話していたら危ない人に見られるでしょう?」
私の言葉にネコは目の前で脚を開き股を舐め始める。
「ニンゲンはなぜかボクらを見かけると声を高くして甘えた様子になると思っていたよ。猫撫で声とはよく言ったものだね」
コヤツじゃなきゃ私もそうなっていた可能性がある以上、強く言えないじゃないか。
「ネコちゃん、逆上がりできますかー?」
「キミも物怖じしないね。いつか大けがをする気がするよ」
そう言いながらもネコは鉄棒に上り、前脚をかけてぐるぐる回る。
うん、それは大車輪だな?
「ネコちゃんすごーい!はい、こっちむいてー」
悪魔は鉄棒ネコをムービーで録っているようで。
「はぁ、後はネコに教わってね」
こんなジャージ羞恥、さっさと脱いでしまいたいのだから。
後日、その判断をとても後悔することになろうとは。
「宿主殿、コレ、ミミ殿ですよね?」
狐がスマホを出すとそこにはぐるぐる回るネコと地雷子ちゃんのムービーが写っていた。
「あのアホの子!」
「……今から叱るのであれば無意味かと。この”りついーと”を見てください」
……2,000越えてるねぇ。
「見なかった、いいわね」
「致ち方ありませんな」
ウチには悪魔がいる。
ネットの使い方が上手い、悪魔が。




