悪魔がウチにおりまして・143
ウチには悪魔がいる。
無事審査を突破したらしい悪魔が。
「ニンゲン、今日はボクの奢りなのです!たくさん食べるのですー!」
いやにテンションが高い理由はさっきも言った通り、ぎりぎりながら確定申告が終わったかららしい。
そのテンションから、今夜のご飯は悪魔が準備。
メニューはなんとすき焼き。
よほどうれしかったんだろうね、よかったよかった。
「……ボクを招待するって新手の嫌がらせだと思いません?」
私のとなりで卵を溶いている牛の言葉には納得せざるを得ない。
「共食いになるの?」
「別種ですし、この姿が本体ってわけでは。ただ、見た目牛なことは自覚しているもので」
本体じゃないのね、意外。
「ニンゲン、お肉食べないのですか?」
悪魔はほっぺをハムスターにしながらはふはふと肉と米を頬張る。
野菜も食べなさいと本当は言うところだけど、この子ヤバイ量の食材用意したから食べてくれるのはありがたい。
「僭越ながら、ネギと白菜はボクの畑から」
しれっとモグラがいるけど、野菜を提供してくれてるので文句はない。
この子の畑の野菜、美味しいのよねー。
「これからミミ君はきちんと準備をするのですよ?」
白滝をちゅるんとすすりながら羊が次の肉に手を伸ばす。
おい、草食動物。
「ニンゲン。鍋物は戦争なのです。弱ければ飢え、強ければ食う……」
いやな弱肉強食もあったものだねー。
「ほら、クモ食べてる?」
クモはテーブルに付けないので私が取ってあげてるけど、結構お腹いっぱいの様子。
分体を出して皆で食べてカロリー分散するくらいは食べているらしい。
狐は野菜オンリー。
同じケモノ系を食べるのは憚れるのかと思いきや。
「牛肉、苦手なんです」
なんか納得いかない。
「ニンゲン、鍋はいいですね。みんなでワイワイできます」
笑顔を振り撒きながら、豆腐を食べる悪魔。
熱かったのかむせている。
「慌てて食べるから、ほらお水」
グラスに注いだ水を差しだすとくぴくぴ飲んでいる。
こんな平和な晩御飯、良いのだろうか。
悪魔から奢ってもらったと思うと罪深い気がするが、コレは合法です。
ひとつ心がかりは。
うぱ、ずっと鍋見てるんだよなぁ。
ウチにはたくさんの動物がいる。
うぱにご飯あげる方法ないかなぁ。




