悪魔がウチにおりまして・142
ウチには悪魔がいる。
さっきから書類に頭を抱えている悪魔が。
確定申告。
ニンゲンでも特定の人種においては頭を抱えるものであるものの、ここまで悩むことはないだろう。
「悪魔、テストって何やるの?」
原因はあちらの世界の確定申告がテスト形式であることをこの子が忘れていたせいであるのだが。
「えっと、昨対だとミミック退治と、オーガの説得でしたね」
「なんて?」
確定申告でしょ?魔物退治はおかしいでしょう。
「1人で事業をしているのであればそれ相応の強さが求められるのですー……」
だからさっきから魔物大全を読み耽っているのね。
「あのザリガニにぶっ放した雷使えば簡単に倒せるでしょうに」
割と強力な雷落としていたことを思い出し、言ってみると眉間にシワを寄せる。
「倒しちゃダメなのです。戦闘不能にする必要あるのですが、相手も住民ですから」
そのテスト、なかなかブラックですなぁ。
むしろその審査員になる魔物に幸多からんことを。
「言っても意外とバイト料高くてですね。いい臨時収入になるんですよ」
シレっと入って来た牛に背筋を伸ばす。
心臓に悪いったらありゃしない。
「アンタ、審査員やったことあるの?」
牛は頷く。
「と言うか、毎年の業務になってます」
「兎田さん!!確定申告手伝って!」
一も二もなく悪魔は牛の膝にしがみつく。
牛は脚を振って振りほどこうとするがなかなかの力でくっついて離れないようだ。
「カンニングはいけません。ボクも首になってしまいます」
「そこをなんとか!」
悪魔必死だなぁ。
「ミミ殿、普段から一夜漬けだから」
狐はふぅとため息を吐きながら残っていた芋羊かんをついばんでいる。
小さく切り分けた羊かんをクモに分けているのでいっか。
「ミミさん、確定申告失敗しても別に再審査受けられますよ?」
「審査費没収じゃないですかぁ。一発なら返って来ますしー」
それは真剣になるわ。
「なんでそんなややこしいルールになってるの、そっちの確定申告」
ここまでくると申告ではなく、本当に審査である。
「昔は普通の報告だけだったんですけどね。なんかいつぞやに申告にの時にニンゲンに迷惑をかけたそうで。それ以来ちゃんと力加減ができるかのテストに……あれ、その原因って」
「さー、テスト勉強頑張るです!兎田さん!ありがとうございました!」
悪魔は慌てて牛を畳の中に押し込み魔物大全に向き直る。
……原因、コイツじゃね?




