悪魔がウチにおりまして・141
ウチには悪魔がいる。
考えたら3匹も顔を出すんだよなぁ。
「ニンゲン。ミミ君はいないのですか?」
私がウチに帰るとどこからか羊の声がする。
あたりを見回していると、アクマイマイに入った羊。
保護色でわからんかった。
「また勝手に入って。後でコロコロしておかないと悪魔に怒られるよー?」
替わりばんこと言っても譲らないんだから、知らぬ間に使われたら眉をつりあげるだろう。
まぁ、コヤツは勝手に何度も入っているんですけどね。
「大丈夫です、ちゃんと消臭剤撒いておきますので」
そこまでするなら自分で買えばいいのに。
「して、ミミ君はいないのですか?」
「最近はオカリナ練習のために引きこもってるよ」
『入ルベカラズ』の札の付いた異空間を指さすと羊は目を細める。
なんじゃ、その表情。
「閉じ込められた場所を楽器練習に使うの、キモが座っているというか、なんと言うか」
あ、それアンタも思うのね。
「で、なんの用?伝えておくから」
ヒツマイマイ……(ゴロが悪いな)姿の羊はこちらを向くと空間の穴を見ている。
「本人に直接言いたいんですけどねー。こちらの世界でも同じようなことあるって聞いてますし」
それは割と秘密なこと?
「あ、出てきた」
「ニンゲン、お帰りですー……今日は早かったですねー」
微妙な間は羊がお気に入りの寝袋に入っているところを見て、無言で持ち上げて揺すって抜くための間です。
相変わらず力強いなぁ。
「なんか伝えることがあるらしいよ」
ぺっと抜き出された羊を指さして。
悪魔が自分が収まり直してから。
「羊さん、何か御用ですかー?」
怒ってる、怒ってる。
「……ミミ君、そろそろ確定申告の時期です。書類の用意、お忘れなきように」
あっちにもそんな制度あるのか。
アクマイマイはさっと青ざめる。
「か、くて、いしん、、こく」
え、何?なんでそんなに?
「ニンゲン、こちらの確定申告はですね……テスト形式なのです」
羊がほくそ笑みながら起き上がる。
なんで税金報告がテストなんじゃい。
「では、ミミ君ごきげんよう……せっかく手伝うために来たというのに……己の無礼を呪うことです……」
そう言うと羊は玄関から颯爽と帰っていった。
ウチには悪魔がいる。
寝袋まで真っ青に染まった、悪魔が。




