悪魔がウチにおりまして・133
ウチらは狐のビルに居る。
羊の会社、潜入調査です。
そうは言ってもビルの一室。
そんな隠れる場所があるわけでもないから探ろうにもバレバレじゃない?
「初歩的なことだよ、ニンゲン君。こんなこともあろうかと」
悪魔は穴あけドリルと妙なチューブを持ち出した。
「何これ」
「ファイバーカメラを知らないのかね、ニンゲン君」
「普通に犯罪」
そしてその話し方ムカつくからやめなさい。
「仕方ありません。ボクがお部屋に入って観察します」
モグラが部屋に入るなら面倒だからみんなで入ればよくない?
「えー。せっかくの探偵ですのにー」
悪魔がぶーたれているが、モグラの食材調査にそんな手間かけられますか。
「ボクはそれでも。きちんとお野菜使ってくれているのであればいいので」
「分かりました。ボクも部屋に入りますね」
悪魔はキラッと目を光らせた。
めっちゃ怪しいけど何をする気なのだろうか。
「御用改めである!ヤギさん、あなたは食材不正使用の疑いが」
ウチらに先に部屋に入らせたと思ったらアホをやって。
目を丸くしている羊に頭を下げながら悪魔を逆さ吊りするから勘弁してください。
「職場見学をしたいのです」
モグラ、一般論正解。
「良いですよ。そうは言っても書類整理だけですけども」
羊はとんとんと紙束を叩きながらメガネをかける。
「ヤギさん、発注が遅いので…」
モグラが口を出している最中に電話が鳴る。
「もしもし。あー、スエヒロさん。追加発注ですか?ジャガイモ2ダースですね。明後日まで?困りますね、すでに発注時間は過ぎております。ふむ、今後玉ねぎとニンジンも増やす?少なくとも今週はお願いします。…ふう、在庫があって助かりました。ぽんさん、何か言いかけていませんでしたか」
モグラは押し黙ってじっと羊を見る。
「いえ。お忙しい中見学ありがとうございます。帰ります」
モグラは頭を下げて部屋を出ていった。
「文句言わなくていいの?」
「ボクは、甘えていました。ヤギさんはきちんと取引して折り合いつけながらウチの野菜を売ってくれています。ボクも社長なら見習わねば」
おい、また社長の知り合い増えたんだけど?
「ふ…すべてはお見通しだったのだよ、ニンゲン君。…そろそろ下ろして」
そう言えば逆さに担いだままだったわね。
ウチにはクモがいる。
…カレー、作れたんだね。




