悪魔がウチにおりまして・132
ウチにはモグラがいる。
なんでいるのよ。
仕事から帰るとモグラが頭にシャンプーハットをかぶっていた。
なにしてるんだろう。
目が合うと、ぺこりと頭を下げてきたのでこちらも会釈を返す。
「どうも、お先に頂きました」
「ご丁寧に」
…モグラ、風呂に入るのか。
「あれ、悪魔は?」
「ボクも探しておりまして。見つからないのでお風呂頂いていたのですが」
良い根性している。
さすが悪魔の友だちといったところか。
「アンタは連絡手段持ってないの?羊の角みたいなやつ」
羊の角がスマホみたいに電話できるのは驚いたが、アレはメールを打てるのか気になるところである。
「ボクはネットアレルギーなので、電子機器苦手なんですよね」
キャラ濃いなぁ。
あっちの世界にもそんな奇特な者がおりましたか。
「羊の会社に卸す時なにでやり取りしてるのよ」
「ファックスで充分なんですよね。18時までに送っていただければ。問題は時間を守ってくれないことです」
ふぅ、とため息を吐くモグラ。
こんな子にまで迷惑かけているのかと羊を折檻したくなったがそもそも野菜を押し付けたのこ奴ではなかっただろうか?
「売れ行きは上々?」
「多分…?」
出荷サイドがなんで売れ行き知らんのじゃ。
「羊さん、さすがと言いますか。どれだけ持って行っても次の日には無くなってまして。非合法に手を出してないか心配しているところです」
野菜の非合法販売ってなんなのよ。
「今回ミミさんに聞いてみようかなって思ってて」
ほう。
「もし変な売り方をしているのであればボクとしては出荷を止めないと」
好奇心はネコも殺すというが、変な興味を持ってしまったが最後、気になるじゃない。
「ただいまですー。あれ?ぽんちゃん、どうしました?」
悪魔に事情を説明すると目を輝かせた。
「それは、いけませんね。この名探偵が謎を解き明かさねば」
押入れからパイプと帽子、コートを引っ張り出して悪魔が恰好付ける。
そう言えば推理小説読んでたわねー。
「さて、助手のニンゲン君、さっそく調査開始です」
ゲンコツを落としながら、2匹と一緒に部屋を後にする。
こういう悪乗りも時として悪くないでしょ。
ウチにはクモがいる。
…ご飯遅くなるけどと言ったら泣いていたクモが。




