悪魔がウチにおりまして・131
ウチには悪魔がいる。
何やらそわそわしている。
「ニンゲン、甘いものは好きですか?」
唐突に悪魔が聞いてきた。
ちらりとカレンダーを見ると、そういうことかと頷く。
「割と好きだよ」
悪魔も可愛いところがあるなぁと思いながら答える。
「分かりました。そうしたら出かけてくるのです」
悪魔は地雷子ちゃんに変化して出かけて行った。
うむ、期待しておるぞ。
「宿主殿、ミミ殿はなぜあのように張り切っているのですか?」
狐が節分に作ったきな粉をご飯にかけながら尋ねる。
まだ残ってたんかい。
「狐ちゃん、世間ではバレンタインと言ってね、チョコレートを贈り合う風習があるのよ」
「ほう」
まぁ恋愛とかいろいろ言われておりますが、なんか珍しいチョコを贈り合う感じがメジャーな気がしている。
「なるほど。それならば某もチョコを用意ちたほうがよろちいのでしょうか」
「チョコレートであれば、よいカカオがありますよ」
出たな、モグラ。
「カカオ豆貰ったところで加工できないでしょ」
「ち…それならば農園で作った99%カカオチョコを」
「甘いの、よこしなさい」
甘いという言葉に反応してうぱが砂糖ミルを出した。
それ振っても99%は苦いでしょ。
「お客さん、わがままですね。仕方ありません、ヤギさんのところに出荷しているミルクチョコを持ってこさせましょう」
やっぱり、売れなくて廃棄処理扱いか。
「取引先を呼び出すとは良いご身分になりましたね」
羊はむくれながらも板チョコを10枚ほど持ってきてくれた。
「しかし、今日はチョコがよく出ます、何かあるのですか?」
「アンタ、バレンタイン知らないの?」
どちらかと言うと西洋の文化でしょうに。
「あー、なるほど。でもそれを流行らせたのは日本ですよ」
え?そうなの?
「もともとは関係ないので」
そう言うと羊は十字を切った。
アンタがやるな。
でも、悪魔は知ってたよね?
「ニンゲン、バレンタインプレゼントなのですー」
その夜悪魔はこじゃれた包み紙の箱を私に渡して来た。
「ん、私も悪魔に」
「わわ、開けても良いのですか?」
悪魔は嬉しそうに包みを開けた。
「チョコー!ニンゲン、チョコ好きなのですか?」
「バレンタインだから…。アンタ、なにくれたの?」
悪魔のくれた包みを開くのと同時に悪魔が答える。
「おはぎ」
これはずんだ餡かな?




