悪魔がウチにおりまして・130
ウチには悪魔がいる。
最近音に敏感な悪魔が。
「あくまー。ごは…」
「びっくりしました…。ニンゲン、大声を出さないでください…」
そんな大きな声出してないでしょうに。
この前、うぱ父(仮)との遭遇以来、悪魔は音に敏感になった。
正確に言うならばめっちゃビビりになった。
ただ、過剰なのよね。
クモの歩く音ですら背筋を伸ばすくらいになっているし。
「ミミ殿は一体何に遭遇なさったのですか?」
狐が小さな声で尋ねてくるが、正直あれが何かは誰も分からな…そうだ、羊は知ってそうだった。
『絶対言いません。命がいくつあっても足りませんので!』
おい、イマジナリー羊。
初めて聞く質問に対して自己主張をするんじゃない。
「…分からない」
狐は釈然としないようだが、私が分からないのは本当だから良いだろう。
「ちかし、ミミ殿は最近厄介事によく巻き込まれますなー」
ちらりとこちらを見ながら溢す狐。
おかしくない?
私のせいじゃなくない?
無礼を働いた狐にヘッドロックをかけながら、悪魔をちらりと見る。
うつむいたまま納豆ご飯を食べる様は見ていて切なくなるものがある。
…よし。
「羊ー。出てきなさーい」
なるべく静かな声で羊を呼び出す。
その声に反応し玄関から普通に入ってくる。
「さっき念を飛ばしたでしょう、私はわからな…」
イマジナリーじゃなかったんかい。
「じゃなくて、アレ」
悪魔を指さすと、羊は頷く。
「ミミさん、アレは事故です。でも大丈夫。うぱさんが一緒に居るのが何よりの証拠。信頼はわかりませんが少なくとも我が子を預けるくらいの信用はされているでしょう」
「ヤギさん…」
羊の言葉に悪魔が顔を上げる。
「ですので普段通りに。変に考えすぎるほうが身に毒ですよ」
年の甲だなー。長生きしているだけのことはある。
「ヤギさん、うぱさんのこと見えるんですね」
「…うん?見えませんヨ?」
あー、コイツもやっぱり見えていたのね。
「ヤヤ、用事を思い出しました!では!」
そそくさと玄関から逃げていく羊。
「…悪魔、気にしても仕方ないから、ね?」
「ですね。うぱさんの関係者なら良い者のはず。ニンゲン、ごめんなさい」
悪魔は珍しく頭を下げた。
良いんだよ、怖いのは怖いで。
ちょっぴり可愛かったし。




