悪魔がウチにおりまして・126
うぱが割れ目に吸い込まれた。
…どうすんのよ、コレ。
「ザリガニ、この割れ目、アンタのせいじゃないでしょうね」
とりあえずザリガニを逆さに持って振り回しておく。
「そーんーなーわーけーなーいー」
まぁ、わかって聞いてたんだけど。
「ニンゲン、どうしました?」
そっか、この子うぱ見えないんだった。
「うぱが吸い込まれちゃったのよ」
「…………はい?」
間が長かった気がする。
分かる、分かる。あの子にそんな物理作用ないと思うものね。
「どど、どうしましょう?またボクたちが入って閉じ込められたら…」
そう、それ。
この前悪魔が大変な目に合っているので不用意に中に入るわけにはいかない。
「うーん…そうだ!」
悪魔はスマホをかざすと通話を始めた。
「ミミ殿ー!来まちたぞ!」
しばらくして訪れたのは狐とクモ。
「この子たち呼んで何するの?」
「まずはクモちゃん、お願いするのです!」
クモは敬礼をすると、おしりからしゅるしゅると糸を伸ばす。
普段より太い糸を木の枝に結び付けてぐるぐる巻いていく。
なるほど、アリアドネの糸か。
「でも、割れ目自体が閉じちゃったら…」
「続いてごんちゃん、お願いするのですー!」
「合点です」
言うが早い、狐はブルブルと震えだしぶわっとしっぽが増えた。
増えた!?
「領域内での限定解除です。長くは保ちませんのでお早く」
「ごんちゃん、かっこいー!写真撮っていいです?」
スマホを向けてシャッターを切る悪魔。
長く保たないって言ってるでしょ!
クモの糸を長く長く巻き付けた悪魔は頷きながらクモに手渡す。
「戻ってくるとき2回引っ張ります。そうしたら巻き戻してください」
クモはしっかりと頷く。
「ニンゲン、コレで進んでも大丈夫です」
「裂け目の維持は某が行ないます」
「こんな化け物たちに挑んだのか…」
最後の感想はもちろんザリガニね。
「……行くしか、無いか」
意を決して悪魔と割れ目の中に進んでいく。
さて鬼が出るか、蛇が出るか。
既に悪魔は出ている。
怖いものなどあるものか。




