悪魔がウチにおりまして・122
ウチにはクモがいる。
なんか、マスク付けてるけど。
気が付いたらクモが布マスクを付けていた。
正確には自分の出した糸で編んだのであろう、糸マスク。
「クモ、どうしたの?」
「クモちゃーん、どうしましたー?」
私には言葉が分からないので、悪魔に通訳してもらうことにする。
ふんふんと頷く悪魔。
今まで放置してたけど、なんで悪魔ってクモの言葉わかるのかしら。
「わかりましたー。花粉症だそうです」
…うそでしょ?
「クモ殿、花粉アレルギーでちたか。某も昔エビを食べたときにジンマシンが止まらず…あの時は大変でございまちた」
狐、エビアレルギーだったの?
割と食べ物に使われてるから気を付けないと。
「花粉程度で情けないですねぇ、へくちっ」
もはや出オチ担当になっている羊。
部屋に入ってくるなりくしゃみをかます。
「ヤギさん、汚いですー。ほら、ティッシュです」
悪魔は箱ごとティッシュを放り投げる。
「ずびまぜんねぇ…。やはりこの世界は毒ばかり、さっさと制圧して差し上げたほうが」
花粉に関しては人間も苦しんでいるので悪魔に制圧されて花粉症消えるなら願ったりなんですが。
「しかし、もう花粉の季節かぁ。辛い人は辛いよね」
幸い花粉症とは無縁の生活を送っているのでよくわからない。
重い人は頭痛などに悩まされると聞きますが、クモは鼻水とか出るの?
「クモちゃんはマスクを外すとくしゃみが止まらないそうです」
悪魔、ナイスサポート!
花粉症って何か効くものなかったっけ?
スマホをすいすいして調べると腸内環境を整えると良いそうなんだけど…クモ、腸ってあるの?
「クモ、ワカメ食べられる?」
クモは首をかしげているが、スマホの画面を見せるとものすごい勢いでうなずき始めた。
今日の夕飯の献立。
ワカメご飯。
ワカメの味噌汁。
ひじきの煮物。
ワカメサラダ。
色、黒い。
クモは一生懸命むぐむぐしているけど、一日じゃ腸内環境変わらないからねー。
「ニンゲン、味が薄いのです…」
悪魔は黒く染まった食卓はお気に召さないようでした。
ウチにはワカメがいる。
おっと、ワカメを頑張って食べているクモがいる、だったね。
「薄いのです…」




