悪魔がウチにおりまして・118
時は悪魔を救出する前に遡る。
「ただいまー…あれ?」
ウチに帰るとクモが慌てている。
普段と違い、切羽詰まっているのはわかる。
でもクモの言葉はわからない。
どうしたら…。
そんな風に考えているときに畳が開く。
中から出てきたのは、牛だった。
「あれ、どうしたんですか?そんなに慌てて」
「ねぇ!クモの言葉、わかる?」
私の勢いに少し引いているのがわかるが、いくら何でもクモが慌てすぎている。
私も慌てているかもしれないがそれは知りません。
「クモさんです?…。うわぉ」
うわぉ言ったぞ、この牛。
「ニンゲンさん、誰か力強い知り合い、いません?なんて言うかこう、あるものすべて壊してくれそうな」
ごめん、そのこと聞いた瞬間にお姉しか出てこなかったわ。
「いきなり呼び出しって…私も暇ではないんだけど?」
少々むくれ気味のお姉だが、結局足を運んでもらえたのでありがたい。
「で?また新しい悪魔が出てきたから退治すればいいんだっけ?」
お姉の言葉に牛はビクッと背筋を伸ばす。
いや、自主的に正座している牛をいじめないで。
「力強い知り合いって言いましたけど。このヒト反則ですよ、何者なんですか」
「説明した通り、実の姉」
「ハイ、そこ。こそこそ話さない」
お姉はどこから出したのか、物差しを取り出して牛を叩く。
うわ、痛そう…。
「言いたいことがあるならちゃんと言わないと。暇じゃないって言ったでしょ?」
「ボクとばっちりじゃないですか?」
「やかましい」
2発目も黙って受ける牛。
何気一番迷惑かけてしまっているかもしれない。
「なんでそんな過去の遺物持ち出すかなぁ」
お姉は頭を掻きながらあぐらで座る。
「そんなに難しいの?」
「難しいというか…ねぇ?」
話を振られた牛はこくりと頷く。
「単純に力比べですね。閉じようとする力を強引に開く必要がありますので」
「力比べ…」
「つまり、ね?メノ諦めて?牛、見たことは黙ってなさい」
お姉のにらみで敬礼をする牛。
この後のことは、今は悪魔には内緒。
お姉の協力で悪魔の部屋を開ける。
後ろで真っ青になっている牛は口を押えていた。




