悪魔がウチにおりまして・1210
ウチには悪魔がいる。
お椀をしゃかしゃかしている悪魔が。
朝起きると、悪魔がふたつのお茶碗を重ねて上下に振っている。
「何してるの?」
「おにぎってます」
握ってないのよ、振ってるのよ。
「このようにおコメを入れて振ると、綺麗に丸くなるそうで」
悪魔が茶碗を開けるとそれはもう球のようなおにぎりが。
「確かにこれなら楽かも?」
「でしょー?中身はサバ缶です」
中身がずいぶん濃いものを。
「汁でびっしょびしょになるでしょ」
「ちゃんと汁気は切りましたよー」
確かに、中に入っているにしてはおコメは真っ白のまま。
「サバ汁はそのままアジを煮るのに使います」
軽い尊厳破壊を見た気がする。
「なんでおにぎり作ってるの?」
ご飯なら別に作る、つまり持ち歩く必要があるということだ。
「え、おにぎりって持ち歩かないといけないです?」
必要は無かったらしい。
「この前あくチューブで見たんです。こうするとマジックみたいに丸いおにぎりができるって」
あっちでもおにぎりの知名度があることが衝撃なんですが。
「ニンゲンの世界の食材はヘルシーで、ダイエットにいいと言われています」
日本食のイメージかなぁ?
「あっちのご飯、そんな高カロリーなイメージないけど」
ほら、私地獄や狐の住まいに行ったことがあるからね。
「あの辺りは観光客向けにさっぱりしてるです。奥地に行くと労働のため、高カロリー高塩分の食べ物が根付いています」
こっちと変わらない食生活をしている。
「考えたらこっちとそっち、食生活は変わらないのか」
「でも、こっちにしか腐り豆はありません」
久しぶり過ぎてなんのことかわからない人いるんじゃないかな。
「全部が全部同じなわけないものね」
「ですです。特に天ぷらはむずかしいのです」
それも狐家で以下略。
「そう、こちらで天ぷらは至難の業」
そこでなんで狐が胸を張るのかな?
「ごんちゃんち行くととても美味しい天ぷらが食べられたのですー」
「今度帰ったとき文字に聞かせてやります。泣いて喜ぶでしょう」
あのネズミ、さすがだねぇ。
「狐ちゃんは料理覚えようと思わなかったの?」
狐の耳がてろんと垂れた。
「某も作ってみたかったのです。でも文字が怪我をちたら危ないと」
あのネズミ、狐に対しては過保護なんだ。
「それでひとり旅の時に苦労ちましたが」
逆効果じゃないの。
「ごんちゃんが出発する日、泣いてましたものねー」
なんでアンタが出立の場にいるのさ。
「ほら、一緒に滝巡りしたので」
意外とコイツもちゃんと修行してるんだよなぁ。
ウチには悪魔がいる。
「コンビーフおにぎりですー」
食材のチョイスにセンスが無い悪魔が。




