悪魔がウチにおりまして・1206
ウチには温泉にいる。
モグラがやってた温泉宿に。
「我がもぐもぐラグジュアリーはいかがでしょう?」
前回と名前変わってるじゃない。
悪魔が福引ガラガラで引き当てた温泉旅行、実はモグの旅館だっただなんて信じられるだろうか。
「ニンゲン、このお刺身貰っていいですか?」
ダメです、一切れしかないのねらい打つな。
「それはアマガイです。ホタテとよく似ているんだけどより甘い物をアマガイと言います」
それってホタテじゃないの?
言われたカイの刺身を口に運ぶと確かにホタテと少し違う。
甘さもだけど歯ごたえがとてもよい。
「確かに初めて食べるかも」
「そうでしょう、そうでしょう。この緑鯛もなかなか出回らない代物……お試しを」
モグは小皿に乗った魚の切り身を差し出してくる。
緑、という名前とは裏腹、赤黒い色に目を細める。
「だいぶ独特な色してるわね」
「実は鯛と言いつつも赤身なんです。形が鯛と似ていて」
「某も頂きたく」
珍しく狐が箸を伸ばしてくる。
「ボクもボクもー!」
はいはい、皆で食べましょうよ。
モグの持ってきた切り身を3人で食べると脂の乗った濃厚な味ワイが口の中に拡がる。
「美味しい、ぜんぜん鯛じゃないけど」
「昔のヒトの名付けですからねぇ。テキトーなのは仕方ないでしょう」
納豆を混ぜている牛がのんびりと話す。
「あれ、牛さんは食べないのですか?」
「緑鯛、苦手なんです。鯛を食べている感じがしないので」
全く味は違ったものね。
「でも牛さん、この前釣りに行ったときたくさんの鯛釣ってませんでした?」
「あれは釣りではなく、漁です。ザリさんがどうしても欲しいって言ってたので」
ちなみに許可は……絶対取ってないでしょうね。
「この前お店で食べたのはそれでしたかぁ」
「えぇ、私の口には1匹も入っていませんよ」
牛が、タダ働きなんて……。
「売り上げの10%が入るのに減らすわけないですからね」
うん、ちゃんと牛で安心する。
「でも牛さん。冷静に考えてバーで鯛って合わなくないです?」
うどんを売っているバーでしょ?今更じゃないかな。
「……牛さん、漁もできるの?」
話を聞いていたモグは目を輝かせる。
「できるというのは腕があるという意味なら」
許可があるとは言わないのね。
「実は今度もぐもぐふぃっしんぐがね」
本当にどこにでもいらっしゃること。
ウチらは再び温泉に。
「あ!紅葉です!」
なんでこの季節に色づいてるのよ!?




