悪魔がウチにおりまして・110
ウチにはモグラが…いや狸だっけ?
どっちでも良いけど。
「ニンゲンさん」
ウチに帰ると悪魔と狐と同じくらいのサイズのモグラが居ればそれは驚きます。
「…何でしょう」
「相談がございます」
いきなりそんなこと言われても。
そうは思いつつ悪魔関係者、丁寧な態度で接してあげましょう。
「お帰りください」
「ありがとうございます、実はですね」
コイツ話聞かない系のケモノだ!
話をまとめると、野菜が採れすぎて困っているらしい。
そのせいで旬の野菜が悪くなり始めているとのこと。
自分でも食べているのだが、どうにも追い付かない。
そのためたくさん食べる者の居そうなここに来たらしい。
「それってお金かかるの?」
「ミミちゃんの言ってた通りちゃっかりしてます。本当は貰いたいのですがニンゲンさん、こっちのお金持ってないと思うのです」
悪魔がこのモグラに何を話していたのかは後で聞くとして。
「それなら悪魔に出させれば?せっかく作った野菜でしょ?」
「それが、ダメなのです」
悪魔族に物を売るには会社を持っていないといけないらしい。
さすがに今のモグラの生産量では安定供給が難しいらしく、取引をするに至らない。
結果配る必要がある、と。
なんじゃ、その込み入った制度。
「ぽんも弱小農家なので。でも、せっかく作ったお野菜を悪くするくらいなら美味しく食べてもらいたいのです」
その気持ちはわかるなぁ。
昔、トマト育ててたらたくさん実が採れて食べ切れなかった思い出が蘇る。
「…ところで羊に相談した?アイツ今社長じゃない?」
モグラはお腹をポンと叩く。
「で、私が呼び出されたのですね」
ウチに来た羊はなぜかコック帽をかぶり、普段付けていないメガネをくいっと持ち上げる。
「私の会社に野菜を納品したいと言うのですね。いいのですか、私の舌は厳しいですよ…」
そう言いながら、皿に乗ったナス(生)をフォークでぶっさし、シャリシャリと食べる。
リンゴかな?
「…よろしいでしょう、明日からあるだけ持ってくるように!」
…羊、いいところあるんだよなぁ。
「ニ、ニンゲン!スーパーを紹介してほしいのです」
あくる日、羊の部屋は野菜で埋まった。
確かに採れすぎだわ。




