悪魔がウチにおりまして・107
ウチには悪魔がいる。
ときたま陰の薄くなる悪魔が。
「…クモちゃん、大きくなりましたね…」
分体と融合して大きくなったクモを見てしみじみつぶやく悪魔。
スマホで写真を撮り、何やら操作を…。
嫌な予感がして後ろから覗くとSNSに投稿しようとしてやがった。
「なりません!」
悪魔のスマホをひったくると、投稿される前に削除。
『巨大クモ、現る』じゃないんよ。
「ニンゲン、何をするですか!クモちゃんをお披露目しようと思っただけですのに!」
「通報されるわ!」
元のサイズですら大きなクモ、今は育って倍以上になってしまった。
50㎝のクモが日本に出た?
自衛隊案件でしょうが。
お汁粉をすすりながら狐がじっとクモを見ている。
お椀を置いた。
近付いた。
両手を広げてクモのサイズを測っている。
なぜか肩から崩れ落ちた。
何があった。
「ほら、クモちゃんとごんちゃん、同じく修行の身ですから」
競争では無いにしても友だちがレベルアップするとやっぱり悔しいものなのかなぁ。
「それはそうでしょう。私もミミ君が肩を並べた時には歯噛みしたものです」
久しぶりに畳から生えてくる羊。
あれ?こっちに会社なかったっけ?
「定期的に会議に呼ばれているのです。なんなら独立したほうが大変です」
言われれば羊の毛が少し減ったように見える。
「しかし羊、アンタにも嫉妬とかあったの?」
「何をおっしゃいますか、私は悪魔ですよ?欲に忠実に生きずに何が楽しいのですか」
なるほど?
「そうは言ってもヤギさん、いつも上の人に叱られていたので気が楽なのでは?」
悪魔は凝りもせずクモを写真を撮りながら羊に話しかける。
「それは部下からの評価でお給料が変わりましたから。わが身可愛さですよ」
そんなものかぁ。
「分かります。ボクも自分のお菓子代をキープするために頑張るのです」
上手く撮れたクモとのツーショット写真を誇らしそうに見せながら駆け寄ってくる。
いい写真だから、投稿は無しね。
ウチには狐がいる。
先ほどより起き上がらない狐が。




