悪魔がウチにおりまして・11
ウチには天使がいた。
何やらいきり立っている天使が。
「悪魔め、今日こそ決着をつけてやる」
そんなことを言って目を剥く天使。
おもむろにスリッパを握り、頭をはたく。すぱん!と間の抜けた音がする。
「何をする!ヒトの子よ!」
「それはこっちのセリフ。いきなりウチに上がり込んでおいて、大きな声出さないでください。近所迷惑です」
相手が何者であろうが、ここの家主は私で、あくまでも借家、ご近所がいらっしゃる集合住宅なのだ。
周囲への迷惑と、今後のお付き合いを考えて行動してほしいものだ。
「そんなことは関係ない。むしろなぜ私を見ることが…」
「あー!天使さんじゃないですかー」
一触即発の空気を間延びした声が緩ませる。
「どうしてこんなところにいるんですかー?」
「この無礼者、あんたの知り合い?」
「悪魔め、私に負けることが怖くてこんなところに隠れていたのか」
「えっと、天使さんですー」
「戦いの準備はできている、いざ尋常に…」
「黙りなさい」
話を混線させる天使に二度目のスリッパをお見舞いするのだった。
ややあって。
悪魔と天使は押入れに座ってチェスをしている。
どちらが勝っているのかは分からない。
とりあえず、この天使は戦争を仕掛けに来たわけではなく、どうやら悪魔のチェス友らしい。
もはやツッコミ所しかないので放置。
スリッパで殴ったことにやんや言われそうになったが、にらみを利かせると押し黙った。
ふたりがチェスをしている間、夕飯の支度をする。
アレはご飯を食べるのだろうか。そして何を食べるのだろうか。
まぁ、食べるなら悪魔の量を減らせばいいかと思い普段通りに支度を進める。
「貴様、卑怯な!」
「正攻法では王は取れないのですよー」
チェックメイト。
カレーの鍋を持って部屋に行くと、悪魔はすずりで墨を擦っている。
羽根つきかな?
天使が小声で「この雪辱は忘れはしない…」とぼそぼそ言っていたのは聞かなかったことにしよう。
顔面墨まみれの天使と上機嫌の悪魔と3人でカレーを食べる光景はなかなかにシュールなんだよなぁ…。
ウチには天使がいた。
悪魔の友だちで、チェスの弱い天使が。
「次は負けない」
聞こえてましたか。




