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異能学園最底辺C組 〜落ちこぼれ能力者たちの下克上〜  作者: ぺいぺい
第二章 中間試験 縦割りサバイバル編
89/92

第88話 ex. 國咲未来の孤独 



 授業中、いつものように窓から外の景色を眺める。

心地良いそよ風が入ってきて、教室の空気を入れ替えてくれる。

その風とともにどこかから楽しそうな声が聞こえる。

体育の授業でもやってるのかな。


 中間試験が終わっても私の日常は何も変わらなかった。

退屈な授業を受けて、学校が終わったら寮に帰って寝る。

これの繰り返し。


 時々、中間試験のことが恋しくなる。

楽しかったなぁ、鳴神さんとしずくちゃんとのサバイバル。

非日常で刺激的な日々。

そして、2人の醸し出す優しい空間が心地よくて好きだった。


 能力者になってこの学園に来て、楽しかったことなんて一度もなかった。

そもそも能力者なんて全員、自分のことしか頭にない、イかれた奴らだって思ってた。


 でも2人は違った。

元気にしてるのかな。

2人とも明るくてフレンドリーだし、友達もいっぱいいるんだろうな。

もしかして私のことなんてもう忘れてるかも。

自己嫌悪の気持ちがぐるぐる回る。


 ふと我に帰ると教室には誰もいなかった。

授業、終わったんだ。


 そういえば次の授業、体育だったはず。

みんな着替えに行ったのか。

誰も私に声をかけてくれなかった。

・・・ああ、めんどくさいな。


 中間試験の時の私は変だった。

いつもより謎に明るかったし、人前で笑ったことなんて随分なかったのに、

あの2人といると自然と笑顔になっていた。


 でも中間試験が終わってからはそんなこともなくなった。

前の暗くて感情のない私に戻りつつあった。


 授業開始のチャイムがなる。

もういいや、サボっちゃおう。


 授業をサボっても誰も何も言わない。

先生だって私がいないことに気づいてないだろうし、

サボるのを止めてくれる友達もいない。

そもそも強者が揃い、一癖も二癖もあるA組で友達ができるわけがない。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 こういう時、私はあの場所へ向かう。

学園の森の奥にある場所。

目の前は崖で、街が一望できる。


 周りは木に囲まれており、

誰が置いたのだろうかわからないベンチが1台ある。

静かで雑音も何も聞こえない。

私だけが知ってる秘密の場所。


 そんな場所に、今回は先客がいた。

白髪ロングの女の子。

この子、見たことある・・・

確か同じクラスの白鈴聖麗さんだったっけな。


 私以外にもこの場所を知ってる人がいたんだ。

・・・まあ、どうでもいい。


 今日は帰ろう。

そうして踵を返すと、



「國咲さん!」



 突然、白鈴さんに名前を呼ばれた。

・・・私の名前知ってるんだ。



「な、なんですか?」



振り返ってオドオドと答える。



「授業は?」


「・・・サボっちゃっいました。白鈴さんだってサボってますよね」


「うん。っていうか私の名前知ってるんだね」


「そりゃ、同じクラスだし・・・」


「そっか。私も今日は気分じゃなくてサボっちゃったんだ!ねぇ、こっちに来て話さない?」



 白鈴さんが笑顔でベンチに手招きする。

それはただ一欠片の悪意もない、嘘偽りのない笑顔だった。


 なぜか自然とベンチに足が向かっていた。

私はどこか白鈴さんに、あの2人と同じ優しい雰囲気を感じていた。

2人でベンチに腰掛ける。



「國咲さんって、クラスでも静かなイメージだよね」


「・・・A組の人たちとなんて仲良くなれないですし」


「まあ、A組は変な人が多いからね」



少しの沈黙が流れる。



「國咲さんは何の能力者なの?」


「私は”未来視”。数秒先の未来が見えるんですよ」


「え、すごい!じゃあジャンケンとか最強じゃん!」


「ま、まあそうですね」



 少し話してわかった。

この子は明るくて純粋な子だ。



「白鈴さんは?」


「私は”精霊”を操れるの!」


「精霊?召喚型の能力ですか?」


「そうなのかな?見てて!」



 白鈴さんが手を前に出して広げる。

途端に森がざわめき始め、風が吹いてくる。

すると目の前に、黄緑に光ったモヤモヤが現れた。



「これが精霊。精霊は色んなところにいるんだよ?ここは自然でいっぱいだから緑色の子が多いみたい」



 気づくと周りには同じようなものがホワホワ浮いている。

ほとんどが緑色だが、赤や青の精霊もちらほらいて、とても綺麗だった。



「ほら、触ってみて?」



 言われた通り、ゆっくりと精霊に手を伸ばす。

優しく、手のひらで撫でるように触る。

精霊はほのかに暖かかった。



「あったかいでしょ?なんか人の温もりみたいに」



確かに似たようなものを感じる。



「手、握っていい?」



白鈴さんが突然言った。



「え・・・」


「いいでしょ?ほら!」



 白鈴さんが手を差し出してくる。

私は差し出された手を握った。

中間試験で鳴神さんとしずくちゃんと手を握った時のことを思い出す。



「ほら、精霊と人の温もりは似てるでしょ?」


「・・・はい」



 なぜか言葉が出てこなかった。

手を握っているだけなのに安心感で体が包まれる。

それも初対面なのに。



「精霊が全然警戒してない。國咲さんは優しい人なんだね」



白鈴さんが呟いた。



「優しくないよ」


「優しいよ。他のA組の生徒は心の底に私利私欲的なドス黒い欲望がある。でも國咲さんはそれを全く感じない。人を愛せる人間なんだよ」



 人間・・・

いつからか私は”人間”ではなく”能力者”になった。

もう人の心なんて残ってないって思ってた。

中間試験に参加するまでは。



「私たち友達にならない?」



白鈴さんが手を強く握って言った。



「え・・・」


「嫌なの?」


「別に・・・嫌じゃないけど、さっき会ったばっかですし・・・」


「友達って長い間一緒にいないとなれないの?」



何も言い返せない。



「私たち、もう友達だね!」



 白鈴さんがニコッと笑う。

その笑顔にあの子の面影を感じた。



「これからよろしくね!」


「よ、よろしくおねがいします」


「友達になったんだし、敬語やめてよ」


「・・・わかった」



 愛想のない態度とは裏腹に、

心の中では喜んでいる自分がいた。



「あ!それと、これからお昼はここで一緒に食べようよ!」


「え!?・・・たまにならいいけど」


「わかった、たまにね!」



 えへへ、と白鈴さんは笑っている。

この子といると、自分を見失わない気がする。

私にまた一人、大切な人が増えた。




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