第70話 盗賊団のリーダーはだいたい巨体
黒い影に囲まれ、身動きが取れなくなる。
「この影、人か?」
「ですね。多分高速で動き回っているんでしょう」
俺たちの周りをザッ!ザッ!と走っている音が聞こえる。
3人で固まって警戒する。
「お前ら、旅人か?」
どこかから声が聞こえる。
するとズン、ズン、と地響きが起こって何かが近づいてきた。
音とともに樹海の奥からバカでかい体の男が現れる。
こいつ本当に人間か?
身長は軽く2mを超えている。
手には長く太い剣を持っており、
もう片方の手でボテッと出た腹をさすっている。
「そうです。あなたたちは何者ですか?」
「俺たち?俺たちは・・・」
巨体の男が口を開くと、
取り囲んでいた影が止まった。
影はやはり人で、それも数え切れないほどの人数だ。
俺たちの周りをびっしり取り囲んでいる。
「盗賊団だよ」
盗賊団・・・
そういえば寅影村の門番が樹海には盗賊団もいるって言ってたな。
こいつらのことか。
すると、チョンチョンと國咲が俺を小突いてくる。
何かあるのかと耳を傾ける。
「巨体の男の首元、見てください」
首元?
確認すると、そこには腕輪がぶら下げてあった。
「腕輪だ!」
「はい、これは不幸中の幸いです。腕輪を奪いましょう」
「何を話してるんだ?」
俺たちの会話を遮るように巨体の男が言う。
「お前らを取り囲んでいる理由がわかるか?」
「さあ?道でも教えてくれるんですか?」
國咲が冗談っぽく返す。
「違う。俺たちは”盗賊団”だ。何か金目のものを渡してもらわないとな」
巨体の男がニヤニヤしながら言う。
「俺たち貧乏な旅人なんだ。金目のものなんてねぇよ」
「そうか・・・じゃあお前らの”臓器”でも頂こうかな」
巨体の男が合図すると、
俺たちを取り囲む部下たちが一斉に動き出した。
ナイフを構えながらジリジリと俺たちに寄ってくる。
「臓器です、か。能力者の臓器は高く売れるでしょうね?」
國咲が俺をチラッと見る。
戦うつもりだ。
「やるぞー!」
しずくちゃんが高らかに叫ぶ。
それを皮切りに巨体の男が部下たちに指示を出し、
こちらに向かって走り出した。
「先手必勝!」
盗賊団の部下たちが襲ってくる前に巨体の男に向かってエネルギー砲をぶっ放す。
”中火力砲”
巨体の男に向かって一直線にエネルギー砲が飛んでいく。
こいつはでかくて避けられないはずだ!
「こういうのはリーダーを倒せばいいんだよ!」
しかし、エネルギー砲が近づいた瞬間、
巨体の男が、持っていた大きな刀でエネルギー砲をバスンと叩き切った。
エネルギー砲が左右に分かれて樹海の中へ消えていく。
「マジか!そんなのありかよ!こいつ、俺のエネルギー砲を切りやがったぞ!」
「分散するよう分かれて戦いましょう!」
「了解!」
國咲の指示に従って離れて戦う。
避けつつ、エネルギー砲で部下たちを攻撃していく。
國咲を見ると、
能力で躱しつつ格闘していた。
「うぇーーん!だずげでぇー!」
しずくちゃんは泣きながら走り回っている。
俺と國咲でしずくちゃんを守りつつ、巨体の男に近づこうとする。
國咲と背中を合わせる。
その足元にはしずくちゃん。
「数が多いな!」
「ですね!キリがありません!」
「随分お疲れのようだな」
巨体の男がニヤニヤと挑発してくる。
周りの部下たちの数は減っている様子はない。
「この数じゃ逃げるのは絶望的ですね」
「そうだな、でもこの3人ならなんとかなりそうじゃないか?」
「・・・もちろんです。この3人なら何があっても大丈夫ですよ」
「だな!よーし!じゃあ俺の”新技”見せてやるか!」
「え、新技!?」
「実はお前が怪我で休んでいる間、しずくちゃんと一緒に練習してたんだよ!」
「いけーひゅうがー!」
右腕に力を込める。
エネルギーを手のひらから放出するのではなく、
密度を高めて一点に集中させる。
頭の中で深く想像していく。
すると手のひらから出たエネルギーが形になり、
どんどんと実体化していく。
「できた!」
エネルギーを剣の形に変えたものの完成だ。
「遺跡で衣笠と戦った時に思ったんだ。俺の能力、ああいう使い方もあるのかってな!」
衣笠は俺の能力を真似て、エネルギーの形を変えて槍にしていた。
「俺が巨体の男の腕輪を奪ってくる。お前らは部下を倒しつつ逃げる準備をしてくれ!」
「了解です!」
「りょーかい!」
瞬間、巨体の男めがけて走り出した。
一点突破、一直線に男の元へ向かう。
目の前には男の大量の部下。
右手の剣を強く握り、
男の部下たちをなぎ倒していく。
「こんなこともできるんだよ!」
エネルギーの剣を伸ばし、とても長い長剣にしてぶん回す。
剣はエネルギーそのもので自由自在に形を変えることができる。
巨体の男はすぐそこだ。
目の前の部下を斬り、
踏み台にして飛び上がる。
巨体の男が大剣を振り下ろしてくる。
こちらも剣の形を大剣に変え、空中でつばぜり合いになる。
「これ、貰って行くぜ」
首からぶら下げてある腕輪を剣で斬って奪う。
巨体の男の胸を踏み台に後ろへ飛ぶ。
「返せ!」
巨体の男の大きな剣が再び迫ってくる。
瞬間、握っている剣の形を変え、巨大な斧にする。
「剣以外もできるんだよ!」
大きな斧を肩で抱えながら思いっきり振り落とす。
バキンッ!と男の大剣が折れる。
「逃げますよ!」
いつの間にか後ろにいた國咲に体を掴まれる。
「よっしゃー!奪った!」
そう思った矢先、後ろから大量の盗賊団が追ってくる。
逃げるように樹海の中を走る。
「ちょっと待ってくれ!」
國咲を振りほどいて立ち止まり、
盗賊団に向かって右手を構える。
「何してるんですか!?」
奪ったのを合わせて今は腕輪を2つ付けてる。
これはやべーぞ、腕輪を通じて力が無限に湧き出てくる。
今すぐにでも体から出さないとまずい。
「ここは一発派手にいくか!」
「何するんですか!?」
「ひゅうが!?」
2人の戸惑いの声が聞こえる。
そんなの無視して盗賊団に向かってエネルギー砲をぶっ放した。
”特大火力砲”
腕輪の力を借りつつ、ぶっ放す。
目の前の樹海が一気に更地になり、あたりを煙と焦げ臭い匂いが充満する。
盗賊団たちが黒こげで地面に倒れている。
「やっぱこれだよなー!」
凄まじい爽快感に襲われる。
「最初からそれやってくださいよ!」




