第61話 超強力モンスター
爆風で飛ばされる。
訳も分からないまま風に煽られ、暗闇を彷徨う。
國咲が何か叫んでいるが、風の音がそれを上回っていて何も聞こえない。
気づいたら地面を転がっていた。
「大丈夫か!?」
2人に声を掛ける。
「私は大丈夫です」
「しずくもだいじょうぶ!」
よかった、誰も怪我はないみたいだ。
俺たちは森にいるようだった。
「飛ばされたので位置がずれましたね。多分、方角的に丑影村付近じゃないですかね」
「おい、丑影村って赤坂が近づくなって言ってたとこじゃねーか」
「ですね、今日は村に近づくのはやめておきましょう」
途端、遠くからグルルルル、キリキリキリ、カカカカカ、と鳴き声が聞こえた。
なんだこれ。
あれ、この鳴き声どこがで・・・
「こわいよー」
しずくちゃんが怯えている。
「大丈夫ですよ」
國咲がしずくちゃんを落ち着かせる。
「急ぎましょう。得体の知れない何かがこの地域には潜んでいるようですね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
警戒を強めながら歩き出す。
ここ、普通の森じゃない。
何か嫌な雰囲気が漂っている。
國咲も同じことを感じているのか、
足早に歩いている。
日も暮れ始めていた。
「國咲」
「ええ、わかってます」
何かが俺たちを探している。
多分さっきの声の主だろう。
それにさっきの鳴き声、俺が夢で見たバケモノと同じだ。
焦りながら歩いていると、奇跡的に洞窟を見つけた。
「とりあえずここで一晩過ごしましょう。この森を抜けたいですが、これ以上歩き回るのは危険です」
洞窟に入り、奥まで進む。
奥で行き止まりになっていた。
上は吹き抜けで穴が空いていて環境もいい。
いつの間にか不気味な声も聞こえなくなっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
洞窟の中の焚き火を眺める。
「腹減ったなー」
「お昼あんなに食べたでしょうに」
実は未影村で地図を探しに民家に侵入した時、
腹ごしらえとして3人とも水と食料をたらふく食べてきた。
「いや、1日1食はキツイって」
「私はそんなの当たり前ですけど」
「お前、細いもんな。そんな細いと折れちまうぞ?」
「折れないですよ」
少しの静寂が訪れる。
しずくちゃんはすでにスヤスヤと寝ていた。
こんな過酷な環境、キツイよな。
まだ小2だし。
「飛ばされているときに見たんですけど、丑影村はすぐ近くのようでした。
この洞窟を出てまっすぐ行けば着くはずです」
「へー、ちゃんと見てたんだな」
「そりゃそうですよ」
「そういえば山の時お前、ちょっと怖かったな」
声をかけてきた男を一蹴していた。
俺たちと出会った時の國咲のようだった。
「あれがいつもの私です。基本的に私は人嫌いで冷たいですよ」
まあ過去のいろんなことがあるからしょうがないか。
「でも俺としずくちゃんには優しいじゃねーか」
「それは・・・特別だからです」
「特別?」
「人生で2回目だったんです、幸せになってほしい人に出会えたのは」
國咲が焚き火をじっと見つめて言った。
「も、もう寝ますよ!明日も早いですし!」
恥ずかしがってるのか國咲は向こうを向いて寝転んでしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
大きな叫び声で飛び起きる。
「どうした!?」
バッと2人を確認するが、
叫んだような様子はない。
じゃあ誰が?
「きゃああああ!」
女性の叫び声が洞窟の外から聞こえた。
「な、なんだ!?」
「わからないですけど、誰かが襲われているみたいですね」
寝ぼけた頭から段々意識が戻ってくる。
襲われてるって、昨日聞いたあの鳴き声の主にか?
すると、グルルルル、キリキリキリ、カカカカカ、と、あの鳴き声が聞こえた。
「まあ洞窟の中には入ってこないでしょうから、安全ですね」
「だいじょうぶかな?」
國咲が言う。
「・・・助けに行こう」
「はぁ!?なんでですか!」
「だって危険な状況かもしれないだろ!?」
「ダメです!私たちも危険な目に巻き込まれるかもしれないですよ!?」
「でも・・・」
意見が食い違う。
「じゃあこうしましょう。今から助けるチームが腕輪を持っていたら奪う」
「よしそれで行こう」
「あと、危ないと思ったら助けるよりもすぐに逃げましょう。自分たちの安全が最優先です」
「わかった」
洞窟の外に向かって走り出す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
洞窟を出て声を出しながら森を走る。
「おーい!大丈夫か!?」
「誰かいるんですか!?」
すぐそこから声が聞こえる。
声の方へ向かうとさっき叫んでたであろうチームがいた。
そのうちの一人が血を流して倒れている。
「だ、大丈夫か!?」
「さっき遭遇したモンスターにやられて・・・」
血を流し、大きく肩で呼吸している女の子が口を開く。
「逃げてください、ここは”超強力モンスター”の住処です」




