第58話 逃げて村を離れる
”特大火力砲”
撃った瞬間、
自分でも驚くほどの威力だった。
衣笠の空を覆い尽くすほどの爆発さえも小さく見えるようだった。
出している右手を必死に左手でガッと掴んで支える。
こんな威力で撃ったことがないから体の制御が効かない。
気を抜くと後ろに吹っ飛びそうだ。
俺の隣にいる國咲としずくちゃんが必死に俺を抑えている。
爆発を押し返すように俺のエネルギー砲と拮抗している。
爆発の威力は凄まじいが、押し返せる!
体にはまだまだパワーが有り余っている。
それに段々と衣笠の爆発が治ってきた。
やるなら今だ!
「威力上げるぞ!」
「やめてください!この世界ごと壊すつもりですか!?」
「ひゅうがやめろー!」
2人から非難轟々を浴びる。
でもそんなの気にしてられない。
さらに威力をあげて一気に仕留めにかかる。
横から2人の叫び声が聞こえるが、無視する。
衣笠の爆発を完全に飲み込み、
一直線に俺のエネルギー砲が飛んでいく。
ものすごい轟音と地響き。
本当にこの世界ごと壊れてしまいそうだ。
そのまま数秒間撃ち続け、撃つのをやめる。
シューッ、と右腕から煙が出る。
「おい、この腕輪ヤベェな!」
呼びかけるが、2人とも地面にへたり込んでいる。
「やばいのはあなたの方ですよ」
國咲が呆れるように呟く。
そうだ!衣笠は!
前を向くと、まるでモーセの十戒のように地面が深く抉り取られていた。
遺跡なんて跡形もなく消え去っていた。
「ひゅうが・・・すごいね・・・」
「本っ当に恐ろしいですね。あなたが敵じゃなくてよかったです」
2人ともどこか俺に引き気味だ。
「だろ?で、どうする?あいつはもう立ち上がれそうにないぞ?」
3人とも地面に倒れこんでいる。
ピクリとも動かない。
そりゃそうだ、まともに喰らったんだからな。
「逃げましょう。他の2人の能力もまだ未解明ですし、これ以上戦うのは危険です」
衣笠のチームを背に草原を走り去る。
「この腕輪、能力増強の力があるんだな」
「そうですよ、私に言われるまで気づかなかったんですね」
「はいそうです・・・」
素直に認める。
「でも最初にはめた時はマジでなんにも感じなかったんだよ」
「鈍感野郎ですね」
「どんかんー」
2人に笑われる。
やはりこのチームでは俺が一番立場が低いようだ。
「とにかく、もうこの地域に用はありません。違う場所に行きましょう」
「でもどうやって?また砂漠を歩いていくのか?」
「それは絶対に嫌です。何か移動手段があるはずです、ここは架空世界なんですから」
「いどうしゅだんー?」
「はい、ひとまず未影村に戻りましょう」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
森を抜け、未影村に到着する。
木陰に隠れて村を観察する。
村長が死んだからか、
村は悲しい雰囲気に溢れている。
そして何か武器を持った村人が慌ただしく動き回っており、
住人は村の中心に集まって村長の葬儀のようなことをやっている。
「まだ俺たちを探してるみたいだな」
「そうですね」
「村に戻ったのはいいが、どうするんだ?」
「この世界の地図を探しましょう」
「なるほど。で、地図はどこにあるんだ?」
「わかりませんけど、とりあえず民家に侵入してみましょう」
「え、不法侵入になるんじゃ」
「忘れたんですか?ここは架空世界ですよ」
「あー、そうだったな」
「行きますよ!」
国咲が走り出す。
「ふほうしんにゅー!」
しずくちゃんが叫ぶ。
「しずくちゃん!そんな言葉使っちゃダメだよ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
村の民家に侵入する。
地図を探して机や棚を漁る。
なんか泥棒になった気分だ。
「地図見つけてどうするんだよ」
乱暴に家を荒らしまくっている國咲に聞く。
しずくちゃんは勝手に家の食料を食べている。
「現在地を知りたいんですよ。腕輪を探してむやみに動き回るのは得策ではありません」
「まあ確かにそうだな」
「あ、ありましたよ」
國咲が大きな紙を見つけた。
古びていて年季を感じる。
「これはまた変な地形ですね」
地図を開いた國咲が呟く。
地図を見ると、この世界は円状で12の村が均等な距離で円に沿って並んでいた。
そして世界の中心には大きな山がある。
「12の村・・・今私たちがいるのはこの未影村ですね」
未影村は地図で見ると左下に位置している。
他の村の名前は・・・子影村、丑影村、寅影村、卯影村、辰影村となっている。
ん?これって!
「な、なあ!これって」
「十二支ですね。これは確実に何かの意図がありますね」
「絶対そうだな。たまたまなはずないもんな」
「そういえば縦割りサバイバルが始まる前に分けられた私たちのチームって何でしたっけ?」
「えっと・・・」
そういえばチーム分けで紙を渡されて・・・
「とらー!」
しずくちゃんが大きな声で言う。
「そう、寅だ!俺たち寅で集まったんだ!」
「何か関係がありそう。目的地は寅影村で決定ですね」
「でもどうやって行くんだ?寅影村はめっちゃ遠いぞ」
未影村と寅影村はほとんど逆の位置にある。
地図で見ても歩いていけるような距離ではない。
「この円の外はどうなってると思います?」
國咲が円状の世界の外側を指差す。
地図には何もなく、そこは白紙になっている。
「地図で何もない場所なんてあります?」
「確かに、海とかでもなさそうだし」
「ですね。行ってみる価値はありそうです」




