第55話 2日目 遺跡の腕輪
真っ暗な空間にいる。
上下左右を見渡しても永遠に漆黒の闇が続いている。
何故だかわからないが体が力に満ち溢れている。
そんな溢れんばかりの力を放出するように闇の中を駆け回る。
今なら空でも飛べそうなほどだ。
体力が尽きることなく走り回っていると、突然暗闇の奥から音が聞こえた。
グルルルル、キリキリキリ、カカカカカ。
異なる3つの音が耳に響く。
異音に思わず後ずさる。
すると奥からズシン、ズシン、と地面を揺らして何かが近づいてきた。
威圧感からか、もう後ずさることもできなかった。
目の前の異形は現世に存在するようなものではなかった。
四つ足で筋肉隆々の大きな体。
全身が白い毛に覆われており、その毛は気配を感じ取っているようにも感じる。
正面には三角形型に顔が3つ付いている。
それぞれの顔は奇妙にそして不規則に向きを変えて動き回っている。
警戒心MAXで今にも襲ってきそうだ。
瞬間、3つの顔がこちらに焦点を合わせる。
目の前の異形は俺をどうやって食べようかと考えているようだ。
そして3つの顔が口を開ける。
その大きな体で俺を襲おうとした時、
吸い込まれるように目を覚ました。
「ちょっと!いつまで寝てるんですか!」
目の前で國咲が腕を組んで仁王立ちしている。
木の間から漏れた朝の木漏れ日が眩しく目に入ってくる。
ああ、夢を見ていたのか。
それにしても怖い夢だった。
あんな気味の悪いの、思い出したくもない。
「あー、もう朝?」
「そうですよ!中間試験、縦割りサバイバル2日目です!早く準備して出発しますよ!」
國咲が朝から元気なテンションで話す。
「えー、もう少し寝させてくれよ」
國咲の言うことを無視して二度寝しようとする。
「寝るな!」
ケツに國咲のつま先が突き刺さる。
「痛ってぇ!何するんだよ!」
「あなたが早く起きないからですよ」
ふん、とそっぽを向いてやがる。
思えば昨日の弱気な國咲はどこかに行っていた。
まあ、元気になってよかったな。
「ひゅうがおきろー!」
横からしずくちゃんが俺の胸に飛び込んでくる。
まだ知り合って1日だが、しずくちゃんともだいぶ仲良くなった。
「もう起きてるよー」
しずくちゃんを離して起き上がる。
「じゃあ行きますよ!」
國咲が言う。
「そういえばどこに行くんだ?」
はぁ、と國咲がため息をつく。
「そんなの決まってるでしょ?昨日、食堂で男性が言ってた遺跡ですよ」
そういえば昨日、
食堂で聞いた話で近くの遺跡にも村長のと似たような腕輪があるって言ってたな。
「しゅっぱつー!」
しずくちゃんの幼く可愛い声が響く。
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村から森の中に逃げてきた俺たち。
村は砂漠と森に挟まれており、森を抜けた先に遺跡があるという話だ。
聞いた話の通りに森を進んでいくと、
だだっ広い草原に出た。
かかとほどの長さの鮮やかな緑色の草が生い茂っており、
優しく吹く風が草を揺らしている。
「ほんとに遺跡なんてあるのかよ」
果てまで草原が広がっており、
見た感じ遺跡のようなものは見当たらない。
「今はこれしか情報がないんですから、行きますよ」
国咲が草を踏みしめて進んでいく。
後ろをついて進む。
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風が気持ちいい。
優しく吹くそよ風が体を包む。
昨日の砂漠と違って足がどんどん進む。
「わー!」
しずくちゃんも元気に走り回っている。
これならいくらでも歩き続けられそうだ。
「しずくちゃん、危ないですよ。また昨日みたいなサソリがいるかもしれませんから」
「昨日はやばかったよなー。まさかあんな大サソリに襲われるなんて思ってなかった」
「びっくりしたね!」
砂漠で人の足跡を見つけ、
辿っていくとそれはサソリが残した足跡で俺たちは巣におびき寄せられて襲われた。
「ここは架空世界ですから、普通は考えられないような化け物も生息してるんでしょうね」
「っていうかこの中間試験、成績ってどうやって決まるんだっけ?」
「成績は期間内の行動や獲得した腕輪の数を見て採点されます。腕輪を3つ集めてゴールすれば成績大幅アップですよ」
「おお、そうだったな」
「私はA組だから大丈夫ですけど、あなたはC組だから成績が重要なんじゃないですか?」
そう、成績優秀者には”昇格権”が与えられるって噂だしな。
「欲しいなー”昇格権”」
「まあC組の人は昇格権が欲しいでしょうね。でもあなた、なんで王様ゴールのMVPを辞退したんですか?昇格権を得てB組に上がれるチャンスだったのに」
「うーん。あの時は強制的に”昇格権”を使えって言われてさ、でも俺は一人だけでB組にあがりたくなかったんだよ。だってMVPを取れたのだって俺だけじゃなくてC組みんなのおかげだったから。俺はC組みんなで上のクラスにあがりたいんだよ」
「C組全員で上のクラスにあがる?本気で言ってるならとんだ無謀ですよ」
まあ國咲の言いたいこともわかる。
C組全員35人が昇格権を手に入れるなんて不可能に近い。
でも、それでも、俺は自分だけあがるのは嫌だった。
「まあ、あなたならそんな無謀も乗り越えてしまいそうな気がします」
國咲が珍しく俺のことを素直に褒めた。
「おう!見とけよ!」
俺がそう言うと國咲は笑った。
それは曇りない、中学生らしい爽やかな笑顔だった。
笑ってた方が可愛いじゃねーか。
「っていうか能力で作った架空世界だし、どっかで先生たちが監視してたりするのかな?」
おーい!と空に向かって手を振る。
しずくちゃんも真似する。
「誰に手を振ってんですか」
國咲の冷静なツッコミが入る。
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「この生徒、手を振ってるんですけど」
闘技場に残された学園の先生が呟く。
「あ、うちの生徒です」
三田寺先生が答える。
闘技場の中心には浮かび上がった大きなスクリーンがあり、
その前で学園の先生たちがスクリーンを眺めている。
「今回の架空世界、ちょっと厳しくしすぎじゃないですか?」
一人の先生が言う。
「確かに、厳しい環境が多い気がしますね」
他の先生がそれに同意する。
「大丈夫だよ!」
一番後ろから幼い声が聞こえ、
全員が振り向く。
「学長!」
小さな男の子がトコトコと歩いてくる。
「心配しすぎだよ!能力者なんだから、多少のことなら乗り越えられるはずだよ!」
学長はスクリーンの前に立つ。
「それに今年は有望な能力者ばかり!」
スクリーンにどんどんと架空世界の様子が映し出されていく。
過酷な環境で奮闘する生徒たち。
七罪聖夜、天使翼、凶獄黒臣、赤坂紫炎、仙撃音波。
「この鳴神日向くん。どうかな?」
学長が三田寺先生に問いかける。
スクリーンに鳴神が映し出される。
「能力は”超力”。まだまだ未熟ですが、大きな可能性を感じます。能力を使いこなせるようになれば唯一無二の能力者になるかもしれません」
三田寺先生の返しに学長が頷く。
「うん。やっぱりこの子があの男の生まれ変わりかもしれないね」
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