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異能学園最底辺C組 〜落ちこぼれ能力者たちの下克上〜  作者: ぺいぺい
第二章 中間試験 縦割りサバイバル編
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第54話 過去に置いてきたもの



「あなた、大切な人っていますか?」



國咲が話を始めた。



「え?そりゃあ家族とか友達とか、C組のみんなも大切だ」


「そうですか。いいですね、大切なものがいっぱいあって」


「お前にだってあるだろ?」


「ないです。・・・私、孤児なんですよ」



孤児って両親がいないってことか?



「幼い頃に両親に捨てられて施設で暮らしてきたんです。その環境のせいか人間が嫌いになって、友達なんてろくにできたこともありませんでした」



思いもよらない國咲の生まれ育った環境を聞くことになった。



「そんな私にも昔、たったひとりの大切な親友がいたんですよ。でもその子、体が弱くて入退院を繰り返してたんです。私は毎日その子のお見舞いに行ってました」



國咲が過去を語り始める。



「ある年、病状が急に悪くなってもう長くないってお医者さんに言われたんです。その頃、私はすでに能力が発現していたんですよ。今は数秒先しか未来が見えないですけど、その当時は1日先ぐらいの未来まで見えてたんです」



そんなに先の未来まで見ることができたのか。



「その子は私の能力のことを知ってましたから、毎日お見舞いに来る私に聞くんです。”私、明日も生きてる?”って・・・自分が明日も生きてるか分からなくて不安だから」



まるで自分の罪を告白するように辛く、脳に焼きついた記憶を吐露していく。



「私は聞かれるたびに能力を使ってその子の未来を見て答えていました、”大丈夫だよ”って。でも・・・」



國咲が俯く。



「ある日、いつものように”私、明日も生きてる?”って聞かれたんです。でも・・・その子が死ぬ未来が見えたんです」



國咲の声は震えている。



「私はその時、嘘をついたんですよ、”大丈夫だよ”って。悲しませたくなかったから・・・」



 國咲は泣いていた。

見るとしずくちゃんも泣いていた。

しずくちゃんの能力で國咲の感情が流れ込んでくる。

自然と俺も目頭が熱くなる。



「その子はいつものように安心してました。病室を出るときも”またね”って・・・もう会えないのに」



ポツン、と國咲の涙が落ちる。



「恨んでるはずです。なんで言ってくれなかったのって」



 言葉が見つからなかった。

軽い気持ちで何か返していいようには思えなかった。



「その子は家族もいて友達も多くて愛されている存在だったんです。なんでそんな子が病気になって、ひとりぼっちの私が生きてるんですか。できるなら代わってあげたかった」



 まるで自分が國咲であるかのように、

黒い、自己嫌悪の感情に支配される。



「で、でも、お前の”完全未来予測”の能力なら未来を変えられるんじゃ」


「無理なんです。病気や寿命のような強い未来を変えることはできないんです。寿命とはいわば”呪い”なんです。絶対に避けられない呪い」



そうか、そうなのか。



「こんな想いをするなら未来を見る能力なんてなければよかった。未来を見ても一つもいいことなんてなかった。・・・私は自分の能力が嫌いです」



能力がなければ親友の死を悟ることもなかったのか。



「守りたかった、大切な人もいなくなった私はもう、生きる意味もないんです。私が死んでも誰も悲しまない・・・から」



 國咲が三角座りをして顔を埋める。

辛かったよな、と同情してもそれは第三者からの慰めの言葉にしかならない。

でもしずくちゃんの能力で3人の心と体が共有されている今、國咲の抱えている想いが痛いぐらいに伝わった。



「俺が悲しむよ」



少し怒ったように言う。



「それは中間試験が上手く進まないからでしょ?」


「違うよ」



國咲が顔を上げる。



「俺たちはまだ1日だけだけど一緒に過ごした”仲間”なんだから。この縁は中間試験が終わっても切れねえよ」


「でも・・・」



國咲が口ごもる。



「大切な人がいないし生きる意味がないって言ったよな?じゃあ俺がお前の大切な人になるよ」


「え?」



國咲は戸惑っている。



「お前が死んだら俺が悲しむ。だから生きろ、わかったな」


「な、何言ってんですか」


「俺としずくちゃんのこと、守ってくれよ。俺たちも全力で守ってやるから」



國咲は驚いた顔をする。



「私のこと、嫌いじゃないんですか?」


「どうしたんだよ急に」


「私、出会った時から無愛想であなたに嫌われるようなことばっかり言ってたのに。普通の人はここまでされたら私のことを避けるのに」


「俺、お前のこと好きだぞ?」


「な、なんですか!?告白ですか!?」



國咲の顔が急に赤くなる。



「違うわ!」


「みくてれてるー!」



しずくちゃんが煽る。



「お前の悩んでもがきながら生きていく、そういう”人間らしい”とこ・・・好きだよ」



國咲がまた三角座りをして顔を埋める。



「・・・私もまだ能力者になりきれてなかったんですね」



少しの静寂が訪れる。



「よし!今日はもう寝るか!いっぱい歩いて疲れただろうしな!」



 壁に背をつけ、

3人で肩を寄せ合って眠りに入る。

出会った時にあった俺と國咲の壁はもうなくなっていた。

しずくちゃんの能力が消えていくのがわかる。


 プツッと3人の共有した感覚が消える前、

國咲の黒い感情は小さくなっており、代わりに暖かい、人の温もりのような優しい感情が流れてきた。

よかった・・・安心して眠れそうだ。





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