第53話 3人の繋がり
村を抜けて真夜中の森に逃げ込んだ。
國咲をお姫様抱っこで抱きかかえて走る。
意識はなく、俺の胸にもたれかかって目をつぶっている。
「おい!どこに行きやがった!」
村人の怒鳴り声が遠くから聞こえる。
「とにかく遠くまで逃げよう!」
後ろを必死についてくるしずくちゃんに言う。
ひたすらに暗い森の中を駆け抜ける。
時々、チラチラと村人の持っている松明が見える。
「おい國咲!大丈夫か!?」
國咲に呼びかけるが返事はない。
すると廃墟のような家を見つけた。
家と呼べないほど崩れかけており、ほとんど外のようだが、
屋根も少しある。
「ひゅうが!あそこにかくれよ!」
「うん!でもちょっと待って・・・」
もしかしたら先客がいるかもしれない。
腕輪を奪った天使が隠れてる可能性もある。
國咲を抱えたまま木の影に隠れて観察する。
見た感じ人の気配はない。
大丈夫そうだな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
崩れかけている家の一角に國咲をゆっくり下ろして壁にもたれかからせる。
呼吸はしてるし脈もある。
気を失っているだけのようだ
しずくちゃんが心配そうに國咲を見つめている。
「國咲は大丈夫そうだよ」
「うん、たおれたからびっくりしちゃった」
「そうだね、でも大丈夫そうでよかった。今日はここで泊まりだね」
しずくちゃんが安堵の表情を浮かべて座り込む。
しずくちゃんはそのままヨチヨチと四つん這いで移動し、國咲に寄り添って座った。
俺も國咲の隣に座り、國咲を真ん中に3人で座る。
「つかれた」
しずくちゃんがポツリと呟く。
「結局腕輪もゲット出来なかったしね」
腕輪は一足遅く天使に奪われた。
それにしても村長を殺して無理やり腕輪を奪うなんて・・・
「そんちょうさん、死んじゃったのかな」
「・・・うん。でもここは架空世界だから!」
架空世界だからこの世界の住人は現実には存在しない。
だから殺しても何をしても大丈夫。
そうと言っても俺に殺す勇気はない。
もし現実でも似たような状況があったら天使は同じことをするだろうか。
國咲にも考えが甘い、能力者としての自覚を持てと言われた。
能力者としての自覚ってなんだよ。
”能力者は人間じゃないんです!非人道的で自分の欲のままに動くんですよ!”
國咲はそう言っていた。
でも能力者だって人間だろ?
「能力者は人間を超越した存在」
目をつぶって壁にもたれかかっている國咲が口を開いた。
「能力が発現した時点で私たち能力者は人間ではなくなるんですよ」
國咲が目を開けて体を起こす。
「体、大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないです」
國咲がこちらを見ずに返す。
「そうだ!ひゅうがからぱわーもらお!ひゅうがのぱわーすごいんだよ!」
しずくちゃんが國咲に肩を合わせて能力を使う。
「ほら!みくとひゅうがも!」
しずくちゃんが催促する。
なんか気まずいが、國咲に軽く肩を合わせた。
國咲が嫌がる様子はなかった。
すると3人の心体が繋がっているのがわかり、
俺の中のパワーがどんどん國咲に流れていく。
体だけじゃなく心も共有しているからか、
2人の心情が伝わってくる。
黒い嫉妬心、自己嫌悪のような感情。
これはしずくちゃんじゃない、國咲の感情だろうか。
「お前の能力すごかったな。あの天使の技、絶対逃げられないと思った」
無意識に國咲を安心させるようなことを言った。
「・・・起こると確定している事象、つまり未来を変えられる技です。だからあの逃げられない暴風の竜巻も未来を変えて回避することができたんですよ」
本当にすごい能力だ。
あの能力のおかげで助かった。
「使ったのなんて久しぶりだったから気絶しちゃいました。でもあの金髪の女には勝てなかった・・・防ぐだけで精一杯だった」
國咲には珍しく弱気で自分を下げる発言だ。
國咲の黒い感情が強くなる。
「そんなことねぇよ、俺の能力と比べればめっちゃ強いだろ」
「まあそうですね」
即答される。
「そんなに能力が大事なのか?別に劣等感を感じる必要なんてないんじゃないか?」
「・・・弱いと何も救えないんですよ」
悲しい、無力感のような感情が國咲から流れてくる。
わからないが、國咲の心の奥のものを感じた気がした。
「あなた、大切な人っていますか?」
國咲が話を始めた。
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