第51話 逃走
3人で丸い木のテーブルに乗った大量の料理を頬張りながら作戦会議をする。
どうせ食い逃げするからやけくそになっていっぱい頼んでやった。
「まずは腕輪の情報を探りましょう。あとは他チームの動向も気になります。もしかしたらもうこの村に到着している他のチームがいるかもしれないですし」
國咲が冷静に今後の動きを考えている。
「まあまあ、今は食事を楽しもうぜ!なあしずくちゃん!」
「うん!6にちぶんたべるぞー!」
しずくちゃんと2人でテーブルの料理を取り合うように食べる。
口にノンストップで料理を投げ入れていく。
「さっきまで食い逃げを渋ってたのはどこのどいつですか・・・」
そう呆れている國咲の皿に乗っている料理を勝手に食べる。
「ちょっと!それは私のですよ!」
「知らねー!早く食べない方が悪いんだよ!」
瞬間、國咲からの強烈な右ストレートが俺の頬に直撃する。
「いでぇ!何しやがる!」
國咲の腕を掴んで抑えようとするが見事に躱される。
「お前、能力使ってるだろ!」
「じゃああなたも能力使えばいいじゃないですか〜。あ、そうか、あなたはぶっ放すしかできないですもんね〜、ぶっ放しバカ!」
気にしてること言いやがって!
カチンときて2人で取っ組み合いの喧嘩になる。
しずくちゃんはそれを横目に今のうちだと言わんばかりに俺の料理を食べている。
前みたいに止めてはくれないようだ。
「おいおいそこの2人、喧嘩はよしてくれ」
違うテーブルから男性が3人こちらに寄ってきた。
國咲とつかみ合いになりながらその男性たちの方を見る。
「あんたたち、珍しい格好してるけど、旅の人か?」
怪しまれるのはまずいな、村で行動しにくくなる。
國咲もそう感じたのか俺の頬を引っ張っていた手を離す。
「まあそんな感じです。少し聞きたいんですけど、ここら辺でこういう金色で宝石が飾られてる腕輪とか見たことありませんか?」
俺がジェスチャーを交えて腕輪のことを説明する。
「もしかして村長の腕輪のことか?」
「村長の腕輪?」
「ああ、この村の村長に代々受け継がれている腕輪のことだ。その腕輪がどうしたんだ?」
よし!運がいいことに腕輪の情報を手に入れた!
でも、ここで腕輪が欲しいとは言えないしな。
どうするべきか?
「私たち研究者なんですよ。この村に代々受け継がれている腕輪があると噂を聞きつけてやってきたんです」
國咲が咄嗟に自分たちの嘘の素性を明かした。
なかなか機転が利く奴だな。
「おおっ、そうか!なら大歓迎だ!あの腕輪は貴重なものだからな」
「他に同じ腕輪を見たことはないですか?」
「あー、近くの遺跡にも似たような腕輪があるって噂らしいが、多分偽物だろうな」
いや、本物だな。
村の腕輪とその遺跡の腕輪も手に入れれば一気に腕輪2つゲットだ!
これは俺たちが最速なんじゃないか?
「とにかく、今日はもう遅いし明日また来てくれたら村長の所に案内するよ!」
「ありがとうございます」
國咲がドヤ顔をしてこっちを見てくる。
いや、お前だけの手柄じゃねーから。
「そういえばついさっきも腕輪を見たいって旅の奴が来たな。もしかして知り合いか?」
「なんですって!?」
國咲が体を乗り出して村の人に突っかかる。
「いや、そいつらも腕輪を見たいって言ってたんだが、今日は無理だって行ったら諦めたよ」
くそ!既に他のチームがこの村にきてたのか!
「なるほど、わかりました。ちなみに村長の家はどこなんですか?」
「え、村の一番奥にある丘の上だけど」
「ありがとうございます」
國咲が急に冷静になった。
男たちが去っていく。
「他の奴らも来てるんだな。これは明日の朝すぐに村長の所に行こうぜ」
「何を呑気なこと言ってるんですか。今すぐ行きますよ」
「え、なんで?」
「他のチームが来てるなら話は別です」
國咲が立ち上がる。
「でも諦めて帰ったんだろ?」
「帰るわけないでしょ?今頃村長の家に向かってるはずですよ!」
國咲がご飯を食べているしずくちゃんを抱きかかえた。
「んー!」
しずくちゃんは手足をバタバタさせている。
「行きますよ!」
國咲が入り口に向かって走り出す。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
慌てて後ろを追いかける。
「お客さん!」
異変を感じた店の人が叫ぶ。
食い逃げに気づかれたか!?
すぐに國咲の前に人が立ちはだかって止めようとする。
しかし國咲は能力を使ったのか華麗に避け、
なんと止めに来た人の顔面を思いっきり蹴った。
「これが代金の代わりですよ!」
蹴られた人が地面にぶっ倒れる。
「みくつよい!」
「おい、そんなことしていいのかよ!?」
「能力者に刃向かった方が悪いんですよ!」
食堂を飛び出すと、
すでにあたりは暗くなっていた。
「村長の家を探しましょう!」
「ちょっと待てよ!本当に他のチームがいるのかよ!あの人が話してただけだし、諦めて帰った可能性もあるんじゃ」
走りながら國咲をなだめようとする。
「あなたは本っ当に考えが甘いんですよ!能力者は人間じゃないんです!非人道的で自分の欲のままに動くんですよ!あなたもいい加減に自分が能力者だって自覚を持ったらどうですか!?」
「な、何を言ってるんだよ!」
「これだからC組は・・・自分のことをまだ人間だと思い込んでるやつが多すぎる」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
村長の家は村の一番奥の丘の上。
「あそこです!」
國咲が指差した方向には丘があり、
その頂上にはポツンと家が一軒建っている。
丘を登り始めて村長の家に近づくと何か異様な雰囲気を感じた。
「何かおかしくないか!」
「だから言ったでしょ!?」
確実に何か起こってる。
家の中から何か感じる。
得体のしれない恐怖感が襲う。
まるで王様ゴールで初めてA組と対峙した時のようだ。
「もし今から遭遇するチームが腕輪を奪っていたら・・・戦闘になります」
「村長から奪った腕輪をさらに奪うってことか」
「そうです。当たり前ですが相手も能力者ですから注意してください」
「わかってる」
途端、家からガシャン!と大きな音が聞こえた。
何か崩れるような音だ。
「急ぎましょう!」
家の玄関の扉は空いており、
國咲がそのまま家の中に飛び込んだ。
家の中は家具が散らかっていた。
これは人の手で荒らされている。
そして部屋の真ん中には村長らしき人物が倒れている。
そんな村長を見下すように立っているのは・・・A組の天使だった。
「あ、天使!」
天使の手には腕輪が握られていた。
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