第50話 欲には勝てない
サソリの作った足跡にまんまと騙された俺たちは、
見事サソリを退治した。
そして歩き始めてしばらく経った。
もう國咲とも喧嘩する気力もなく、ひたすら砂を踏みしめて歩き続ける。
「づかれだぁ」
しずくちゃんがベロを出しながらトボトボ歩いている。
確かにもう限界だ。
さっきの戦闘での疲れもある。
頭がフラフラしてきた感じがする。
気のせいか目の前の景色も揺れて見える。
これは絶対蜃気楼じゃない、体が危ない時のやつだ。
「なあ國咲、未来見てくれよ」
自然とゆっくりな話し方になる。
暑さでうまく口が回らない。
「だから数秒先しか見れないって言ってるじゃないですか」
國咲もだいぶ疲れた様子だ。
「俺、数秒後に死んでたりしないよな?」
「どうでしょうね」
そんな時、
「あっ!」
しずくちゃんが大きく叫んだ。
「あしあとだ!」
とてもデジャブな光景だったが、
そこには先ほどと似た足跡が伸びていた。
「残念ですけどサソリの足跡でしょうね」
國咲が足跡と違う方向を歩き出す。
「・・・この足跡は本物だ!」
「はぁ?サソリの足跡に決まってるでしょ?」
俺の驚きとは対照的に、國咲が呆れた顔で振り向く。
「これは正真正銘、人の足跡だって!」
「本っ当に言ってます?何も学習してないんですね!」
「俺を信じろって!」
「いや、信じろってさっきサソリに襲われたの忘れたんですか!?」
「行くぞ!」
國咲を残し、しずくちゃんを抱きかかえて足跡を辿って走る。
「いけー!」
しずくちゃんが高らかに叫ぶ。
俺にまだこんな元気が残ってたとは。
「最っ悪のチームですね!」
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足跡を辿って少しすると、遠くの方に村を発見した。
「ほら!だから言っただろ!?」
後ろを振り返って國咲にドヤ顔で宣言する。
「はいはい、すごいですねー」
國咲が気に留めずに進んでいく。
村に到着すると、正面には大きなゲートがあって、
そこの看板に「未影村」と書いてあった。
変な名前の村だな。
「とにかく、水でも飲もうぜ」
村の中に足を踏み入れる。
村はコンクリートの建物なんて一切なく全て木や藁を基調とした建物でできており、
村の住人も民族衣装のようなものを着ていた。
「みんなむかしのひとみたい」
「多分この村はそういう設定なんでしょうね」
「なるほど、っていうか飯屋とか宿屋あるのか?」
時間は時計もないからわからないが、多分夕方前。
ずっと何も食べず歩いてるからヘトヘトでペコペコだ。
あてもなく村の中を歩き回る。
村の住人は俺たちをあまり気にしていない様子だ。
旅人とかだと思われてるんだろうな。
「おなかへった」
しずくちゃんが呟く。
「うーん、でも俺たち一文無しだからな」
金ぐらい持たせてくれよな。
「あっ、食堂っぽいものがありますね」
國咲が見つめる先は奥に木の丸いテーブルがズラッと並んでいて、
そこで村の住人が食事を楽しんでいる。
どれも美味しそうだ。
何も食べてないからかよだれが止まらない。
それはしずくちゃんも同じだった。
「入りましょう」
國咲が食堂に向かっていく。
「ちょ、ちょっと待て!金持ってないぞ!?」
「何言ってるんですか、食い逃げすればいいだけでしょ?」
「食い逃げ!?いや、それは・・・」
「ここは架空世界ですよ?食い逃げしても罪に問われませんし」
三田寺先生の言葉を思い出す。
ー 中間試験の舞台は能力で作られた架空世界。架空世界の中には村があってそこで生活している”架空の人間”もいる。つまり架空世界の中の人間に対しては何をしてもいいってことだ ー
でも、本当にいいのか?
頭の中で葛藤が始まる。
「行かないなら私としずくちゃんで行きます」
國咲がしずくちゃんに優しい表情でおいで、と手招きする。
「しずくちゃんの教育に悪いと思うぞ!」
そんなしずくちゃんは國咲を追い越して一目散に食堂に走って行った。




