第29話 結果が全て
流星とともにC組の陣地に戻っている途中、
ピーっという音がスピーカーから聞こえた。
この音は!
「日向くん!見て!」
流星が電光掲示板を指差して嬉しそうに言う。
見ると、2対2になっていた。
「日向くん!2対2だよ!」
「おお!あいつらがやってくれたんだ!」
これで同点だ!
「C組だからって油断したな。これが頭を使うってことだよ」
王様は得点したら3分間のクールタイムで得点できない。
試合時間は残り1分半、
この時点でC組はもう得点できない。
なら王様の俺は凶獄を止めに行くだけだ!
よしよし!作戦通りだ!
一時はどうなることかと思ったが、みんなを信じてよかった。
次は俺たちの番だ。
「流星!俺らもやるぞ!」
「うん!スピードをあげるよ!」
一気に速度が速くなる。
「おい、無茶はしすぎるなよ」
「無茶ぐらいするよ。みんながこれだけ頑張ってくれてるんだから」
流星の表情はやる気に満ち溢れていた。
仙撃が先に護衛数人を連れて凶獄を止めに行ってる。
仙撃は無事なのか・・・
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C組陣地前 仙撃
「得点しやがったか」
目の前には両手を大きく広げ、
周りが黒い炎で包まれている凶獄がいた。
前には凶獄一人。
俺の周りには凶獄にやられたC組の生徒がたくさん横たわっている。
残りは俺含めて数人だけだ。
こいつ、さっきから得点しようとせずに俺たちを痛めつけて遊んでいるようだ。
多分、もう俺たちに勝ったつもりでいるんだろうな。
連絡役の神藤は安寧とミリシャが、凶獄が到着する前に避難させたし無事だ。
しかし神藤の疲労が大きく、もう能力は使えないだろう。
神藤、次のA組との試合は厳しいかもな・・・
いや、今はB組との試合に集中だ。
「何を考えてんだ?」
凶獄が話しかけてくる。
「いや?お前をどうやって止めようかなってな」
「試合時間はあと1分。今は2対2、クールタイムでお前たちC組はもう得点できない。つまり俺たちの負けはないってことだ」
凶獄が嘲笑うように挑発してくる。
「それがどうしたんだ?お前を止めて引き分けにするだけだよ」
「そうか。あと1分、王様の俺を止められるか?」
ゴゴゴゴと黒い炎が高く燃え盛り、弾ける音が聞こえる。
雰囲気が一気に戦闘態勢に変わる。
「みんな!なんとかあいつを止めるぞ!」
まだ動ける数人のC組の生徒に声をかける。
「先手必勝!」
”煙”の能力を持つ薄井が凶獄に向かって煙を発射する。
「さっきはよくもやってくれたな!」
凶極に向かって煙は進んでいくが、
凶極の放った衝撃で煙はすぐに吹き飛ばされた。
しかし間髪入れずに小人たちが煙の隙間から飛び出し、
凶獄に摑みかかる。
安寧の能力だ!
小人の数は100人を軽く超えている。
小人は凶獄に飛びかかり、
小人に囲まれて凶獄は姿が見えなくなっている。
「小人さんたち、頑張ってください〜」
後ろから安寧の声が聞こえる。
「よし!」
しかし、凶獄に掴みかかった小人たちが一斉に黒く燃え上がった。
痛々しいが可愛い声でギャァァァーと叫んで消えていく。
小人たちが消えてゆき、ニヤニヤと笑う凶獄が出てくる。
「こんなもんか?」
凶獄が楽しそうに笑いながら言う。
「くそっ!こいつの炎の能力、強ぇ!」
後ろにいるC組の生徒が言う。
いや、違う。
正確にはこいつの能力は炎じゃない。
こいつは”化身型”の能力者。
”化身型”は”変身型”の上位互換の能力型で、
何か概念やもっと上の存在の能力が使えることだ。
その時、凶獄の頭上からミリシャが降ってきて凶獄に直撃し、
首を掴んで地面に取り押さえた。
ビルの上を見ると音無がいた。
ミリシャの”重力変化”の能力で飛び降りてきて、
さらに音無の”音操作”の能力で音を消して気づかれないようにしたのか!
「どうだ!完璧に不意をついてやった!」
しかしミリシャが首を掴んで取り押さえている凶獄がドロッ解け始める。
ドス黒く、全てを飲み込むような液体。
「な、なんだ!?どうなってる!?」
ミリシャが驚きの声を上げる。
こいつは”化身型”の能力者。
化身の元は・・・
死後、罪を犯した者が向かう場所。
異形の怪物や人ならざるものが棲みつく場所。
文字通り想像を絶する恐怖が待ち受ける場所。
こいつは”地獄”の化身なんだよ。
その液体から凶獄が実体化されていく。
凶獄はミリシャの後ろに立っている。
ミリシャは気づいていない。
後ろだ!と言おうとしたが遅く、
凶獄がミリシャの腹に蹴りを入れ、ミリシャが近くのビルに向かって蹴り飛ばされる。
ガシャーン!と瓦礫が崩れる音が聞こえる。
凶獄がチラッと電光掲示板の時間を見る。
「残り時間が少ないな」
すると凶獄が右足で地面を強く踏みつけた。
「何かしてくるぞ!」
C組のみんなに呼びかける。
得点するつもりだ!
途端、何かに足首を掴まれた。
下を見ると足元には赤いグツグツと沸き立つ水たまりができており、
そこから薄気味悪い骸骨が出てきて足を掴んでいる。
そして一気に引きずりこまれそうになる。
咄嗟に骸骨に向かって衝撃波を放つ。
赤い水たまりと骸骨は消え去ったが、
他のC組のみんなの姿が見えなかった。
くそっ!俺以外は全員やられた!
隙をついて凶獄がC組の陣地に向かって突進してくる。
凶極向かって衝撃波を放つも、
いともたやすく破壊される。
凶獄が目の前にまで迫る。
「お前たちの負けだよ」
ニヤッと笑う凶獄。
やっぱり俺たちC組じゃダメなのか・・・
そう諦めかけた時、何かが凶獄に思いっきりぶつかった。
「間に合った!」
それは王様の鳴神と白川だった。
「鳴神!白川!」
「慢心したな!お前を止めに来たぞ、凶獄!」
鳴神が凶極に言う。
鳴神は得点させまいと凶獄の胸ぐらを掴んで取り押さえようとしている。
「お前らこそ俺を止めれたと慢心してるんじゃねーか?まだ試合は終わってねーぞ!」
凶獄が力を強め、一気にC組陣地の白線側に押し込まれる。
試合時間は残り数秒。
3人で押し込もうとする凶獄に対抗する。
足が地面を擦ってズルズルと押し込まれる。
頼む!早く終わってくれ!
白川の”速度変化”の能力を利用して3人で凶獄を押し返す。
うぉぉぉぉ!と鳴神と凶獄の叫び声が聞こえる。
瞬間、
ピーッ!と試合終了の笛の音が鳴る。
防ぎ切れたのか!?
「お前らC組の負けだ」
下を見ると俺たちは凶獄に押し込まれてC組の陣地の白線の内側に立っていた。
凶獄が呟くと電光掲示板に点数が追加された。
「結果は2対3でB組の勝利だ!」
スピーカーから残酷なA組の先生の声が聞こえ、
C組に敗北を告げた。




