表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/92

第2話 テレパシー



「あなたと同じ ”能力者” よ」



 眩しいほど美しく長い金髪がスカートと共にひらりと風に舞う。

その姿はとても綺麗でつい見惚れてしまった。


 金髪の女の子は俺を置いて去っていった。

その後ろ姿を見つめる。

動こうと思ってもなかなかその場から動くことができない。

だってさっきまで空を飛んでたんだ。


 その体験が忘れられず、

なかなか気持ちを切り替えることができない。

まだ空を飛んでいたフワフワとした感覚が残っている。


 っていうか能力者って空を飛ぶ能力とかもあんのかよ!

化け物かよ・・・

いや、化け物っていうか天使か。


 あの白く大きな美しい翼。

その翼を綺麗にはためかせて空を飛んでいた。

あんなの能力だと言われても信じられないぐらいだ。

まさか人間の背中から翼が生えるなんて。



「だ、大丈夫ですか?」



地面にへたりこんでいると、誰かが近づいてきた。



「は、はい・・・」



 女性の方だ。

学校の先生か職員さんだろう。



「新入生の方ですよね?もう能力面談が始まってるのでこちらへお願いします」



 能力面談?なんだそれ。

お姉さんが立ち上がれない俺の手を引っ張って立たせてくれた。

ヨロヨロの状態でお姉さんの肩を借りながら校門へ向かう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 学校の中をお姉さんと進む。

校内はとても綺麗だ。

まだ新築で古さは全く感じられない。

落ち着いた雰囲気で異能学園の品の良さが伺える。

国立だし、国が管理しているというのもあるのだろう。


 でも時々、

そんな綺麗な空間には似合わない光景が目に入ってくる。

なぜか壁が真っ黒に焦げていたり、壁が凹んで殴られたような跡が見られる。

なにこれ、怖いんだけど。



「あのー、たまに壁が壊れてたりするのはどうしてですか?」



前を歩くお姉さんに聞いてみる。



「あー、能力で遊んだりする生徒が校舎を壊しちゃうんです」



 やっぱりか。

もしかして能力者って野蛮な奴が多いのか?


 お姉さんと一緒に廊下を進んでいくと、

生徒が教室の前の廊下に並んでいた。

制服の綺麗さを見るに俺と同じ新入生っぽい。



「ここで能力面談を行いますので、並んで待っていてください」



 お姉さんはそう言うとどこかへ歩いて行った。

列の最後尾に並ぶ。

っていうかこれみんな能力者だよな。


 にしても結構新入生いるんだな・・・あ!

俺の何人か前にさっきの金髪が並んでいる。

不機嫌そうに壁にもたれかかって指で腕をトントン叩いてる。

いかにも他の生徒とは違う雰囲気を感じるな。



「次の人ー」



 先生だろうかが教室の中から顔を覗かせ、

最前列の生徒に教室に入ることを促している。

まず能力面談って何をするんだ?

能力を確認してるのか?


 すると突然、ドンッ!と爆発音が奥の教室から聞こえた。

さらに続けて目の前の教室から、

あぁぁぁ!と叫び声も聞こえた。


 おい、教室の中で何が起こってるんだよ。

並んでいる生徒もその恐ろしい音に怯えている。



「な、何の音!?」



 俺の前に並んでいる女の子も教室から聞こえる異様な音に恐怖していた。

銀髪ロングで大人しそうな女の子。

怖いのか、両手で頭を抱えてギュッ!と目を見開いている。

そして不安でじっとしてられないのかオロオロとその場で動き回っている。



「すごい音だな」



後ろから声をかけると、



「ひゃあ!」



銀髪の女の子は俺の声に驚いて勢いよく真上に飛び跳ねた。



「ご、ごめん!急に話しかけて!」


「だ、大丈夫です!ごめんなさい・・・」



 互いの謝り合戦が始まる。

女の子は銀髪で、

俺を見上げるような形で困り顔をしている。

ウルウルとした瞳をしていて、不安で泣きそうなのが伝わってくる。



「能力者だけの学校なんて怖いよな。俺、能力者なんて全然会ったことなくて」


「私も遠くの田舎からきたので不安なことばかりです・・・」



 遠くから来る子もいるのか。

優しくて純粋な雰囲気が伝わってくる。



「へー、ちなみにどんな能力なんだ?」



まさか、さっきの金髪みたいにとんでもない能力じゃないよな?



「えっと、私は”交信”という能力です。話さなくても相手の人にテレパシーで思ったことを伝えられるんです」


「テレパシー!?え、すごい!ちょっとやってみてよ!」



 俺がそう言うと銀髪の女の子はコクンと頷き、

俺の目をじっと見つめ始めた。



「少し触れてもいいですか?」


「え?あ、いいよ」



 俺の腕を遠慮がちに軽く触れる。

触れないと能力が使えないのか。


 集中して俺のことをじっと見つめている。

・・・可愛いな。


 さっきの金髪みたいなクールで美人な顔立ちじゃなくて、

この銀髪ロングの女の子は目が大きくて可愛らしい顔立ちだ。


 力が入っているのか俺に触れてない方の拳を胸の前でぎゅっと握っている。

すると、



ー 聞こえますか? ー



突然、声が脳に聞こえてきた。



「すげー!聞こえる!」



女の子の口は閉じている。



ー よかったです!あなたも何か伝えてみてください! ー



 脳に銀髪の女の子の声が響く。

俺も目をじっと見つめて想いを込める。

女の子は見つめられるのが恥ずかしいのかチラチラと視線を外している。


 グーっと伝えたいことを考え、

言葉を脳から伝えようとする。



ー 聞こえてる? ー


ー あ!聞こえました! ー


ー おー!すげー!”交信”ってすごい能力じゃん! ー


ー いえいえ全然です!こんな能力、役に立ちませんから ー



 脳で会話するなんて変な感覚だ。

他の人から見ると見つめあって何してんだって感じだろうな。

すると、



「次の人、どうぞー」



 と銀髪の女の子が教室の中に入るよう促された。

いつの間にか順番が回ってきてたみたいだ。



ー じゃあ行ってきますね ー



 銀髪の女の子はテレパシーでそう伝えると微笑んで教室に入っていった。

すごい、能力には色んな種類があるんだな。



「あー、次の人ー」



 呼ばれた!

奥の教室からだ。

よし、能力面談だ!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ