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第28話 役立たずの能力



「陽動隊、本隊に合流!」



流星たち陽動隊が俺たちの横に立つ。



「流星!」


「遅れてごめん、日向くん。B組の護衛がしつこくて」



 流星はいつも通り話しているが、

目や口からはダラダラと血を流して、

心臓を痛そうに抑えている。



「お、おい。大丈夫か?」



あまりの辛そうな様子に声をかける。



「能力で体に負荷を与えすぎた・・・でも大丈夫。傷ついてるのは僕だけじゃないから」



 そう言って流星が自分以外の陽動隊のメンバーを見る。

確かに流星以外の陽動隊のメンバーも負傷者が多いように見える。

王様のフリとここまで逃げてくるまで相当頑張ってくれたんだろうな。



「日向くん、すぐにB組の防衛たちが到着する。クールタイムは終わってるよね?」


「あ、ああ、終わってる」



 流星が怪我なんてどうでもいいというように話す。

その姿はとても頼もしく見えた。



「じゃあこのままもう1点獲ろう!そうすれば1点差で勝てる!」



 流星の言う通り、今は1対1。

試合の残り時間も少ない。

陽動隊もC組の護衛もみんな満身創痍だ。

あと、さっきから神藤さんと連絡が取れないのが気になる。


 まさか凶獄に見つかったのか・・・

頼んだぞ、仙撃。


 その時、

ピーッと大きな音がスピーカーから聞こえた。

この音は得点した時の音だ!


 慌てて電光掲示板を見ると2対1になっていた。

まずい、このままじゃ!



「見つけた!」



 声に釣られて後ろを振り向くと、

B組の防衛たちであろう生徒が大勢いた。

追いつかれた!


 俺たちC組を中心にB組の防衛と護衛たちに挟まれる形になる。

ここには凶極以外のB組全員がいる。


 30人ほどだろうか。

こちらは陽動隊を合わせても10人ほど。



「やるしかなさそうだね」



流星が呟く。



「鳴神!何かくるぞ!」



 C組の護衛の声の方を向くと、

B組の防衛から砂が勢いよくこちらに向かってきていた。



「あぁ!こいつに手こずってなかなか合流出来なかったんだ!」



 流星が叫ぶ。

B組の防衛側で1人の生徒が砂を操っているのが見えた。

こいつはA組対B組の時に見た砂の能力か!


 考える前にそいつに向かって”中火力砲”をぶっ放した。

放ったエネルギー砲と砂が拮抗してる!

かと思えば砂は勢いを増して俺の放ったエネルギー砲を飲み込んだ。

ダメだ!威力が弱すぎたか!


 砂は形を変えて俺たちを中心に砂嵐となった。

完全に外から遮られて身動きが取れなくなった。

砂嵐は高速で回転していて少しでも触れれば大怪我しそうな勢いだ。

上もしっかり塞がれていて跳田の能力で飛んで逃げることもできない!



「やばいって!」「どうしよう!」



C組のみんなの焦りの声が聞こえる。



「みんな落ち着け!」



 すると砂嵐はさらに形を変え、

大きな球状の空間となって俺たちを閉じ込めた。



「閉じ込められた!」



 ドンドンと砂の壁を叩くが、

硬くて出れそうにない。



「このままじゃ2対1で負けちゃう!」



焦る声が聞こえる。



「一旦落ち着いてこれからの作戦を考えよう。B組のやつらが襲ってくる気配もないし」


「・・・もう無理だよ」



ひとりの生徒がそう言ってその場に座った。



「大丈夫だって!まだ勝機はある!」



 そんな俺の声も届いていないようで、

その生徒は三角座りをして塞ぎ込んでしまった。

それを見た他のみんなが同じように座り始める。



「やっぱり俺たちC組じゃ無理なんだ」「結局能力が全てかよ」



 まずい、狭い空間だからか、負の感情がどんどん連鎖していってる。

座り込んだみんなの目からは完全に闘志が消えていた。



「みんな!諦めちゃダメだって!」



戦意を失った仲間に必死に呼びかける。



「無理だよ鳴神。見ただろ?B組の能力を。やつらと俺たちじゃ差がありすぎるんだよ」


「確かに差はある。でもそれは個人の能力差で、みんなで協力すれば必ず互角に戦えるって!」



 俺の言葉に誰も返答しなかった。

隣の流星でさえ、心が折れかけているのがわかった。



「ここで諦めたら本当の負け組になる・・・三田寺先生はそう言ってたよな?」



三田寺先生の言葉を借りる。



「でも・・・無理だよ・・・」


「そんなのまだわからないだろ?それに、俺たちが諦めかけている今もC組の防衛は俺たちが得点することを信じて必死に陣地を守ってくれてるかもしれないぞ?」



 実際にそうだ。

C組の防衛も凶獄を追いかけた仙撃と一部の護衛、そして神藤さんたち。

みんな俺たちが得点するのを信じて頑張ってくれている。

なら、俺たちもその期待に応えるべきだ。



「確かに・・・防衛のみんなが頑張ってるのに私たちが諦めちゃダメじゃん」



一人が呟いた。



「だよな、まだ勝負は終わってない」



みんなの目に火が灯り始めた。



「ここで諦めて負け組のまま学園にいるか、全力で立ち向かって負けても信念を貫いた負け組でいるかならどっちがいい?」



 みんなに問いかける。

返事はすぐに返ってきた。



「そんな負け組嫌だ!」「ここまで来たんだし、最後まで泥臭く行こう!」「そうだそうだ!」



 全員が立ち上がった。

よかった、俺の言葉が届いたのか。



「やったね、日向くん」


「うん、みんな、B組のやつらは俺たちを試合終了までこのまま砂に閉じ込めるつもりだ」



 B組もA組ほどではないが一人一人の能力が強い。

でもA組の手も足も出ないような絶望的な能力じゃない!



「英田!お前の”部分硬化”の能力で砂の壁に穴を開けられないか!?」



 C組の護衛の英田拳士は”部分硬化”の能力者だ。

体の一部分を硬化させることができる。



「開けられるけどこの分厚い砂の壁じゃ拳ぐらいの小さな穴を開けるので限界だ。人が出れるような大きさじゃない。鳴神の能力の方が大きな穴を開けられるんじゃないか?」



 英田でもそれぐらいの穴か。

俺の能力でもいいが、外はB組に囲まれている。



「作戦がある!みんな手短に話すから聞いてくれ!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



砂の中に閉じ込められたみんなに作戦を伝えた。



「了解!やってみよう!」


「即興で考えた作戦だし、うまくいかない可能性の方が高い。でもその可能性に賭けてみよう!」



 みんなが俺を信じて動いてくれる。

俺も期待に答えないと。



「流星、行けるか?」


「うん!」



 その返事と同時に厚い砂の壁に向かって高火力のエネルギー砲をぶっ放す。

さっきよりも威力の強い一撃だ。

砂の壁ぐらい余裕で破壊できる!


 すぐに砂の壁に亀裂が入り、

バリンという音とともに球状に囲まれた砂の壁の片方に大きな穴ができ、

間髪入れずに俺と流星は外へ飛び出した。



「出てきやがった!王様だ!」



すぐに外のB組が俺たちに気づく。



「ちょっと待て!こいつ王様の腕章をしてないぞ!」



 よし、気づいた!王様の腕章をつけていないことをアピールできた!

その言葉を聞いてすぐに流星の能力でその場から離れ、

C組の陣地へ向かう。



「C組の王様、腕章をつけずに仲間を置いて逃げやがったぜ!アハハ!」


「逃げてねぇよ!これは戦略的撤退だ!」



 そう捨て台詞を吐いて自分たちの陣地へ急ぐ。

後ろを確認するが追ってくる様子はない。



「日向くん!追ってきてない!」


「作戦通りだ!あとはあいつらに任せよう!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 C組の数名が残される。

砂の壁には鳴神の空けた穴が空いている。



「よし!」



 ”バネ”の能力を持つ跳田は穴から外に出て、

足をバネに変形させ強く伸縮し、その場から一気に飛び上がった。

唐突に飛んだ跳田を警戒し、

B組の護衛と防衛が空中の跳田に釘付けになっている。


 跳田が外に出た頃、

砂の中では英田が”部分硬化”の能力を使い、

拳を硬化させて思いっきり砂の壁を殴った。



「おりゃあああああ!」



 ガツンと砂の壁を殴ったが、

予想通り拳1つ分ほどの穴しか空かなかった。

B組は跳田に夢中でそれに気づかない。



「やっと私の出番だ!」



そう言ったのは体の一部を弓に変身させられる”変身:弓”の能力を持つ弓木盛夏だった。



「体を弓にさせるって一番意味ない能力だって思ってたけど、まさか役に立つ時がくるなんて!」



 弓木は自分の腕を弓に変身させて弦を後ろに強く弾く。

矢には王様の腕章が括り付けてある。



「尾藤!重山!2人とも早く!」



 弓木が催促したのは対象の幻影を作り出す”幻影”の能力を持つ尾藤と、

対象を数秒間だけ透明にさせる”透明化”の能力を持つ重山だった。



「二人とも!私の矢に能力かけた!?」


「か、かけたよ!」「かけた!」


「おっけー!あとは私の役目ね・・・頑張れ私!こいつ倒したら新しい洋服絶対買う!」



 弓木は弦をさらに強く引き、

矢を英田の空けた小さな穴から発射した。


 穴から出た矢は重山の能力で透明化されていて誰も矢に気づいていない。

矢は王様の腕章を付け、一直線にゴールに飛んでいく。


 ましてやC組は砂の壁で囲まれているため、中での行動は一切バレていなかった。

矢がB組の砂の能力者の横を通る。



「今なにか風が・・・」


 

 砂の能力者が何かを感じて振り向いた時、

ちょうど重山による数秒間の矢の透明化が解けた。


 砂の能力者は突然現れた矢、

さらに矢に括り付けてある王様の腕章を見て全てを察した。



「あの矢を止めろ!」



 砂の能力者の呼びかけでB組の防衛全員が矢の存在に気づく。

しかし矢はどんどんとB組の陣地に向かって飛んでいく。


 砂の能力者は急いで矢を止めようとする。

C組を取り囲んでいた砂の壁を解除して矢に向かわせ、

さらに地面に落ちている砂を集めて矢に飛ばした。

砂は矢に直撃し、B組の陣地の10mほど手前で矢を砂で叩き落とした。



「ふ、ふん!こざかしいマネしやがって!」



 砂の能力者は勝ち誇ったように閉じ込めていたC組を見たが、

弓木をはじめとしたC組みの生徒たちは笑っていた。



「バーカ!そっちは幻影だよ!」



 弓木が言う。

砂の能力者がハッ!矢の方を振り返ると、

落としたはずの弓が飛んでいた。



「ど、どういうことだ!?」


「お前が落としたのは幻影の方の矢で、実はその横に本物の矢が飛んでるんだよ!

それであえて幻影の方の矢の透明化解除を早めたんだよ!全部鳴神の作戦だ!」



 本物の矢はB組の陣地を超え、

場にピーッと得点の音が鳴り響く。

すぐに電光掲示板に2対2と表示される。


 試合時間は残り1分半ほど。 

王様は得点すれば3分間のクールタイムがあってその間は得点できない。

鳴神は次の得点が最後だとわかっていた。


 だから王様の腕章を弓木に託し、

得点してくれることを信じた。

そして凶獄を止められる可能性がある自分と流星は凶獄を止めに行くことにした。



「やったぁぁぁ!私たちやったよ!」



 試合時間残り1分半。

焦りの表情を浮かべるB組に対してC組の弓木たちは抱き合って喜んでいた。





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