第27話 凶極黒臣
凶獄の後ろには大きな門が鎮座している。
門の中は赤黒く燃え盛る炎が広がっており、先が見えない。
「この”地獄之門”は絶望そのもの。お前の淡い希望さえも容易く飲み込む」
禍々しく、異様なオーラに場が包まれる。
まずい、これはかなりまずい気がする。
今まで出会った能力者とは比べられないほどの威圧と心の底からの恐怖を感じる。
「人間は死んだらどこに行くんだろうなぁ」
凶獄が笑いながら俺に語りかける。
「な、何いってやがる」
「”地獄”の化身型の能力者の俺が死んだらどうなるんだろうなぁ」
”地獄”の化身型の能力?
それって仙撃が言ってた能力の種類か。
仙撃の言葉を思い出す。
”化身型”は何か概念や抽象的なものの化身に自分がなる能力だ。”化身型”なんて滅多にお目にかかれない能力者だが、A組やB組にならいるかもしれないな
「仙撃、”地獄”の化身って・・・」
「ああ、相当やばいぞ」
瞬間、凶獄の後ろの門からズンッと大きな足音がした。
「おお、お目覚めだ!」
凶獄が嬉しそうに言う。
地面が沈み込む程の大きな足音だ。
何かが門から出てくる。
門から出てきたそれは、3mはある大きさで、
ブヨブヨの真っ赤な体にギョロッとした不気味で白く大きな目。
高く伸びる2本の白いツノ、口には何本もの鋭い牙が生えている。
手には大きな黒い金棒を持っている。
歩くたびに地響きが起こる。
・・・鬼だ。
「そういえばB組の防衛はどこ行った?なぜお前たちを止めなかったんだ」
あっけにとられている俺たちC組に凶獄が話し掛ける。
「王様がいるように見せかけたもう1つの部隊、つまり陽動隊を用意したんだよ」
素直に凶獄に作戦を教えてやる。
どうせもう陽動隊は使えない。
「なるほど、陽動隊か。しょうもないこと考えやがって」
「そのしょうもない作戦にお前らB組の防衛全員引っかかったけどな!」
「ふん、まあいい。それに気づいた防衛がすぐに来る。そうすればB組全員がここに集合するぞ?」
確かにB組全員くるのはまずい。
B組全員で30人ぐらいか?
こちらは王様の俺とC組の護衛。
もうすぐ流星率いる陽動隊がこちらに到着する。
それでもこちらは20人程・・・
C組の防衛のみんなに連絡してこちらも全員集合させるか?
・・・いや、それはダメだ。
「それより、お前らB組はクールタイムも終わってるし、早く得点しに行った方がいいんじゃないか?」
「・・・それはお前をひねり潰してからだ」
凶獄が鬼に指示を出す。
すると鬼はジャンプして俺たちの目の前にドシンッ!と着地した。
地面が揺れて思わず膝をつく。
鬼は俺たちC組の護衛の前に立ち、こちらを見下ろしている。
「ダメだ、逃げよう!」
C組の護衛の誰かが叫ぶ。
鬼が持っている金棒を高く振りかざし、
俺に向かって振り下ろした。
すんでのところで転がって躱す。
俺たちがいた所には金棒が突き刺さっている。
あんなの喰らったら即死だぞ。
鬼が金棒を地面から抜き、また構える。
そして鬼が金棒を再び振り下ろした時、
鬼に向かって中火力のエネルギー砲をぶっ放した。
エネルギー砲は鬼に直撃し、
鬼の腹に風穴を空けた。
鬼はズドンッ!と地面に倒れこむ。
「どうだ!」
凶獄向かって言う。
「それで勝ったつもりか?」
え?
門からさっき聞いた足音が聞こえる。
嘘だろ?
すると門から今倒したのと同じ鬼が3体出てきた。
「どうする?C組の王様」
凶獄が挑発するように言い放つ。
これは流石に俺たちだけじゃ勝てない!
ー 神藤さん!聞こえてる!? ー
神藤さんに連絡する。
ー 聞こえてるよ! ー
ー 流星たちに急ぐよう伝えて欲しい! ー
ー わかった! ー
連絡が切れる。
鬼がこちらに走ってこようとする。
だめだ!鬼を倒せたとしてもC組の護衛を守ることができない!
「ちょっと待て」
凶獄が鬼の動きを止めた。
「お前、さっきから何かを聞いているような動きをしてるな」
まずい、神藤さんとの連絡のことだ!
こいつ、しっかり俺のことを観察してやがる!
「そう考えればお前らC組、やけに統率がとれてるな・・・さては能力で連絡を取り合ってるな?」
勘付かれた!
「・・・さあ、どうだろうな?」
これ以上悟られないように白を切る。
「どうせどっかのビルにでもその能力者が隠れてるんだろ」
そう言うと凶獄は近くのビルに向かって黒い炎を放出した。
たちまちビルは黒い炎に包まれ、中まで火が燃え盛る大火事になった。
バチバチと音を立てて燃えるビル。
「おい、やめろ!」
「当たりか・・・このまま街のビル全部に火をつけてやろうか?」
凶獄がニヤニヤ笑う。
「そうだな・・・俺ならC組の陣地の近くに隠れさせる。お前ならどうするだろうな?」
こいつ、賢い。
ただ能力に頼っているだけじゃなく、分析力と洞察力が優れてやがる!
すると凶獄がC組方面に走りだした。
続いて3体の鬼がそのあとを追う。
まずい!
ー 神藤さん、今すぐビルから出て! ー
すぐに連絡を取る。
ー え、ど、どうして? ー
ー いいから早く!2人にも伝えて! ー
ー わ、わかった! ー
今すぐ凶獄を追いかけたいが、
せっかくB組の陣地前まで来れたんだ、
王様の俺がここを離れることはできない!
それに、多分王様の俺をB組の陣地から離れさせる凶獄の作戦だ。
・・・その手には乗らないぞ。
「仙撃!凶獄を頼んでいいか!?」
「わかった!護衛を半分連れて行くぞ!」
「ああ!流星たちもすぐに到着するから大丈夫だ!」
仙撃が護衛半分を連れて凶獄を追って走っていく。
場には俺とC組の護衛数人。
そして前にはB組の護衛15人程。
王様のクールタイムはあと数十秒。
門がスーッと消えていく。
凶獄が去ったからか。
「みんな!流星たちが到着するまで耐えよう!王様のクールタイムももう終わる!」
B組の残された護衛が俺たちを襲おうとしている。
「俺たち、昨日も今日もA組にボコボコにされてイライラしてんだよ」
B組の護衛の誰かが言った。
B組の表情は今まで溜まった不満とこれからそれを発散できるという、
ワクワクした表情だった。
途端、B組の1人がこちらに向かって薄い透明のミストを噴射した。
霧か!?
たちまち周りを包まれる。
奥にB組の影がぼやっと見える。
でも大丈夫だ!俺たちは初日のA組との対戦で似たような状況になったことがある!
あの時に比べればこんなの全然だ!
すると突然、C組の護衛の1人がバタッと倒れた。
「ど、どうした!?」
すぐに駆け寄る。
倒れた護衛は顔が真っ赤だった。
周りをよく見るとフラフラと足元がおぼついていない護衛の生徒が多くいた。
この霧、普通の霧じゃない!
「この霧を吸っちゃダメだ!」
ツンとした匂いを鼻に感じる。
この匂い・・・酒か!?
「みんな、声の方に集まってくれ!」
C組のみんなに呼びかける。
薄い影がどんどん近くに寄ってきた。
みんな口と鼻を抑えている。
離れないように肩と肩を合わせる。
このままじゃ息が続かなくてすぐに全滅だ。
でも、こういう状況も想定してなかったわけじゃない!
残ったC組の護衛の能力を合わせてなんとか乗りきる!
「跳田!」
口を塞いだまま大きな声で護衛に呼びかける。
「おう!」
すぐに返事が聞こえ、
その場の全員が跳田に捕まる。
「みんな俺に捕まったか!?」
瞬間、体が前に勢いよく持っていかれる感覚が伝わる。
跳田の能力は”バネ”!
自分の体をバネにできるんだ!
跳田の能力で霧を抜ける。
すぐに薄い酒の霧がはれ、
酒の霧を抜けた瞬間、ハァッ!と全員で大きく息を吸う。
目の前にB組の護衛の姿が見える。
酒の霧を放出したB組の護衛が目の前でもう一度こちらに手を向けて霧を放とうとしている。
跳田に捕まった俺たちはその生徒に向かってそのまま突進した。
ドカンッと思いっきりぶつかり、
B組のど真ん中に転がり込む。
俺たちの周りをB組の護衛が取り囲んでいる。
「これはやばいな」
俺たちはB組を舐めていたのかもしれない。
言ってもこいつらもA組になりうる存在だ。
C組との能力差が悔しいがある。
それに今は人数不利だ。
その時、
遠くから何人もの足音が聞こえ、
囲んでいた横の護衛が吹っ飛び、声が聞こえた。
「陽動隊、本隊に合流!」




