第26話 第一歩
ー B組の王様たちがそっちに向かってる! ー
神藤さんから焦った声で連絡が入る。
「みんな!B組の王様たちが向かってきてるらしい!」
「なに!?」
一気に緊張が走る。
なんで位置がバレてるんだ!?
まさかクールタイムの3分の間に王様の俺を潰そうってことか!?
「王様ってことは・・・凶獄黒臣か」
護衛の1人が呟く。
昨日、A組の七罪聖夜と渡り合っていた男。
何の能力か分からないが、黒い炎を纏っていた。
B組で明らかにダントツに強い。
それに仙撃の話だと中等部でA組だったらしい。
「多分、得点のクールタイムの間に王様の俺を潰そうってことだ」
冷静にみんなに伝える。
ここで焦っちゃダメだ。
王様の俺が取り乱すとみんなにそれが伝染する。
「多分そうだろうな。でもなんで居場所がバレてるんだ!?」
仙撃の言う通りだ。
「どうする?鳴神」
仙撃が俺に問いかける。
護衛のみんなも俺に注目する。
最適解を探せ、今俺たちにできることは・・・
「・・・このまま進もう。俺たちがいまいるのはD5でB組の陣地はもうすぐ。なら、凶獄たちに追いつかれる前に得点しよう!」
護衛のみんなが頷く。
「それで得点したら逆に俺たちのクールタイムの間に凶獄たちを足止めしてやろう!」
「なるほど!迎え撃つってことか!」
その時、神藤さんから連絡が入った。
ー 白川くんたち陽動隊がJ2で交戦中! ー
ー わかった!こっちもじきに戦闘になる! ー
「みんな!陽動隊も戦闘が始まったらしい!俺たちもやるぞ!」
急いでB組のゴールに走り出した。
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B組の陣地に到着した。
B組のゴール前には誰も人がいない。
「おい、B組の防衛が誰もいないぞ!」
仙撃が嬉しそうに言う。
「ああ!陽動隊が完璧に機能してる!B組の防衛全員、あっちが王様だと思ってる!」
「鳴神、早くゴールに!」
護衛のみんなに催促される。
興奮して少し息が荒くなりながら一歩踏み出して白線を超える。
するとピーッと大きな音が鳴り、
電光掲示板が1対0から1対1に表示が変わった。
「よっしゃぁぁ!」
護衛のみんなとともに喜びの声をあげる。
この合宿で初めての得点だ!
ー すごい鳴神くん!得点できたね! ー
すぐに神藤さんから連絡が入る。
ー うん!みんなのおかげだよ!あと多分、陽動隊はもう機能してないから俺たちのいるD2付近に来いって伝えて! ー
ー わかった!伝える! ー
ー 神藤さんは大丈夫? ー
ー 大丈夫だよ! ー
ー よかった!もうちょっとだから頑張ろう! ー
ー うん! ー
神藤さんとの通信が切れる。
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神藤さんの隠れているビル 階段の踊り場
「得点できたって!真莉愛ちゃん!ミリシャちゃん!」
「おお!すごいじゃん!」
「すごいです〜」
2人が喜びの声をあげる。
「うん・・・」
神藤さんはしんどそうに壁にもたれかかる。
その表情は青白く、普通でないことが伺える。
「天音、大丈夫か?」
「神藤さん、少し休まれた方が・・・」
2人が心配そうに声をかける。
能力の使いすぎで疲労困憊のようだ。
「大丈夫だよ、みんな頑張ってるんだから私も頑張らないと」
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神藤さんとの連絡を終える。
「みんな、気を抜いちゃダメだ!俺たちの存在に気づいたB組の防衛がすぐに来る、それに凶獄たちもだ!」
「そうだな!すぐに次の作戦を・・・」
仙撃が言い切る前に後ろから強力な威圧感を感じた。
バッと振り向くと、B組の王様の凶極が護衛を連れてこちらに突進してきていた。
俺のことをじっと見つめている。
「来やがった!」
逃げようとする暇もなく、
凶獄がこちらに向かって黒い炎を放出する。
地面のコンクリートを黒く焦がして真っ直ぐ炎が走ってくる。
「あぶねぇ!」
仙撃が咄嗟に衝撃波の壁を作る。
衝撃波の壁に黒い炎がぶつかり、
壁を隔てて目の前が黒い炎で見えなくなる。
次の瞬間、
衝撃波の壁にバキッとヒビが入った。
そして壁が割れると同時に黒い炎の中から凶獄の姿が現れた。
「お前がC組の王様か」
黒い炎を纏った凶獄が目の前にいる。
鋭く獲物を狩るような表情だ。
「遅かったな!もう点は獲ったぞ!」
「ふん、1点ぐらいくれてやる。そして今からお前を焼き殺す」
凶獄が何か次のアクションを起こそうとしている。
このままじゃ本当に殺される!
凶獄が手が少し動いた瞬間、
凶獄に向かって強力な一撃をぶっ放した。
”高火力砲”
俺の手のひらから出た光が凶獄を包み込む。
ほぼゼロ距離で撃ったおかげか確実に喰らわせた感覚がある。
撃ったエネルギー砲が徐々に消えていく。
しかしそこに凶獄の姿はなかった。
「どこいった!?」
周りを見渡しても見えるのはB組の護衛たちだけだ。
「鳴神!あそこ!」
仙撃がB組の護衛の前の地面を指差す。
そこには赤い水たまりができていた。
なんだあれ。
その赤い水たまりからはボコボコと泡が出ていた。
まるで沸騰してるみたいだ。
薄気味悪い。
見たこともない現象に体が強張る。
次の瞬間、その血の池のようなものが盛り上がり、
ズズッと凶獄が出てきた。
「・・・C組のくせにやるじゃねーか」
凶獄の周りの黒い炎が勢いよく燃え上がる。
それを見たB組の護衛が距離を取るように後ろに下がっていく。
1人で何かするつもりか!?
「鳴神!何かくるぞ!」
仙撃が焦っている。
「俺が何の能力者か知ってるか?」
ニヤニヤと笑う凶獄の後ろからゴゴゴゴという地響きとともに、
人間の身長を優に超える大きな門が現れた。
灰色で悪魔や鬼が彫られている門。
”地獄之門”
凶極が呟くと門がズズズッと音を立ててゆっくりと開いた。
まるで俺たちを飲み込むように。




