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第22話 悪対悪 


 合宿2日目。

朝食の時間の後、ログハウス前に全組集められた。

まあC組は朝食食べてないんだけどな。



「おはようみんな!」



A組の担任の先生がみんなの前で話している。



「昨日はお疲れ様!早速だが今日は合宿最終日、昨日の王様ゴールについて説明する!」



 最終日か。

たった2日間の合宿だけど、この2日間はとても長く感じる。



「昨日の1位はA組、そしてB組対C組はC組の負傷で中止になったが、2位がB組で3位がC組だ!昇格権が与えられるMVPに関してはまだ協議中だが、誰でもMVPになれるチャンスはある!みんな頑張るように!」



 そういえばMVPのことをすっかり忘れてた。

この王様ゴールで一番活躍した人はMVPとして”昇格権”が与えられる。

”昇格権”を手に入れてB組に上がらないと3年後の卒業の時には・・・死ぬ。



「それでは本日の組み合わせを発表する!まずはA組対B組だ!両組とも陣地に移動してくれ!」



 俺たちは後か。

A組とB組が街に向かって移動していく。



「どうする日向くん、テントに戻る?」



 隣の流星が言う。

この後は多分B組と戦うし、できれば能力や攻め方を把握しておきたい。



「いや、観戦して分析しよう。だよな、仙撃?」


「もちろん!観戦して分析しつつ、クラス全員で作戦を立てよう。俺がC組のみんなを呼んでくる。ログハウスから少し行ったところに高台があるらしい、みんなを連れてくるから先に行っておいてくれ」



仙撃を残し、流星と高台へ向かうことに。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ログハウス横の獣道を登っていくと、

少し広い場所に出た。

ここが仙撃が言ってた高台か。


 王様ゴールのフィールドの街がよく見える。

今はA組とB組は自分の陣地で作戦会議をしているようだった。

しかしよく見ると両チームあまり話し込んでいる様子はない。

それにA組なんて全員離れたバラバラなところにいる。


 やっぱりA組は作戦会議なんてしてないんだ。

王様は天使ってことだけ決めてあとは誰が護衛とか防衛とか決めずに、

それぞれ自由に動いている。

でもそれで勝つんだからな。



「おーい!待たせたな!」



後ろを向くと仙撃がC組のみんなを引き連れていた。



「みんなを連れてきたぞ!赤坂は誘ったんだが断られた!」



やっぱり赤坂は来なかったか。



「何回も来いって言ったんだが、突っぱねられてな」


「大丈夫だよ。あいつは1人が好きみたいだし。でも赤坂以外みんな来てくれたのは意外だった。みんな昨日のA組との対戦で戦意喪失したと思ったよ」


「全然!俺はまだまだやれるぜ?」



仙撃が拳を合わせて気合いを見せる。



「それにここで諦めたらMVPなんて選ばれないしな」



そうか、みんな”昇格権”を与えられるMVPを狙ってるんだ。



「MVPは俺がもらう」「いや、私だね」



C組のみんなからMVPを狙う声が聞こえる。




「それじゃあ試合を始めるぞー」



スピーカーからの三田寺先生の声だ。



「王様ゴール・・・スタートー」



気だるそうな声で三田寺先生が開始の合図をする。



「みんな、まずはA組とB組の能力を把握しよう」



 両組の能力を把握して少しでも対応できるようにする。

特にB組はまだ戦ってないしどんな能力があるかわからない。


 スタートと同時にA組の陣地から飛び立つ姿が見えた。

A組の王様の天使だ。

勢いよく地面から空に飛び出して、白い翼を背中にはためかせて飛んでいる。


 やっぱりA組は王様の天使に任せてあとは護衛も防衛もなしで自由って作戦だ。

個人の能力に絶対的な自信を持ってるから作戦なんてない。


 対してB組は・・・え?

B組は誰も自分たちの陣地から動いてない。



「B組の人たち誰も動いてない・・・」



流星もB組のおかしな動きに気づいている。



「なるほど、全員防衛ってことだな」



仙撃が言う。



「全員防衛って、点が取れないじゃないか」


「いや、B組の奴らは昨日の王様ゲームで、A組に勝てないことを悟ったんだ」



確かに、B組も5対0で負けたらしいもんな。



「点を獲ることを諦め、防衛に集中して点差を広げられないようにしてるんだ」


「そうか・・・これもある意味、作戦の1つだもんな」


「だが諦めたわけじゃないかもな。多分、A組の隙を伺ってるんだろうな」



 天使はどんどんとB組の陣地に進んでいき、

B組の陣地まで近づいた時に空中で止まった。

異変に気づいたな。


 B組全員が天使を待ち構えてる。

でも天使は少し戸惑ったが、すぐにB組の陣地に向かって飛び始めた。


 その時、B組の一人の生徒が天使に向かって泡を発射した。

泡を出せる能力者か!?

泡は天使に飛んでいくが天使はヒラリと空中を舞って軽く躱した。

しかし時間を待たずにすぐ次の泡が発射される。



「ありゃただの泡じゃないな」



仙撃が顎に手を当てながら言う。



「多分だが、毒を混ぜてるな。あの空飛んでる女が少しでも当たるのを嫌がってる」



 確かに天使は小さな飛沫にさえも当たらないように大きく避けている。

泡は何度も躱されているが、連続で天使に向かって発射を続けている。


 その時、泡の影から天使に向かって鎖が飛んでいき、天使の体に巻きついた。

地上では鎖を手に持った生徒がいる。

多分、鎖を操る能力者なんだろう。



「泡の影に鎖を隠して飛ばしたのか!」



 でも天使は泡を躱したはず。

鎖は泡と一緒に一直線に飛んで行ったはずだ。



「あの鎖、能力で自在に動かせるんだろうな。だから泡を躱した金髪に空中で角度を変えて飛んで行った」



 そういうことか!

天使は鎖が体に巻きついていて、

地上の鎖を持っている生徒に引っ張られている。

このまま地上に引き摺り下ろすつもりか!


 次の瞬間、

天使は白い大きな翼をはためかせ、翼から空気の刃を出して鎖を断ち切った。

あいつ、あんなこともできるのか!


 天使が鎖を断ち切って飛び始めようとすると、

一瞬で天使の目の前を大きな影が包んだ。

それは太陽の光を遮るほどの大きな砂の壁だった。



「なんだあれ!?砂の壁!?」



 B組のことを舐めてたが、B組にも相当やばい能力者がいる。

途端、砂の壁は崩れ始めた。

崩れ始めた砂の壁は形を変え、大きな砂の波になって天使に襲いかかろうとしていた。

流石に天使の空気の刃ではどうしようもできないはずだ!


 砂の波が天使を包み込もうとした時、

巨大な砂の波が一瞬で厚い氷に包まれて凍った。



「七罪聖夜だ!」



 仙撃が叫ぶ。

天使の真下にいたのはA組の、そして”超能力者”と言われるS級の七罪聖夜だった。



「あの巨大な砂の壁を一瞬で凍らせやがったぞ!」



 途端、B組の防衛から誰かがものすごい速さで飛び出した。

そいつは王様の天使なんて目もくれず、一直線にS級の七罪に向かっている。



「何やってるんだあいつ?王様の天使じゃなくて七罪に向かって行ったぞ!?」


「そうか!B組から飛び出したあいつは、S級の七罪を倒してMVPを狙ってるんだよ!」



 仙撃がハッとしたように言う。

なるほど!MVPに選ばれれば”昇格権”が獲得できる。

B組は”昇格権”2枚で・・・A組だ。

S級の七罪を倒せばMVPに選ばれる可能性は十分ある!



「それに飛び出した生徒、B組でも特段優れた能力を持つ”凶極黒臣”だぞ!」



 仙撃が凶極黒臣と呼ぶその男の周りには黒い炎が燃え盛っている。

赤坂の紫の炎とは違い、漆黒で全てを焼き尽くすような地獄の炎だ。



「仙撃!その凶極黒臣ってやつの能力はなんなんだ!?」


「まあ見とけ!これは面白いことになるぞ!」



 仙撃が子供みたいに楽しそうな笑顔を見せている。

七罪は一歩も動かず仁王立ちしている。

凶獄がそこに突っ込んでいく。


 2人がぶつかった瞬間、大きな衝撃波が街を包んだ。

空気が割れるようなバチバチとした振動を感じる。

離れているここまで強い衝撃を感じてヒリヒリする。


 能力と能力が競い合ってる。

七罪と凶獄はB組の陣地を離れ、街中を縦横無尽に戦っている。

こいつら本当に人間かよ。



「凶獄も俺と同じ進学組でA組だったんだ。でも高校進学のときに本当はA組に選ばれていたのに、自分で志願してB組になったらしい」



仙撃がそう説明する。



「まじかよ。わざわざB組に?なんで?」


「噂だが、A組は居心地が悪いとかなんとか。それにB組だと自分が王様になれるから、らしいな」


「なんだそれ、なんか嫌なやつだな」


「まあそうだな。よし鳴神、観戦もいいけどそろそろ作戦を立てようぜ」


「そ、そうだったな」



七罪と凶獄があまりにもすごすぎて見入ってしまった。



「それじゃあみんな、近くに集まって欲しい」



C組のみんなが俺を中心に集まる。



「まず、みんなわかってると思うけど、能力の力だけじゃ他のクラスには勝てない」



 C組のみんなが頷く。

悔しいけどこれは本当のことだ。

・・・三田寺先生も言ってたことを思い出す。



「能力で勝てないなら頭を使って勝とう」





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