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43話 別れと始まり


気付けば数ヵ月が立っていた。

私は今日が自分の最後の日だという事を分かっていた。

私はベットに仰向けになりながらオルトに大切な事を話していた。


「オルト、その紋章は出来るだけ使わないようにね」


「ああ、分かってる。」


私はオルトに王家の紋章を継承させていた。この紋章は王家の力を途絶えさせない為に死ぬ前に王家以外にでも継承できるのだ。

オルトには私が母からコピーした3層魔法の氷の能力を同じ様にコピーさせた。

この三層魔法は氷と結晶と時間の3つを構成している。


「王家の紋章は一つしかコピーして持っていることが出来ない。この魔法以外に優れた物があればしっかり考えてから選びなさい」


「なあ、ユキ姉。俺は……」


「生きてれば必ず死ぬ。私は十分生きたし後悔はないよ」


オルトのとても悲しそうな顔から私はすべてを感じ取ってた。

オルトが私を思ってくれている事。言葉はもういらなかった。

私は少し微笑みながら目を閉じた。


「ありがとう、ユキ姉」


時は過ぎ、季節は変わり少し蒸し暑い夏になった。

ユキが死んで俺はもう一度この世界で一人で生きて行かなければならない事を思い出していた。

ユキを埋葬した数日後に、俺は軍に入隊した。


「荷物はそれだけ?」


「ああ、あとは軍が用意してくれるんだろ?」


「そうね、あとは教育隊の人がやってくれるわ。分からない事があったら教えてくれるはず。」


俺は大きな建物の中でミホに案内されていた。

ミホの口利きもあってか入隊もすんなりと進んだ。

ユキ姉が死んでしまったので、俺の身元引受人としてミホが協力してくれたことが大きい。

軍は書類上の手続きが意外にも面倒なのでミホには感謝している。


「ありがとう、ミホ。いや、ミホ医療室長か」


「ユキの教えと言っても、軍では上下関係が大変だからね。ちゃんと敬語を使うのよ」


「ああ、分かってる。すぐに慣れるさ」


ミホは手を軽く振りながら去って行った。

そうして俺はしばらく軍の寮で生活し魔族に対する戦闘訓練を仲間たちと受けていた。

ユキ姉の戦闘訓練のおかげか軍の訓練は俺にとってはかなり退屈だった。


「本日から第203隊の教育担当官となるモザンだ。よろしく」


少しやる気のなさそうな教官の挨拶を俺たち3人は聞いていた。


「あー、とりあえず自己紹介からだな。左から順に」


そういって左の顔立ちのいい女の子を教官は指さした。


「私の名前はフィオナでです。趣味はピアノで父は上層の魔法採掘の……」


「あー、長い。名前だけで十分。フィオナね、よろしく。はい次」


教官はフィオナの発言を遮るように次の男を指さす。


「僕の名前はスパードです」


「俺はオルトだ」


教官に言われた通りに名前だけ答えた。

教官は一人ひとりの顔を書類を見ながら確かめ、顎髭を撫でていた。

モザン教官の外見は左手が義手で顔つきは少し老けている40歳ぐらいだろうか。


「フィオナにスパードにオルト。えー、君たちは対魔人戦に特化した少数精鋭の部隊になってもらう。軍機や規則は書類を読んでおけ。」


「教官! 一つ質問してもよろしいでしょうか」


「スパードか、いいぞ。なんだ?」


「少数精鋭部隊なのは分かるのですが、他部隊は基本5名で構成されます。本隊が3名というのは何故でしょうか?」


「まあ気になるわな。一つは人手不足、もう一つは……いや、お前たちが余り物って事だ」


「私達は余り物……まだ何も評価されてないのに……」


「あり得ない……この僕が……」


モザン教官の一言にフィオナとスパードは少し絶望していた。

俺は5人だろうが3人だろうが給料さえ貰えればそれでいい。

軍は少し学校みたいであまり好きになれそうにないが、元の世界に帰る為に情報が必要だ。

数年は頑張るしかないだろうな。


「お前らグチグチうるさいぞ。さっそく対魔人戦の座学と軽い模擬戦を行う。ついて来い」


俺たちは建物内の一室に移動しモザン教官の講義を1時間ほど受けていた。

対魔人戦の基本的な戦い方と勇者に聖霊都市の防壁の事など簡単に説明してくれた。


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