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29話 ぶつかり合う二人の世界



朝方、魔力を回復したジョーカーとオルト、そして拘束されたメアは聖霊都市近くの村に転移していた。


大戦が終わり村は以前よりも治安はよく、魔力結晶の採掘を仕事とする人たちが多い。


酒場や飲食店、宿泊施設に武器屋と、最低限は揃ってる普通の村だ。


オルトとジョーカーは作戦通りに行動していた。



「俺は馬車と武器を調達してくる。ジョーカーは魔王の娘を監視して待っていてくれ」



「念のため認識阻害の魔法をかけようか?」



「いや大丈夫だ、どうせ位置情報はバレているしな。」



「そうか、分かったよ」



俺は、歩きながら作戦を整理していた。


このまま村から転移魔法で聖霊都市に飛びたいが、精霊都市の結界に魔族は弾かれる為それは出来ない。


聖霊都市の入り口まで転移してもダメだ。魔王の娘を聖霊都市に入れる為に、魔法結界の部分解除に時間がかかるだろう。


その間に間違いなく追いつかれる。そうすると、魔力を消耗したジョーカーと俺の二人で戦う事は難しい。


魔族との戦闘が避けられないのなら、出来るだけ有利に戦いを進める為に策を練る。


一応あの魔王の娘の前で、村で待ち伏せる嘘の作戦を言ったが、効果は分からない。


ジョーカーが付けた拘束具で魔法と魔力の発動が出来ないはずだが、魔族の使う刻印は謎が多い。警戒するに越したことはない。



数分後、オルトが馬車を連れてきた。


オルトはメアにローブを着せて、拘束したメアを隠すように馬車に乗せる。


ジョーカーは馬車の後方に、複数のトランプカードを張り付けていた。


時刻は村に到着してから2時間が経過していた。



「こんなものかな。オルト、準備ができたぞ。」



「そうか、そろそろ奴らも来るだろう。」



オルトとジョーカーは馬車に乗り村をでた。道のりは赤い土の平坦な道で、植物は少なく大きな岩がたまに目立って見えるぐらい何もない。


しばらく進んでいると、前方に魔族の二人が道をふさぐように立っていた。



「なるほど、村から俺たちが出るのを待っていたか。まさか先回りしてくるとはな……」



「どうする?このまま突っ切ったら馬車を叩き切られるぞ!」



「ダメだ。もう一人が見えない、挟み撃ちされる可能性もある。」



「あの執事か……」



見る見るうちに距離は縮まり、アヤトとメイドを確認した。


メイド姿の魔族の女が、大きな鎌を持ち攻撃態勢に入っている。


オルトは冷静に思考していた。


奴らは、俺たちが転移魔法に使う魔力量と限界距離を読んでいたな。


しかし先回りするとは、転移魔法を使える奴がいるのか? いや、それなら転移ですぐに追ってくるはずだ。


俺は判断を決めた。



「ジョーカー! ギリギリまで引き寄せて、右に躱してそのまま聖霊都市を目指せ。俺が一人を抑える!」



「分かった。俺もトランプの分身魔法を使う、牽制は任せろ!」



速度を落とさずに馬車は一直線に進む。


大きな鎌を馬車に目掛けてメフィーは振るった。



「はあ!」



オルトは馬車から飛び降り、空中で鎌の攻撃を魔力を込めた剣で受けた。


しかし、威力が強く衝撃で体ごと吹き飛ばされた。



「何だこの斬撃は!」



馬車を追いかけようとするアヤトに、ジョーカーの分身はトランプの小剣を数本投げてアヤトを牽制した。


ジョーカーとメアを乗せた馬車は、止まる気配はなく走り続ける。


アヤトは、短剣を反射的に打ち払っていた。



「チッ!邪魔くさい……、メフィー! 馬車を追ってくれ! オルトは俺が相手する!」



「分かりました。ジョーカーは私が倒します!」



「ああ、頼んだ!」



吹き飛ばされたオルトは、アヤトを前に笑っていた。


砂煙が舞い、太陽が二人をジリジリと照らしていた。



「フハハハハ、いい判断だ。しかしあの執事はやはり彫刻の使用者か、いないようだな。」



「さあな……隠れてるかもしれないぞ……」



「まあいい……アヤト、久しぶりだな……」



「昨日会ったばかりだろ?一瞬だったが……」



アヤトは俺に警戒しながら、金色の剣を構えている。


少し不気味がられてしまっただろうか、まあ仕方がない。


俺だってお前が恐ろしくてしょうがない、たとえこの世界であったとしても……



「そうだったな……で、やっぱり浅井アヤトなのか?」



「どういう事だ?」



「いや少し気になっただけだ。いい兄ちゃんだったよな。本当に懐かしい……」



「訳が分からない。何の話だ?」



アヤトは少しイラ立っているのが、表情から分かる。


恐らく俺が時間稼ぎで、適当を言ってるように見えるのだろう。


まあ俺も正直、すっとぼけたアヤトを見てイライラしてるからお互い様と言った感じだろう。


俺は怒りの感情を剣に込め切りかかる。



「いいね、その顔。心底お前にイラつけるよ! アヤト!!!」



「クソッ!  時間稼ぎの戯言を…」



俺とアヤトの剣が激しくぶつかり合う。


互いの斬撃は嵐の様に、留まる事をしらない。


世界を賭けた殺し合いが始まった。


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