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15話 彫刻の代償4


既に日が昇り始め、小鳥たちが少し騒がしく鳴いている。

朝の7時を時計の針が差し掛かったところ、ジャレッドは隣の気配を感じた。

目が覚めると同時に、隣に寝ていた姫と目があう。

朝なのに目をパッチリ見開いて、驚いた表情のまま固まっている。

とりあえず話しかけてみるか。


「あー、おはよう?」


「おはよ、えっ、ちょっと!あなた誰? というか何で私のベットに!しかも裸!?」


「それは君もだろ」


「キャッ///」


サーシャ姫は顔を真っ赤にして急いでシーツを引っ張り体を隠した。

殴られるか大声で助けを呼ぶのか、どちらかをすると思ったがどうやら普通の女の子らしい反応だ。

俺はベットから出て服を取り出し、サーシャ姫に投げるように渡した。


「ほら、とりあえずこれを着ろ。君の服はまだ洗濯中だ。」


そういって俺も服を着替える。


「ちょっと、恥ずかしいから着替えるまでそっち向いてて!」


「ん、あぁ分かった。」


別にもう裸を見られてるのに何を恥ずかしがるのか分からないが、一々突っ込むのも面倒だったから従った。


「それで、なんて言ったらいいか……」


俺は何から話していいか分からずに戸惑っていた。

姫はジャレッドに渡された少し大きいワイシャツと短パンを履きながら話し出した。


「その、まずは助けてくれてありがとう。お礼、言ってなかったの忘れていたわ。」


「あぁ、気にするな。……いや違う、忘れてた。俺は君を助けた、つまり恩がある訳だ。うん、つまり取引をだな……」


ここまで言って昨日、自分が考えていたことが破綻していることを思い出した。

脅してから逃がしたところで俺の情報が広がる事は間違いない。殺しても意味は無いし……

俺は手を額に当てどうにもならない現実に、思考が停止していた。


「命を助けてもらった訳ですし、お礼ならさせて頂きますわよ? 城に戻ればお金と地位ぐらいなら」


服を着替え終わったサーシャ姫は、ジャレッドの後ろから回り込むようにして俺の正面に立つ。

大きめの服から胸元が少し見える。短パンも大きめのサイズなのか、ベルトで上手く縛っている。 

そして、少し可愛い表情で訳の分からない事をいいだすから俺は直球で質問するしかなかった。


「は? 君は昨日の俺の姿を見ただろ?」


「あなたのお姿……いえ、わたくしは何も」


サーシャ姫は一瞬間を置くも、何も知らないように首を振り言った。

俺の姿を見ていない?いや、俺の姿を見て怯え失禁したはず。

プライドが許せないのか、もしくは記憶の一時的な欠如か?とりあえず俺に金と地位を渡せば、黙らせる事ができると考えているのか……

その後、泳がせてから俺を殺すのか。ダメだ読めない、情報が少なすぎる。

しかし、魔族だとバレている可能性がある以上、迂闊に相手の言葉を信用はできない。

だが、ここは話に乗るしか選択肢がない。


「そう……か、ならいい。それより君、傷はいいのか?」


「大丈夫ですわ。それよりも、君ではなくわたくしはサーシャという名前がちゃんとありますの。」


ワイシャツを下から少しあげ、アザのあった部分を見せてきた。アザは綺麗に消え完治していた。

いつのまにか魔法で治したのか。とりあえず俺も自己紹介をする。


「そうか、それはすまない。俺はジャレッド、ただの傭兵だ。サーシャは貴族の娘か何かか?」


俺は少しすっとぼけたように言った。もちろんサーシャは姫だという事は初めから知っている。


「ジャレッド様ですか、覚えました。わたくしは第5王妃の娘ですの。」


「お姫様かそれは凄いな。しかしなんで下層へきたんだ?」


「家出と言ったら笑いますか?」


「いや、住む場所も違えば悩みも違うのだろう。恵まれた生活でも何か嫌な事があっても不思議じゃない。ただ、昼間に家出することと、下層に丸腰は世間知らずすぎるな」


俺は包み隠さずに本心で答えた。

そんな俺の返答に、少し恥ずかしそうにサーシャは言った。


「それは……確かにそうですね。今まで中層までしか知らずにいましたが、少し甘かったようです。こう見えてわたくし、魔法には自信があったのですが、どうやら実践向きではなかった様ですね。」


ただの計画性のない突発的な家出か、本当に普通の女の子だな。

俺にはしっかり計画を立て、他国に亡命するような姫には到底見えなかった。

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