五話 罪つくりなレディ
いっしょに生きよう、なんて私たちには似合わない。
リーズが同じように考えてくれていたと知って、私の心は安らいだ。
「もちろんよ。死ぬまでも、死んでからも、あなたを離してあげない」
「ありがと、お嬢」
リーズはほっと安堵した顔で私を抱き起こした。
床に座った私は、刹那の夢で見たものを説明していく。
「マデリーン嬢は、悪魔の紋章に囚われていたわ。その紋章は、ジャックやリーズ、ダムとディーにあるものとまったく同じ薔薇の形をしていたの」
「アタシたちをよみがえらせた悪魔が、眠り姫事件の犯人なのね! だけど、いったいなぜこんなことをしているのかしら?」
「私のせいかもしれない……」
リデル邸にほどこされた烙印は、生まれつき悪魔に狙われている私を守るためだった。
事件の『眠り姫』になったのは、マデリーンとティエラをはじめ、私をいじめたりおとしめようとした令嬢たちばかり。
「私が社交界に出なければ、こんな事件は起こっていなかったでしょうね。私はある意味で、事件の加害者でもあるの」
「お嬢……」
「だから、ダークとのことは関係なく、ぜったいにこの手で解決したい。ジャックは事件から私を遠ざけようとするし、ダムとディーはまだ分からないでしょう。だから、リーズにだけ話しておくわ。これは私の贖罪でもあるの」
今までの私だったら、たとえ真相がどうであれ、心のうちを他人に打ち明けようとはしなかった。
秘密にすることこそ、家族のかたちを守るために必要だと思ったから。
けれど、それはまちがいだった。
家族との絆をたしかなものにするために必要だったのは、嘘いつわりで誤魔化すことではない。
真実を明らかにして本気でぶつかることだ。
愛されるために作り上げた体裁を壊して、相手の醜く弱い部分を知って。
それでもいっしょにいたいと思える人たちに――。
「話してくれて嬉しいわ」
リーズは切なげに息を吐いて、私を正面から抱きしめた。
じゃれつくのとは違う、力強い抱擁だった。
「アタシ、事件を起こしてまでお嬢を守ろうとした薔薇の悪魔のきもちが何となく分かるわ。きっと、その悪魔は、愛を知るロマンチストだったのね」
「愛を知る、悪魔……」
核心に触れた気がした私は、リーズの腕を抜け出して、マデリーンが眠るベッドを見下ろす。
「リーズ。あなたに『烙印』を与えた悪魔がどんな姿をしていたか覚えていて?」
「姿はよく見てないの。アタシに見えたのは、羊みたいな丸い角があるシルエットだけよ」
「十分だわ」
ダークの尖った長い角は、ウサギの耳のように見えた。
では、羊のような丸い角は、なんの耳に見えるだろうか。
「真犯人を追い詰める前に、ダムとディーを探しに行かなくちゃね。リーズ、これから決闘窟に行くのだけれど、付いて来てくれる?」
「アタシはかまわないけど。多分、二人は古巣にはいないわよ」
「どうしてわかるの?」
小首を傾げる私に、リーズは大人びた顔で苦笑する。
「あの子たちは、アタシよりずっと世渡り上手なのよ」




