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【翻訳英語版③巻発売】悪役アリス  作者: 来栖千依
第一章 暗躍令嬢アリスの噂

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十話 漆黒の瞳

 温室にやってきたリーズは、アリスとダークが隣り合わせでお菓子を食べているのを見て茶化してきた。


 ゆったりしたセーターと細身のズボンは黒く、首に巻いたトレードマークの濃淡ピンク色のストールが目立つ。

 全体的に暗い服装に、そこだけ明るい色を持ってきているからか、出会い端に首だけが浮いているように見えることもあった。


 温室が明るいおかげで見間違えずに済んで、ダークはいくぶんかホッとする。


「こんにちは、リーズ君。リデル男爵家のお茶菓子が恋しくてね」

「…………」


 ダークが話す間、アリスは真っ赤な瞳でじっとリーズを見つめた。

 心なしか瞳孔が開いていて、瞳全体が黒っぽい。

 普段は、ルビーの大玉のように曇りがないのに。


「アリス?」


 ダークの呼びかけにはっとして、アリスは我に返る。


「ごめんなさい。何のお話をしていたの?」


「……ジャック君のお菓子は最高だと話していたんだよ。そういえば、バレンタイン頃に女王陛下が王宮で舞踏会を開催するそうなんだ。君の分の衣装も準備しているから期待してくれ。愛の日を象徴する素晴らしいデザインにした」


「私のドレスは装飾を控えめにお願いしたいわ」


 半目で呆れるアリスはすっかりいつも通りの辛辣さだ。


(またあの目だった)


 アリスの瞳の変化に気づいたのは、アーク校でグリフォンに追いかけられた夜。離島を離れても、彼女はたびたび先ほどのような状態になる。


 アリスに何かが起きているのは確かだ。

 リデルの子たちは意識していないようなので、ダークが注視していくよりないだろう。


「今日はこれでお暇しよう」


 ダークがステッキを持って立ち上がると、ちょうどジャックがカバーをかけた皿を手に温室へやってきた。


「ナイトレイ、もう帰るのか? せっかく特大プディングが焼き上がったのに」


 カバーが外されると、料理から出てはならない黒煙が立ち上った。

 白い大皿の上に、まん丸の炭がのっている。

 焼き時間を三時間ほど間違えたようである。


 ダークは、精いっぱいの作り笑いを浮かべて、帽子を軽く持ち上げた。


「番犬君の手料理はまた今度にしようかな。次は舞踏会の打ち合わせをかねて来るよ」


 明日のおやつは焦げ焦げでないことを祈って、ダークはそそくさとリデル男爵家を後にした。


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