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† † かわいくない悪夢 † †
――出会いたくなかった。
「あなたは……」
白い霧が立ち込める暗いロンドン。
その街角で出会った少女に、私は心を奪われていた。
夜風にひるがえる漆黒のエプロンドレス。手や首は雪のように白く、肩からはハート形のポシェットを下げ、リボンを結んだ真っ赤な髪は腰よりも長い。
髪がすだれのように顔に垂れていて口元しか見えないが、鋭く睨みつけられているのを肌で感じる。
この子は誰? わからない。
だけど、この狂った世界でお決まりの衣装が着られる少女は〝アリス〟一人だけだ。
「そんなはずないわ。アリス・リデルは私なんだから!」
わなわなと震える私に、目の前のアリスはにんまりと――まるでチェシャ猫のように歯を見せて――嗤った。
お待たせしました。悪役アリス第四部はじめます!
毎日更新するので、よろしければ連載におつきあいください。
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