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夢界の創造主  作者: クスクリ
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81話 鳥巣・銀映

 俺の視線の先には、既に若い男女の屯する姿が。真知子が待ち草臥れて、「遅いよ。おじさんが来ないと何にも始まんないんやから。中に入って待とうって思ったけど鍵掛かってるし」

 俺は、「悪ぃ悪ぃ」と謝りながら携帯の時計を見た。6時の約束の時間に30分の遅刻だ。

「足が悪ぃもんで歩くんが健常者の倍の時間掛かるもんでよ」と口の端を歪めてニヤケる。

 美穂ちゃんが、「言い訳にはほんとに都合のいい足だね」と揶揄する。

 入口の観音開き扉のガラスに大きな貼り紙がしてある。

『申し訳ありませんが本日は貸し切りとさせて頂いております。一般のお客様に於かれましてはどうぞご容赦のほどお願い申し上げます。館主』

「ありゃ、呼び鈴もねぇし…どげんやって呼び出せばええん?」

 容赦して貰うほどの客が来ているとは思えないが…アイドル映画のポスターが貼り捲られてるロビーを覗き込む俺の視界に、計ったように奥から禿げた小太りオヤジが現れた。小走りにやって来て慌てて扉を開錠すると、愛想笑いいっぱいに、「お待ちしてました大悟様!」

 訝る俺が、「オヤジ、何で俺が大悟っち分かったん?」

 揉み手のオヤジは、「はいただ何となく」

 ――無意識の力かいな。


 美穂ちゃんを除いて、俺が引き連れてきた連中とは初対面だから互いに紹介し合う。

「誰が来てねぇんかいな」と見回す。

「達己、榎本、由起ちゃん、美っちゃん、俊…明美は店抜けられんやろうな」と指折り数えながら、俺は由起と美千子には面識がない。自分で創造した登場人物ながら、かわいいんやろうな、と期待する。

「兄貴遅れてすいません」

 国鉄の作業着のまま達己がロビーに姿を現した。機関区から駆けて来たのか、額には汗の玉。ここぞ、とばかり真知子が、「もうお父さん約束の時間に遅れるやなんて大悟先生に失礼過ぎるよ」とプンプンだ。

 ――先生ちゃ、バレとんのか。ちょうどええわ。わざわざカミングアウトする手間が省けたわ。

「すまねぇ真知、動労の支部委員会が長引いてしもうた」

「達己、俺も今さっき着いたばかりやけ遅刻や」

 俊と美千子もやって来た。

 ――おっ美っちゃんかわいいぜ。ストレートのロングか。

「大悟さん、店の準備で遅れてしまいました。すいません」と俊夫。

「ええよ。今日は俊の店にお世話になるんやしよ」

 美千子が、「木村大悟先生、お会い出来て光栄です。先生は滅多に人前に姿を現さないお方だと聞いてましたので」

「俊も知っとるん?」

 「はい」と頷く俊夫は、「もう周りはみんな知ってます」

「別に隠すつもりはなかったんやけどな」と俺は頭をかく。


 さっと達己と俊の前に美穂ちゃん・美咲・照代・夏希の四人が立った。一斉に頭を下げて、「この前は危ないところを助けて頂いて本当にありがとうございました」

 特に照代の達己を見る眼差しは熱い。

 俺はにやにやしながら、「ヒーローはええなぁ。こんな若くてかわいい女の子に囲まれてよぉ」と皮肉を目一杯込めてやる。

 達己は照れ臭そうに、「兄貴たまたまやったんすよ。丸星で俊とラーメン食って外に出たらちょうどこの子たちが絡まれとったもんで」

「まぁヒーローち言うもんは得てしてそげな場面に出くわし易いもんやけんな」

 美穂ちゃんが、「もう、達己おじさんに絡まなんの」と口を尖らす。

「兄貴!」

「何や!」

「俺にとって永遠のヒーローは兄貴だけですから」と達己に臆面もなく真顔で言われて毒気を抜かれた俺は、「はい達己おじさんの勝ち」と美穂ちゃんに達己の手を挙げられて、くくくと苦笑いするしかない。


 ごめんなさい、と息せき切って徹と由起がロビーに飛び込んで来た。

 ――ほう由起ちゃんかぁ!

 A界、俺の豊前屋時代の同期の黒水の彼女やった三村にそっくりや。まぁそのイメージで書いたんやけん当然か。小柄な身体にボーイッシュなショートヘヤー、直ぐ様、由起が俺の前に立つ。

「大悟先生お初にお目に掛かります。由起です。この度は徹への過分なご祝儀本当にありがとうございました」と礼儀正しくお辞儀した由起は、頭を上げるとにっこり微笑んだ。丸顔にえくぼが無茶かわいい。

 俺は艶に親指で達己を差して、「根性でこいつの狂気の走りに付いて行ったんじゃ。当然の報酬ち思うて貰ってええぜ」

 俺の持ち上げに達己は照れ笑いだが、「虎屋じゃ徹だけで由起ちゃんに会えんやったんが心残りやったんや。ほんと徹にゃ勿体ない彼女やな」と俺は意地悪っぽく徹を見る。

 徹は俺の眼差しに幾分顔を強張らせて、「お、俺、大悟さんがあの木村大悟先生やって出かけに由起から聞いてび、びっくりしてます」

 由起は悪戯っぽい顔で、「先生、徹ったら何も怖いものないみたいな顔してて先生みたいな教養のある有名人には無茶弱いみたいなんです。今まで大悟さん大悟さんって気軽に言ってたんに急に緊張しちゃってどんな顔して先生に会えばいいんやろうって焦ってました」と笑う。

 俺は徹の背中をばしっと叩いてやって、「何か徹、俺はその辺の中年オヤジと何も変わらんっちゃ。急に態度変えんなって。お前から先生っち呼ばれるとこそばゆいでぇ。今まで通り大悟さんでええっちゃ」

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