表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢界の創造主  作者: クスクリ
78/95

78話 詮無い対抗心

 現実世界、俺が小学生の頃は、アイドル歌手のヒット曲と同名タイトルの映画とか怪獣映画がどんどん作られて、大人同伴で足繁く映画館に足を運んだ。隣町の江迎町に一応映画館があったから、佐世保まで行かなくても済んだ。猪町の田舎町でも岩崎商店と千北散髪屋の表に新作映画の立て看板があって、日本の西の果てに住む田舎者のガキは、見ることも叶わない華やかな世界に夢を膨らませた。

 当時のテレビはモノクロだったし、映画の放映など皆無だった。俺が中学生になる頃にはテレビもカラー化され、月曜日・水曜日・金曜日・土曜日・日曜日の映画劇場で名作映画が放映されるようになった。ただ、ブルース・リーの燃えよドラゴンのような世界的ヒット作だったら、佐世保まで足を伸ばさねば観れなかった。


 転校したての、糞真面目そうな全く目立たない生徒だった中学二年生の康太が、同級生の悪そう坊主・新井の興味の目に留まり、久留米まで観に付き合わされた名作映画は、「ある愛の歌」と「ロミオとジュリエット」だ。

 鳥巣にも銀映という映画館があるが、上映作品がマイナーだったから久留米まで行かざるを得なかった。銀映は本通筋商店街から一本入った裏通りにある。狭い路地だから車は停められない。今日、二週間前に俺が真知子たちに約束した「空の大怪獣ラドン」を、銀映を貸し切って上映する。段取りは俺の無意識の力が全部やってくれているだろう。


 俺の車に美穂ちゃんと夏希・美咲、浩二のギャランには奈津子と照代が乗った。上映会は6時と記憶に刷り込んでおいた。蒸し暑さの残るまだ十分に明るい夕方の鳥巣にGTO・MRとニューギャランで乗り込んだ。スナック『明美』の入っている鳥巣ビル横を走る大通りは歩道の広い片側一車線だ。鳥巣ビルの対面には達己たちがラリークラブ旗揚げをやった割烹『赤垣』がある。鳥巣ビル前の歩道に左車輪を乗り上げて停めた。


 達己と面識のない奈津子・浩二、美穂ちゃんの同級生三人は、浩二の車で俺らに遅れて一緒に来させるようにして、ラドン上映は俺と美穂ちゃんの二人で一足早く出ようと思っていたが、 照代が、「大悟先生、その映画達己おじさんが出るんやろ。若い頃の格好良いとこ見たい」

 夏希も、「私たち丸星で狂走連合に絡まれて危ないとこおじさんに助けて貰ったんだよ。ちゃんと面識あるんやから」と口を尖らす。

 俺は何があったか勿論全部お見通しだったが、初めて知って驚いたような大袈裟なリアクションで、「何!あの凶暴な狂走連合に…そげなことあったん?みんなか弱い女の子なんに怖かったやろなぁ。さすが達己や。いいところに現れるわ。命の恩人やわなぁ」

 照代がうっとりと、「あのね大悟先生、私21年生きてきたけどあんな完璧な男性見たことないよ。まるで悪をばたばた倒し捲る映画のヒーローみたいやったよ」

 俺はにやっと笑って、「そっかぁ、照代ちゃん達己に一目惚れしたんやなぁ?」

「だ、大悟先生、そんなんじゃないですよぉ。達己おじさん私なんか相手にしてくれませんよぉ」

 照代は慌てて打ち消す。その仕草がかわいい。何といっても現役女子大生だ。

『伯父さん、私たちの身の回りに起きたこと全部知ってるくせにわざとらしい。女子大生の前だからってスケベ!』

 美穂ちゃんはべーっと俺に向かって舌を出す。

「あれっ、俺何か美穂ちゃんの気に障ること言うたかいな?」

「何も言ってないよぉ。こっちのことぉ」と美穂ちゃん。

「くそっ、それにしても達己の野郎、格好良過ぎるぜよ。そいにモテ捲るしよぉ」と舌打ちする俺に、美穂ちゃんが、「あれっ伯父さん、達己おじさんにやきもちち?」

「そんなんじゃねぇけどよぉ」と不満げな俺に、「先生は先生。先生は私のヒーローやから」と俺に優しく微笑んでくれる美咲。

「おっ、美咲ちゃんありがとう」と破顔一笑の俺に、「もうおじさんったら調子良い」と美穂ちゃん。


「お兄ちゃん杖忘れとるよ」と奈津子。

「今日は調子良いで要らんわ」と言う俺に、「お兄ちゃん、痛くなったら大変やから」と奈津子は浩二に言って、GTOのトランクから杖を取り出させた。

「映画館は裏通りじゃ」と俺が先頭切って歩き出す。

 美咲が、「ねぇ先生…」と寄ってくる。

 俺は頭を掻きながら、「あんまり先生先生ち呼ばれると照れちまうでよぉ」

 美穂ちゃんが、「いいじゃん伯父さん、大作家なんやから堂々と先生って呼ばせてやって。私、この前伯父さんが久留米に来てくれたとき帰らせてしまったけん美咲に友達甲斐ないって怒られたんやからね」と頬を膨らます。

 美咲が甘えた声で、「そう言う訳で先生」と、上目使いに俺の右腕を取って身体をすり寄せてくる。こんな場合、義足の左足をなるべく正常に動かさないと慕ってくれている美咲に悪い。

 美穂ちゃんがにやにやしながら、「おじさん鼻の下伸びてま~す」と冷やかす。

「おういい気分やでぇ」と開き直る俺に、「もうお兄ちゃん、いい歳して若い子にでれでれして」と奈津子が眉をしかめる。

「今日は拓海君来とらんでよかったよ。こんな美咲の姿見たらきっと泣いちゃうよ」と照代。

「私のメインは先生なん。拓海はお腹一杯のときのケーキ。別腹よ」と美咲は悪びれもしない。

「美咲ちゃん喩えが面白ぇな」

「先生とは今度いつ会えるか分からんけん今日はずっと一緒にいるん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ