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夢界の創造主  作者: クスクリ
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54話 エージェント

「高橋の質問に答えさせて貰うわ」

「俺のことを知っとる女子大生・美穂ちゃんからもおんなじようなこと聞かれたわ。そんときも答えたんやが、自分で言うんもなんやけど、俺は良心的な人間のつもりや。確かに俺の力やったら全世界の支配者になれねぇことはねぇが、なる気はねぇ。俺の本体はあくまでもA界にあるし、B界に居座り続けることができねぇなら煩わしい。俺は欲のねぇ人間や。宝くじは絶対買わねぇ。なんでってもし当たったら運ば使い果たしたごと感じるし、金で自分が変わってしまうのも嫌や」

「あっ、一つ言い忘れたわ」

「俺はこのB界じゃ、公営ギャンブル・宝くじの当たり番号が完全に分かるし、スポーツの勝ち負けもスコアごと完璧に分かるけ違法賭博も思いのままや。まぁ作家の収入もざくざく入ってくるけ大金持ちなんやけど、A界には持っていけんけはっきり言うて宝の持ち腐れやな」

 ギャンブルの当たりが分かると聞いて、みんなごくりと息を飲む。まぁ人間だったら当然の反応だ。

 俺は意地悪して、「みんな涎溢しとるぞ」

 うっと渡辺が口を拭く仕草で、「つい金持ちになった自分を妄想しちまいました」

「渡辺、警官にしちゃ反応ええぞ」と俺はにやっとほくそ笑む。

 渡辺が、「ありがとうございます」と軽く頭を下げると、松田が、「しまったぁ、主任に先越されたぁ」と舌打ちする。

「まだまだやな」の渡辺の返しに、場が笑いに包まれる。

「妄想大いに結構や。お前らと知りあった記念にこの机上に大金積み上げて山分けさせてやっても良いんやが、そいは過保護っちゅうかお前らが身を持ち崩したら悪いけん止めとくわ」

 高橋が、「それは当然です」

「ほいでもお前らにはお土産用意しとるけん楽しみにしとけや」


「話がちょっと逸れたが、さっきカミングアウトしたごつA界で不遇かこっとる俺にはB界は憩の場所なんや。やけん居心地のいい世界であって欲しいためだけに俺の力ば使うつもりや。俺も暇やねぇけ全国はカバーできん。北九州だけでもちょっとは住みやすい街にしてぇな。そのために俺は今日お前らば訪ねた。いつの世にも悪は蔓延る。善と悪はA界とB界のごつ相対的な関係や。悪がなくなってしまえば善も成り立たない。必要悪という言葉があるごつ少しの悪は世の中の塩味のごたるもんやろ。そいの犠牲になったもんには申し訳ねぇが」

 俺はキッと唇を結ぶと、「お前ら七人、いや久美ちゃんも入れて八人に俺のB界でのエージェントになって欲しいんや」

 高橋が、「具体的に言って頂きますと?」

「高橋今何歳か?」

「はいちょうど40です」

「こいがキャリアやったらどこまで昇進しとんか?」

「私は大卒の都道府県採用ですが、警察庁採用のキャリアの階級は私の歳だったら警視正以上です。役職は署長以上です」

「お前はこのグループのリーダーや。ノンキャリやったら警部まで出世するんも至難の技やろう。俺に不可能はねぇ。まず高橋ば1ヶ月以内に警視正で折尾署の署長に出世させたる」

「高橋、俺のエージェントになるか?」

 高橋は徐に立ち上がって俺に慇懃に頭を下げる。

「こうして大悟さんとお知り合いになれたのも宿命かと感じております。正義感に燃えるのは警察官の使命です。微力ではございますが力を尽くさせて頂きます」

「微力じゃねぇよ。高橋、お前は俺の親派になったたった今から警察庁長官より力持ったんやで。頼むぜ。まぁ一気にトップまで行かせてもええんやが、一応段階踏まんとスキルは上がらんけな」

「ところで高橋、今の署長はキャリアか?」

「はい、今年警察庁から送り込まれて来ました。東大法学部出です。歳は確かまだ30だったと思います」

「糞面白うねぇな」と俺は吐き捨てた。

 高橋も、「はい、糞面白うないです」

 俺と高橋は顔を見合せて笑う。


「俺には持論がある。俺らが東大法学部に入れるかって言うたらノーや。国家公務員Ⅰ種試験に通るかっち言うたらノーや。やったらキャリアの奴らはこう言うやろ、お前らは小学校から血の滲むような勉強やってきた俺たちを傍目に何の努力もしてこんやったからやと。口ではもっともらしいこと言うても本心はこうや。頭の良し悪しはおぎゃ〜と生まれたときから決まっとる。俺たちは仙人に選ばれた人間やと。お前らがいくら努力したところで仮に太陽が西から昇ったとしても不可能やと」

「渡辺、何んち反論する」

 渡辺は俯いて、「確かにその通りですので何も言い返せません」

 ちっちっ、俺は眼前で指を振る。

「お前らは遊びよった。あいつらは勉強しよった。要するにお前らは勉強するんが苦痛やがあいつらは遊ぶんが苦痛なんよ。あいつらが運のいい星のもとに生まれたっちゅうなら俺に会えたお前らも運のいい星のもとに生まれたっちゅうことよ」

 渡辺は目を輝かせて、「そうですよね」

 高橋が渡辺の肩を叩いて、「そうや。俺たちは大悟さんに選ばれたんや」

 高橋が呼び掛ける。

「みんな大悟さんに付いていくな」

 一斉に右手を突き出して、オー!


「はい」と久美ちゃんが手を挙げる。

「大悟おじさん私も質問していい?」

 高橋が、めっという感じで、「久美ちゃんさっきもやけどいくらなんでも大悟さんにおじさんは失礼や。お茶目過ぎるぜ」

 俺は高橋を制して、「久美ちゃんらしくてええよ。まだ二十歳や。俺の相棒の美穂ちゃんでも22やでぇ。全然気にせんでぇ」

「無意識の力って何ですか?」

 俺は顔を綻ばせて、「久美ちゃん耳敏いなぁ」

「俺の身体で言えば自分の意志では動かせない自律神経に頼らざるを得ない内臓みたいなもんや。内臓は俺が元気に居れるように働くやろ。そいと同じようにA界とB界が乖離した世界にならねぇように調整してくれよんじゃ。このB界は俺が生み出したち爺さんは言うばってさすがに全世界にゃ目が届かん。B界はA界ば鏡に写した世界じゃねぇ。あくまで相対的関係や。さっき言うたごつ男女の関係や。俺はA界の40年後からタイムトリップして来たようになっとるが映画とかドラマのごつ中学生の俺に会うことはない。俺の持論じゃ同一世界に於いてのタイムトリップは有り得ない。歴史に名を残す人物は両世界に同様に存在するが細部に生きとる人間は違うし能力も違う。この二つの世界を同じ歩調で進展させる役割を担うんが俺の無意識の力や。例えばA男とB子が付き合っとったとするわ。A男の感覚は今風でB子の感覚が昭和初期やったら上手くいかんやろ。自然B子がA男に合わせようとする。この原理や。やけんB界にA界と歴史を異にするような力を持つ人物が現れたらたら抹消する。何でって俺がB界で快適に過ごせねぇけんな」

「久美ちゃん分かったや?」

 久美ちゃんは左手の人差し指を顎に、目は明後日に、「う~ん…分かったような分からないような…」

「でもとにかくぅ、無意識の力もおじさんの力でこの世はおじさんの思いのままってことやね」

 俺はくすっと吹き出して、「その通りや久美ちゃん」

「で渡辺、白バイ隊は止めろや。部下の三人引き連れて刑事課長に昇進や。階級はまず警部からや。9月に辞令が出る」

 渡辺は勢い良く立ち上がって、「お前らいいか?」

 三人も気合いを入れて立ち上がると、「主任について行きます」

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