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干支の巫女  作者: 炎の剣製
制御困難の火竜編
3/5

003話 お互いの事情説明

更新します。



目の前に出される焼き魚。

ホクホクとしていてとても美味しそう。

リューグが私のために近くにあるという川辺で魚を捕ってきてくれたのだ。

さらにはなんの力を使ったのか目の前で手から炎を出して魚を焼きだしたのには驚きを禁じ得なかった。


「あ、あの! リューグさん! その炎ってどうやって…」

「どうやって、か…どうやらルカは『魔気』を知らないみたいだな」

「その、魔気って…?」

「その説明も必要そうだな。なに、時間はいっぱいあるからまずはその魚を食べてからルカの今後をどうするか決めようじゃないか。お腹、空いてるんだろう…?」

「うっ…」


それを言われると弱い。

それに先ほどから何度もお腹が鳴ってしまっていたために恥ずかしくて死にたい。

それでいつまでもこちらを優しい目で見てきているリューグさんの視線を視界に入れないように焼き魚にかぶりつく。あ、美味しい…。

それからお腹が相当空いていたのか5匹くらい食べてしまった。


「相当お腹が空いていたんだな…」

「申し訳ありません。ただ、ちょっと色々と事情がありまして…」

「ふむ、そうか。それじゃそろそろ話し合いと行こうじゃないか」

「そうですね、リューグさん」

「ああ、それと呼び方はリューグでいい。いちいち気を使っていたら疲れるだろう?」

「え? でも、知り合ってそんなに時間も経っていないんですけど…いいんですか?」

「ああ。ついでにルカの話しやすい口調でも構わん」

「そ、そうですか…えっと、それじゃりゅ、リューグ…お話をしよっか」

「うむ」


それからリューグにこの世界について教えてもらった。

まず、この世界の名前は『フォースピア』。

そしてこの世界には大まかには五つの大陸がある。

東国の、おもに人族が統治をしていて、武装国家がおもに暮らしている戦国大陸『シンラ』。

西国の、おもに人族とエルフ族、そしてドワーフ族が統治していて、魔導の力によって栄えている魔導大陸『リクシード』。

南国の、おもに人族と獣人族が共存して暮らしていて、実りの豊かな豊饒な大地で各々暮らしの格差はあれど自由に暮らしている自由大陸『ファルクス』。

北国の、おもに魔の力を引き継いでいる吸血種や巨人族、その他にも危険生物が数多く暮らしていて、さらには閉鎖的でどういう暮らしをしているのか分からない極寒大陸『アブゾート』

そして現在私がいるこの土地は世界の中心にあって、主に精霊族や妖精族…私たちの世界でいう幻想の生物が多く住むと言われる神秘溢れる大陸『スピリチア』。


「東のシンラ…西のリクシード…南のファルクス…北のアブゾート…そしてこれら四つの大陸の中心にある中心大陸のスピリチア…」

「ああ。まぁ大まかに覚えておいてくれ。そんなに行き来や往復はしないだろうしな」

「そういうものなの…?」

「ああ。各大陸で独自の繁栄と衰退を繰り返しているのが現状で、俺達は中心世界故にあまり干渉はしないんだ」


ふむふむ…。

これだけ聞いて分かった事だけど、やっぱり異世界だった!

しかもエルフとか獣人とか妖精とか、ファンタジーな世界だった。

これだけ聞いてもお腹がいっぱいになりそうです。


「次に、魔気と呼ばれるものだが、続けてもいいか…?」

「あ、うん」

「魔気とはこの世界の全住人が使う体系だ。おもに二種類あって魔力を主に使う戦闘方法、それと気力を主に使う戦闘方法…中にはこの二種類をバランスよく合わせて使うものもいるが数は限られてくる。この二種類の体系を総称して『魔気』と俺達は呼んでいる」

「その、リューグはどっちなの…?」

「俺か? まぁ、魔力寄りだな。もう先ほども見たと思うが竜の姿にもなれるからな」

「そうなんだ」

「この世界の大まかな事はこんな感じだな。なにか分からないことがあったらその時にまた教える。だが、俺もそこまで博識ではないからお手柔らかに頼む」

「うん、わかったわ」

「よし。それじゃ今度はルカの事情について教えてくれないか? 冒険者でもない限り人間がこのスピリチア大陸にいるのは珍しいからな」


うー、とうとう来たか。

といっても私にもどう説明していいか分からないことが多いんだけどね。

まぁ、とにかく、


「リューグは私が異世界から来たって言ったら、信じる…?」

「異世界…?」


それから私はリューグにこの世界に来た経緯を説明した。

謎の怪異に『干支の巫女』とか訳が分からない難癖をつけられて襲われて、逃げている途中で謎の光が私の周囲を埋め尽くして気づいたらこの森にいた事など…。

リューグはなぜか私が『干支の巫女』について話した部分で目つきを鋭くしていたけど、なにか知っているのかなぁ…?


「…そうか。しかしにわかには信じられないな。なにか、この世界にはない証拠みたいなものはあるか?」

「証拠…あ!」


そう言われてすぐに思いついたのがスマホだった。

私はポケットからスマホを取り出してリューグに見せた。


「これはスマホっていうもので、遠くにいる人と会話ができる機械なんだよ」

「スマホか…それより遠くの人と会話ができるものとは…この世界にも魔導大陸ではそういう類の魔道具があるらしいが、確かにこんな小さな箱で通話ができるのは驚きだ」

「でしょ? でも、この世界ではその機能が使えないの」

「なぜだ?」


どう説明していいか分からない。

電波がないからって言ってもうまく伝わるか分からないし。


「ま、まぁ今は使えないってことで…でもそれ以外にも機能はあるんだよ。例えば…」


そう言ってリューグにスマホを向けてカメラ機能を使ってパシャっと一枚写真を撮らせてもらう。

当然、いきなりスマホが光を発したのでリューグは驚いたのか視界を手で覆っているし。


「今の光はなんだ…? なにか体に影響とかはあるのか?」

「そんなのないよ。代わりにこんなことができるの」


スマホの画面をリューグに見せる。

私も一緒にそれを覗き込むとそこには驚きの表情をしているリューグの顔が映っていた。少し可愛いかも…。


「俺が映っている!? 魂を切り取ったのか!?」

「いやいや、そんな機能じゃないから…これは撮影した人が写真として形に残るものなの」

「写真…では、これはただ単に俺の姿を写し取った鏡みたいなものか?」

「うーん……そんな解釈でもいいのかな? とにかく体には何も影響はないから安心して」

「それならいいのだが…しかし」


リューグはいまだにスマホの画面を覗き込んで唸りをあげている。

確かに珍しいよね。

でも、魔導大陸でももしかしたら似たような機能もあるんじゃないかな?

もし行くことがあったら探してみるのもいいかもしれない。


でも、スマホを見て思ったことがある。

私は写真のフォルダを開いて鈴架やお母さん、クリス達が映っている写真をじっと見つめる。

自然と私は涙を流してしまっていた。


「ルカ…? もしかしてこの写真に写っている人は家族と友人達か?」


リューグが私の涙を掬い上げるように目じりを指で拭ってくれた。

こんな事を平然とするリューグは誑しかもしれないと思ったのは内緒。


「ありがと、リューグ…うん。私の大切な人達だよ。こんな異世界に来ちゃったからどうやって戻れるのかも分からないけど、当面の目標はもとの世界に戻ることを考える事かな…」

「そうか…。ならば俺もなにか手伝えることがあったら相談に乗るから頼ってくれ」

「うん!」


リューグのその言葉がとても嬉しかったので笑顔を浮かべてリューグに返答の意を示した。

だけど一瞬リューグの頬が赤くなったけど、どうしたのかな…?


「どうしたの…?」

「い、いやなんでもない。気にしないでいい」

「そ、そう…?」


ルカは気づかなかった事だがこの時、リューグはルカの笑顔に見惚れていたのだった。


「それよりこれからどうするか…」

「どうするかって…?」

「いや、一応ルカの事を俺の里に案内するのもいいんだが、なにぶん今の俺はまだ里に帰れないんだ」

「え? なんで? なにか事情があるの?」

「う、うむ…それを説明するには俺の力も教えないといけない。俺の中にはとある過去から受け継いできた聖なる力が宿っているのだが、その力が強力すぎていまだに俺は操り切れていないから暴走しがちで、制御できるまで里には帰ってくるなと里の族長に言われていてな…」

「なんか、大変そうだね…」

「うむ。だからルカを里まで案内するのは俺の力を制御しきる時まで待ってもらわないといけない…ルカももちろん元の世界にすぐにでも帰りたいと思うだろうが、我慢してくれるか…?」


そう言いながらもリューグは申し訳なさそうにこちらを見てくる。

なんだ。そんな事くらいなら気にしないのに。


「大丈夫だよ。最初は一人で不安いっぱいだったし、すぐに帰りたいと思った。…けど、今はリューグが私の事を守ってくれるんでしょ…?」

「ああ。ルカの事情も聴いてしまったし、俺の目の黒いうちはなにがあってもルカの事を守る事を約束しよう」

「うん、ありがとう…」


こうしてこの聖なる森の中でリューグと私の奇妙な二人での生活が始まろうとしていた。



まずはこの世界の説明などを書かせてもらいました。

次回からしばらく二人の生活描写ですね。

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