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王太子アレクセイ(下)


俺は、エドワードの隣で幸せそうに笑うリリアーナを見ていることしか出来なかった。


『だーれだっ!』

『ひゃっ!?え、エド先輩!?』

『せーかい!流石だね、僕の可愛いリリアーナ』


…見ていることしか、出来なかった。たとえ、かつては俺に向けていた筈の笑顔も好意も、何もかもがエドワードに向けられていたとしても。見ていることしか、出来なかった。


そして、リリアーナがエドワードと結ばれた時、再び時が巻き戻った。

今度こそ、と思った。今度こそ、リリアーナをこの手に取り戻すのだと。けれどリリアーナが選んだのは俺でも、エドワードでもなく、商会の息子デュバルだった。


デュバルとリリアーナが結ばれた。また時が巻き戻った。次はリリアーナは平民の男、ギランと結ばれた。また時が巻き戻った。今度はレオンハルトと結ばれた。また、時が巻き戻った。

次はまた俺の番だった。けれど、リリアーナは悲痛な最期を迎えて、また時が巻き戻った。次はエドワード、次はデュバル、次はギラン、次がレオンハルト。いずれにしよリリアーナか、相手の男か、もしくは両方が悲痛な最期を迎えて時が巻き戻った。

そして、今度はその五人とリリアーナの隣を争って、決着がつかぬままにまた時が巻き戻った。


そうしてリリアーナとの出会いと別れを何度も繰り返し、俺達はあることに気付いた。リリアーナには、意志がない。リリアーナは、リリアーナの向こうにいる[誰か]の代わりなのだ。例えばリリアーナが俺達の内誰かを好きになったとして、それはリリアーナではなくその[誰か]の意思で、また俺達がリリアーナを好いていても、それはリリアーナではなくリリアーナを動かしている[誰か]に恋をしたにすぎないのだ。


愛した女が、空っぽの人形だと知ったとき、俺達は…俺は、どうするのが正解だったのだろう。

けれど考えれば考えるほどわからなくなる。そうしてまた繰り返しが始まって、ある時俺はある当たり前のことに気付いたのだ。


俺達はリリアーナの容姿に惚れた訳ではない。リリアーナの心に惚れたのだ。ならばなにも問題ないではないか。

それからの俺は、リリアーナという器を通してその向こう側にいる誰かと恋をすることを楽しむようになっていった。他の奴らも遅かれ早かれその事に気付き、吹っ切れた顔でリリアーナに接するようになっていた。

そして一番にその事に気付いたのは俺ではなく、リリアーナに選ばれる事が一番に多かったレオンハルトだったような気がする。


『彼女は、向こう側に居る[誰か]も含めてのリリアーナ、ですから』


充実していた。もしかしたら、初めて彼女と結ばれた時よりも。

だが、彼女がレオンハルトと結ばれてから、次に繰り返しが起こることはなかった。

悔しかった。もしかしたら、今そこに居るのは俺だったのかも知れないのだから。

だが、二人はすぐに破局した。レオンハルトと結ばれた彼女は、ただの器のリリアーナ。俺達の恋した彼女ではなかったのだ。


思えば器のリリアーナには悪いことをしたと思う。レオンハルトに捨てられ、俺達に救いを求めたリリアーナの手を、俺達は皆振り払ったのだから。


今の俺を、彼女が見たらどう思うだろうか。この醜い愛を肯定するだろうか、否定するだろうか。はたまた、恐怖を抱くだろうか。

病に侵され死に行く体で、俺はその事だけを、彼女のことだけを想って逝った。







そして気付けば俺は、また巻き戻っていた。今までと違っていたのは、産まれたその日に巻き戻っていたこと。そして、[彼女]がいたことだった。

間違いない。アリアンヌの姿こそしているが、彼女は間違いなく、リリアーナの向こうにいた[彼女]だった。


『やっと逢えたな…、リリアーナ…!』


君の名前を知らないが為に、つい昔の癖でリリアーナと呼んでしまったのは、どうか許してほしい。


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