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王太子アレクセイ(上)


オルスティア王国の王太子、アレクセイ。俺はそうなるべくして生まれた存在だった。母は他国から嫁入りしてきた王女で、父は当然だが国王だ。容姿、学問、剣術、馬術、人脈作り。その全てを一つの苦労もすることなく自分のものにすることができた。

周囲の人間が言った。貴方以上に次期国王として相応しい人間はいないと。

父が言った。お前にならば安心して国を任せられると。


そして母は言った。あなたは私の誇りよ、と。

誇らしげに、まるで[誰か]を見下す様に言ったのだ。


母は王妃でこそあったが、父の最愛ではなかった。父の心は何時だって、今は亡きライアナ妃の元に有ったからだ。

父に見初められ、平民の身でありながら後宮に召し上げられたライアナ妃は、瞬く間に父の寵妃となった。母がこの国にやって来て、二年目のことだ。

母は、平民の出であるライアナ妃が父の寵愛を一身に受けていたことが気にくわなかったらしい。ライアナという名前すら父が贈った物だということもそれを助長させたのだろう。ライアナ妃は母に執拗な嫌がらせを受けたという。


そしてライアナ妃が来て半年がたった頃、母の肚に赤子がいることが判明した。言わずもがな、俺のことだ。母は歓喜し、喜びのままライアナ妃に嫌味を言いに行った。母の肚に居るのはこの国の世継ぎ。誰よりも早くに伝えるべき、父を差し置いて、だ。

その罰が当たったのか、たどり着いたライアナ妃に部屋の前で母は衝撃的な言葉を聞くことになる。


『ほんとう、に…?』

『ええ、間違いございません。ライアナ様のお腹には、新しい命が宿っているのです』

『…ここに。私達の、赤ちゃんが…!』

『おめでとうございます、ライアナ様…!』


母が俺を身籠るまでに掛かった月日は二年以上。それに対し、ライアナ妃は僅か半年で子を成したのだ。

それを聞いた母はその場で倒れ、一時期は俺の命すら危なかったと聞く。

また、それを聞いた父の反応も母とライアナ妃で全くと言って良いほど違っていた。


『そうか、良くやってくれたな』

『陛下…!わたくしは、貴方様の子を授かれて…!』

『しかしそなたは今や身重の身。部屋に帰り、療養すべきではないのか?』


『良くやったぞライアナ!ははっ、こんなに喜ばしい気持ちになれたのはいつ以来だろうか!!』

『へ、陛下!ライアナ様をお降ろし下さいませ!』

『ふふ。ねぇ、アレクサン。ここに、私達の赤ちゃんがいるのよ』


本来他国の姫である母をここまで蔑ろにすることは許されないことだ。しかし、オルスティア王国は大国なのに対し、母の祖国は弱小国。オルスティアから、援助を受けている身であった。


そしてそのまま月日は流れ、俺が産まれた僅か数週間後、レオンハルトが産まれ、そしてその三日後にライアナ妃は亡くなった。

母はその事を大層喜んだが、やがて【生者は死者には敵わない】ということを嫌と言うほど思い知らされることとなった。


父の色とライアナ妃の容姿を受け継いだレオンハルトに、父は溢れんばかりの愛情を注いだ。それに対し、俺の扱いは稀に顔を出すだけだであり母はその扱いに激怒した。しかしその怒り父ではなくライアナ妃に、ひいてはレオンハルトへと向かっていった。

その結果、レオンハルトは母に何度も命を狙われるようになったのだ。


その傍らで俺は、俺の王位をより確実な物にするためにと母に強制的に付けられた婚約者、アリアンヌと共に何の脅威もなく、命の危険もなく毎日を過ごす。そして再び月日がたって、俺達は学園へと足を踏み入れた。


そして、俺はお前に出逢ったんだ。


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