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5歳になりました


あれから五年。特に何があったという訳でもなく、実に平和に歳を重ねていった私。当時は馴染みのなかったこの国の言葉も、今ではきちんと聞き取れるし、まだ呂律は回らないがそれなりに話せる様になった。人間必要に迫られれば割と何とかなるものだ。実際学生時代は英語が大の苦手教科だった私でも何とかなったのだし。


「アリア、アリア、可愛い可愛い僕のアリア」


そしてそんな私は今、灰色がかった銀の髪をもつ美少年の膝を枕にして眠っていた。

彼の名前はエドワード・レーナード。我がレーナード公爵家の三男であり、私の2つ年上のお兄様。そして、…認めたくはないが、私が何度もプレイした君婚の攻略対象の一人で、所謂ショタ枠。ヒロインの2つ上にも関わらず、年下に見えるほどの童顔で、三男であり一人の兄だからか甘え上手で甘やかし上手。そして悪役令嬢、アリアンヌ・レーナードの兄でもあった。そしてレーナード家に居る女児は私だけで、私の名前はアリアンヌ・レーナード。


ここまで言えば分かるだろう。そう、私は知らぬ内に君婚の悪役令嬢になっていたのだ。


「んぅ…?」

「ふふ。アリア、名残惜しいけどそろそろ食事の時間だから起きなくちゃ」

「…ごはん」


それにしても、私が本来のアリアンヌではないからだろうか。ゲームの中ではエドワードはこんなにもアリアンヌに好意的ではなかった筈だが。それとも時間がたつにつれ段々と妹離れしていくのか。


「今日のランチはなんだろうね?」

「うーん…おにいさまはなにがよいのですか?」

「そうだなぁ…僕は今日はあっさりした物の気分。そういうアリアは?」

「わたくしはおいしいデザートさえあれば…」


そんな話をしつつ、お兄様と手を繋ぎながら歩いていると、ちょうどそこで私付きの侍女の一人であるミーヤの姿を見つけた。


「あ、おにいさま、ミーヤがいます!ランチのこと、ミーヤにきいてみるのはいかがしょう?」

「今日のランチが何か考えるのも楽しいから大丈夫だよ。それよりも早くいかないと。父上達がもうお着きになっているかもしれないよ?」

「あ!」


お父様やお母様達のことがすっぽり頭から抜け落ちていた。こういうことは度々あって、やっぱり前世の記憶があるとはいえ身体は五歳の女の子。目の前の一つのことにしか集中できないみたいだ。


「おにいさま、おにいさま、はやくおとうさまの所にまいりましょう!」

「はいはい。…ふふ。アリアは可愛いなぁ」

「おにいさまったら!」


そうしてたどり着いたお部屋では、お兄様の言葉通りお父様もお母様もすでに来ていて、あと二人のお兄様方は今は学園にいる為、完全に私とお兄様待ちの状態だった。


「ああ。待っていたよ、アリア、エド。さぁ、座りなさい。食事にしよう」

「アリア、エドワードとのお昼寝は楽しかったかしら?良ければお母様達に聞かせてくださる?」

「はい!」


使用人に椅子を引かれて、子供用に作られているという椅子に座る。そこから始まった楽しい昼食の最中。また、すっかりと頭から抜け落ちていた事を思い出した。


「そういえば…、近々王太子殿下の婚約者を決める茶会が開かれるとか」


「…あっ!」

「?どうかしたの?アリア」


小さな声をあげたつもりが隣のお兄様には聞こえていたらしい。なんでもありませんわ、となんてことない様に答えるが内心ではそうもいかない。

王太子、アレクシス殿下は攻略対象の一人であり、またそのお茶会はヒロインとアレクシス殿下が初めて出会う場なのだ。そこで殿下はヒロインに恋をし、婚約者には強くヒロインを望んだのだが、婚約者に選ばれたのは悪役令嬢であるこの私…というかアリアンヌだった、というストーリーがあるからだ。そのせいもありアリアンヌと公爵家は王太子に嫌われていた。まぁアリアンヌの束縛と、公爵家の度が過ぎる甘やかしが主な原因だったから、対して問題ない…と思いたい。


「まぁ!アーサー、それは本当なの?」

「ああ。我が家にも招待状が届くらしい。陛下に伺った話だがね」

「うふふ。ならアリアのドレスを新しく仕立てないと。エミリア、午後にでも仕立て屋を呼んでちょうだい」

「かしこまりました、奥様」


しかし…こんな何回もこなしてきたイベントまで忘れるだなんて、私の頭はつくづくポンコツの様だ。


あ、因みにデザートはモンブランでした。



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