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ちょい前のお話。『宿屋』

「飽きてきました」


隣のベッドで寝転がっている妹がそんな事をいいだした。


「飽きてきたって、まさか倦怠期……」

「ちがいますよ!私たち兄妹ですからそゆのないです!」


ぷんすかーと頬を染めながら怒る。

これをごろんと寝ながらやってるから可愛いんだ。他の人じゃこうはいかない。

一般的にうつ伏せというのは行儀が悪いとされていて、良いイメージが薄い行為だがこれを見たら考えを改めるしかない。うつ伏せは可愛い女の子がやると超可愛いんだ。

しかし倦怠期でないのは良かったが、だとするとなんだろう

最近ツノを仕舞えるのを自慢気に話していたからそれかなと思ったが、それも違うという。

うーん。なんだろう。別に何もしてないから飽きるものもないと思うのだが。

難しい問題だ。上手くやれば小一時間遊べそうだがあいにく今の俺は眠かった。

さっさと答えを聞いてしまおう。


「ならば何に飽きたんだい妹よ」

「何もしないのに、です」


ネーレイのくぐもった声が届いた。

うん?どういう意味だろう。

妹がごろんと寝返りをうち、見つめ合う形になる。

銀の髪がはらりと布団の上を滑る。


「というか兄さんも飽きてるでしょう?もう10日も宿屋に泊まって食べて寝て食べて寝て……。ただそれだけの毎日」


ネーレイは邪気のない純朴な瞳で聞いてくる。

ああなるほど。

説明されて合点がいった。


「うんにゃ全然余裕だよ。俺はここに来るまで2年間はこんな生活を毎日してたんだから。」


そう。俺は完全なる引きこもりだったのだ。高校を数ヶ月で行かなくなり部屋からも出ず二酸化炭素を排出するだけの存在。

そんな俺からすると今なんて最高だ。だらだらして可愛い女の子とおしゃべりできて魔法の練習もできる。莫大な隠し遺産のお陰で金の心配もない。

俺としてはこの最高の日々を続けてれば良いのだが妹はそう思わないようで。


「兄さんみたくならないように絶対何かします」


何かしたいそうだ。


でも何かするというのは俺達にとっては危険も伴う可能性がある。お花摘みやお買い物ならともかく、この街を破壊したいとか世界を血の色で染めたいとか言い出したら兄として止めなければならない。目立つ事は絶対に避けるべきだ。


「それじゃあさ、何をしたいの?」


恐る恐るといった感じで聞いてみる。危なそうなことだったらいくらお願いされても許可しないと、心に決めて。

ネーレイは「んー」と、口に手を当てて考える素ぶりを見せ。


「そうですね。学校に行きたいと思います」


と言った。

一瞬、呆気にとられる。

学校。

考えてなかった可能性だ。

でもそれはちょっとどうだろう。


「学校に行くっての、それは可能なの?」

「校長に魔法を掛ければ可能なはずです。2人の魔法力があれば間違いなく」


あっけらかんと答える。

いけるのはマジっぽい。校長<俺達なのか。

しかし大事なのは


「それって危険でない?」

「危険は……正直ありますね」


苦々しい表情で答えるネーレイ。

危険があるんじゃ駄目だろう。


「うーん、それはなぁ」


ダメダァーメ、ダメだぁと、腕を組み断りの姿勢に入ると妹がしょぼんな顔になった。

うぅ。

そんな顔されると兄は弱い。


一旦考え直す。

危険の可能性ではなく、それを上回るメリットを探そう。

デメリットがあるからといってでかいメリットを逃す2代目経営者のようにはならないとツイッターに向かって誓ったことを思い出した。

俺はやったる、やったるでぇ。

過去の自分の経験を元に思考を巡らす。

ただ残念ながら眠いこともあってか、暫くうんうん唸って考えたがやはり思い浮かばない。

俺は2代目経営者よりも学が無いんだった。

なんだそれ悲しすぎる。

残念だがいつもの様に冗談交えて断ろう。

そう思い、魔法でNOまくらを錬成してぽいと投げつける直前、突如思いついた。

そうか。学校か。つまり学歴だ。

学歴があれば就職もし易いのだと風の噂で聞いたことがある。身元証明するものが無い俺達には最適なのではないか。

身分は大事だ。

魔法を学ぶため遠方からやってきた普通の兄妹。

成績普通の目立たない兄妹。

魔法学校卒の普通の兄妹。

よし。いける。この嘘の身分を固めよう。

これは非常に大きなメリットだ。うん。


「あーなんだ。俺は良いと思うよ。学校。最大限警戒して過ごせるんなら。いいんじゃない」


目線は彼女の寝るベッドを彷徨い、独り言のように言った。

そんな言葉でも彼女は喜んで。


「ほ、ほんとですか!?学校、行っていいですか!?」


答えを聞いた俺は、小さく息をついた。

気がつかなかったが何故だか緊張していたようだ。

念をおすようにしっかりと言う。


「あぁほんとほんと。学校行くのは大事だと思うぜ。校長襲う計画はお前たてろよー」


やったやったと、寝ながら器用にぴょんぴょん跳ねる妹を眺める。

喜んでくれてよかった。

超学校行きたかったんだなぁ。


だとしたら、何故そうも俺の許可を求めるのだろうか。

小さな疑問が残った。

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