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REAL WITCH ~EXODUS~  作者: 山極由磨
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今回はかなり残酷な描写がありますのでご注意ください。

 生き残った九人は素早く散開し反撃を始める。

 が、虎鉄の動きは素早過ぎた。

 銃口が自分に向く前に相手の眼前に迫り、斜め下からアッパー気味に猫パンチ。

 顎から下を吹き飛ばし、返す拳で横腹を殴りつけあばら背骨をブチ砕き肝臓腸を飛散させる。

 亜音速で飛来する7.62mm弾をしなやかに交わし、その射手の喉笛に食らいつき、体ごと振り回して二人ほどを薙ぎ払い、口にした相手を地面にたたきつけ首を千切り取る。

 残る四人は反撃を放棄し遁走を始めるが、虎鉄の俊足に敵うはずがない。

 瞬く間に先回りされ、一人は銃口を向ける間もなく必殺の猫パンチで脳天を砕かれ、もう一人は振り下ろすように繰り出された鋭い爪でマスクごと顔面の肉を削がれ、背中を向けた者は背後から圧し掛かられ延髄を食い千切られ、首をもぎ取られる。

 そのすきに材木の山に隠れた最後の一人は、目の前にしなやかに着地した虎鉄の姿を認め、戦慄し硬直した。


「みーっけた。でーん」


 繰り出された右前脚の肉球と輸入丸太の間に腹を挟まれ、最後の男は尻の穴から腸を噴出させ事切れた。


 二階を目指す隊の足元に突然黒い影が落ちる。

 頭上を見上げる間もなく先頭を走る二人が宙に浮いた。

 アントニオが頭をつかみ持ち上げたのだ。

 最初は六十四式を撃ちまくっていたが、結局自分の体重で頸椎をへし折られ動かなくなった。

 そいつらを離すと次の獲物めがけ飛来する。

 狙いすまし撃ち落とそうとするものの、あまりにも動きが素早く捉えられない。

 自分めがけ飛翔するアントニオを捉え、引き金を引き絞るが、恐ろしく硬い嘴に弾丸はことごとく跳ね返され意味を成さない。

 全弾打ち尽くし、マガジンの交換が間に合わず、目の前にはぱっくり開いたアントニオの口。

 研ぎ澄まされた刃物のような嘴は的の頭を叩き切り、ついでとばかりに並んで自分に銃口を向けた二人の肩と頭を掴んで急上昇。

 グングン登って、木材会社の敷地全体が見える高度まで達すると、アントニオは。


「南港の夜景が綺麗だぜ。最後に見る風景としちゃぁ、乙なもんだろ?ええ?」


 と、囁いた後、爪を放し二人を空中に放り投げた。

 残る五人、必死で走り建物を目指す。逃げ込めば勝算はあると踏んだのだ。

 しかし、途中で一人がアントニオに浚われ、空中で鋭い爪の餌食になると、その死体を素晴らしいコントロールで自分めがけ銃撃してくる敵に叩きつける。

 位置エネルギーと死体その物の重量をモロに食らい、体中の骨を砕かれ内臓を破裂させ絶命する。

 一緒になって行動するのは不味いと踏んだ三人は、散開してアントニオから逃れる。

 だが、一人、また一人とアントニオにつかみあげられ、一人は海に叩きこまれ、一人は材木の山に突っ込まれ、最後の一人は立てて並べられた足場用木材に突き刺され絶命した。


 社屋の背後を狙う隊は、そこここで上がる仲間の断末魔に動揺しつつも、周囲を警戒しつつ前進する。

 不意に、甲高い噴射音が聞こえたかと思うと、目の前の仲間が吹っ飛ぶのが見えた。

 足を止め、地面に叩きつけられ動かない仲間を見る。

 こめかみに角材で出来た杭が深々と刺さっている。

 そして、またあの噴射音。

 音源を探すと、何本もの木の杭が蒸気を噴き上げつつ宙を飛び、自分たちめがけ殺到して来るのが目に飛び込んだ。

 六十四式を乱射し杭を撃ち落とす。

 数本は撃ち落とせたが、撃ち漏らした二本が一人の腹に突き刺さり、もう一人の眉間に食い込む。


「『クローセル』のペンタクルを使うて、木材の中の水分を沸騰させて推進力にしたんや。名付けて角材ミサイル」


 と、材木の山に仁王立ちし、得意げに小鼻を広げて講釈を垂れる慧。

 ブラックレザーのショートトレンチコート、同素材のショートパンツに黒いタイツ、足元はロング丈のエンジニアブーツ、そして、インナーはなぜか黒とグレーのヒョウ柄セーター。


 突然の登場にあっけにとられた殺し屋たちだったが、気を取り直し七つの銃口を彼女に向ける。

 しかし、一斉に7.62mm弾が殺到する前に、慧はコートの裾をはためかせつつ、右手で宙を一薙ぎ、

 途端に殺し屋たちの目の前を巨大な丸太が現れ直立して前を塞ぎ、全弾を受け止める。その数七本。


「同じ原理を利用して、蒸気の噴出場所を変えたらこんなにでっかい丸太ん棒でも自由に動かせるようになるんや、さぁ、殺し屋ども、しばらく丸太と遊んどきぃや!」


 彼女の怒声と共に、水蒸気をあちこちから噴出させた丸太が七人に迫る。

 乱射しながら散らばって逃げる七人だが、丸太もそれぞれ自分の相手を定めたかの様に追いかけだす。

 しばらく追いかけっこは続いたが、その内、三人が丸太につかまり倒れかけられて粉砕され、二人は壁際に追い詰められた所を、左右から角材ミサイルの一斉斉射を喰らってめった刺し、残りの二人は深さ一メートル半は有ろうかという排水枡に身を隠し、やり過ごそうとしていたのを慧に感づかれ、上から丸太を垂直に叩きつけられて、まるで正月の餅よろしく肉と骨の塊になるまで様に突きまくられた。



 のっぺらぼうが放つ警戒音で飛び起き、窓際に潜んで外の様子を探った柳瀬が見たのは。音もなく迫りくる白丁面の殺し屋たちの姿だった。


「奴らの追手だ!」


 何が起きたのか一発で理解した柳瀬は、治療がある程度進んだパイガオとダーハイズを何とか起き上がらせ、他のキメラやホムンクルス達と共に屋上に逃れる。

 とりあえず立って歩けるだけの二匹では、到底殺し屋共は防げない。途方に暮れているときに、あちこちからくぐもった銃声と、男たちの悲鳴が上がった。

 足元が一瞬、暗くなったので頭上を見ると、巨大な鳥が人を二人掴んで飛んでおり、眼下では巨大な獣が何かを追いかけまわし、眼を転じれば直立した長大な丸太が湯気を上げ跳ね回っているのが見えた。

 一瞬、何が起きているの解らなかったが、夜風に乗って聞き覚えのある少女の声が聞こえてきたので事態を理解することができた。


「さぁ、殺し屋ども、しばらく丸太と遊んどきぃや!」


 慧がやってきたのだ。

 使い魔か、何らかの魔法、木星第五か六のペンタクルあたりを使い、事前に網を張っており、DHDの襲撃を察知して待ち伏せをかけたのだろう。

 彼女の抜け目無く、冷酷な手管に圧倒されつつ、目の前で繰り広げられるほとんど一方的な殺戮を眺める。

 やがて静かになり、恐る恐る屋上を持して外に出ると、すでに通常サイズに戻った虎鉄とアントニオにこびりついた血を、散水栓の水で洗ってやっている慧に出くわした。

 精霊アイムのペンタクルをスマホに呼び出し、ホースから出る水を湯に変えてやり一匹と一羽にかけてやっている。


「助けて、くれたのか?」


 ホースを持ったまま、振り返りもせず慧


「ほっといても良かったんやけどな」


 水を止め、ホースを投げ出し、踵を返して向き直り。


「もう、ここには居られへんで、どないする?」


 血の混じった湯が流れる地面を睨み、しばらく黙っていた柳瀬だが、不意に顔をあげ慧を見つめ。


「とりあえず、ここは出て行く。満州行きは・・・・・・。少し考えさせてくれ」

「はぁ?ナニ眠たい事ほざいてんの!現状理解してるん?あんた!」


 と、反射的に柳瀬を罵倒した慧だったが、腕組みしながら暫し考えた後。


「密航業者と待ち合わせするまで潜伏する場所は京都の丹後半島に準備したある。倒産したリゾートホテルや。そこに一時避難するか?満州行くかは止めるかはそこで考えたらエエ」

「そうしてもらうと助かる」


 思わす妥協案に柳瀬の顔に安堵の表情が浮かぶ。


「そこまでの足もマイクロバス一台とデカイの乗せる六.五トンの箱車一台。運転手付きで準備ずみや、今すぐ呼ぶから一時間後に出発。費用はさっきのドンパチの分と、船に乗るまでうちらが護衛につく分も含めてブッコミで一千万。勿論、満州までの運賃は別。どないや?破格値やとおもうけどなぁ」

「い、一千万だって!残忍な上に強欲だな!君は!」

「ほとんど経費や、うちの儲けなんて十パー切ってるんやで、そんだけの大人数連れて逃げるんや、はした金で済むかいな」


 また黙り込む柳瀬。しばらくして、自分の背後の気配に気づき、振り返る。

 いつの間にか、キメラやホムンクルス達が屋上から降りてきて、彼を不安げに見つめている。

 

「解った一千万でお願いする」


 答えに、慧は満面の笑みで答えた。


「おおきに、ほな、柳瀬御一行様のEXODUS。大阪一、つまりは日本一、早い話が世界一の大魔女、武本慧が、責任もって請け負わせてもらうわ」

 

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