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REAL WITCH ~EXODUS~  作者: 山極由磨
3/19

虎鉄、アントニオと共にタクシーを降りると、三月の冷気が慧を包み込む。


 裾や袖口にフリルをあしらったブラックレザーのライダーズジャケット、同素材のホットパンツ、厚手のニーハイソックスにエンジニアブーツという出で立ちでも少々寒い。


 息を吸い込むと結構キツイディーゼルの排気ガスが鼻に飛び込む。海の近所なのに潮の匂いなんてちっともしない。

 ニュートラムの高架が上に走る道路を渡ると、材木がまばらに浮かぶ貯木場に突き当たり、そのまま左に曲がって最初の交差点を今度は右折。ここで慧はアントニオを先行させ空から物件を探させるが早速。


「すまねぇ、何処にあるかサッパリ解らなかったぜ」


 と、小首をかしげながら慧の元に戻ってきた。


「空を飛ぶ者の目ぇまで眩ませるとは、何とも御念が入ったこっちゃわぁ」


 そうつぶやく虎鉄に、


「そこそこ実力のある魔術師が絡んでるみたいやな、楽しみになってきたわ」


 慧は愉快そうに笑いながら進んでゆく。


 道は対抗二車線でかなり広く、丸太や製材済みの木材、ベニア板などを積んだトラックが走り、左右には木材関係の工場や倉庫が立ち並ぶ。

 木の匂いがあたりに立ち込め中、上空にアントニオを飛ばし、虎鉄を先行させて周囲に気を配りつつ歩くが、一向に目指す木材輸入会社の看板も、破産管財人の張り紙がされた門扉も現れない。何度も森本からもらった地図と周囲の風景と見比べてみるが、目的地以外の記述とは一致するが肝心の場所がいつままでたっても現れなない。スマホの画面に呼び出した地図では、自分はすでに目的地前に到着している事になっては居るが、目の前にあるのは何処かの工場のコンクリート塀。


「やっぱし、フォラスか」 


 そう呟きつつスマホのディスプレイにタッチし、地図を隠して別のアプリを起動させる。


 最初に現れたのは中に一個の四角形と四つの六芒星を配した三重の同心円を四つの五芒星と三角形で更に囲んだ魔法陣。そして呪文を詠唱しつつ別の図形を呼び出した。土星第五のペンタクルだ。


「法の霊樹によりて招来せし汝『土星の精霊』よ、我の求めに応じ力を与えよ」


 すると、目の前にいきなり現れたのは塗装が剥がれサビがあちこちに浮いた鉄の門。

 破産管財人の張り紙の上にはマジックインキで黒々と書かれた円形の紋章。人の認識力を操り狂わせ人や建物までも認識できなくする精霊『フォラス』の物だ。


 森本から借りた鍵で南京錠を外して敷地内に入る。その途端、虎鉄が囁いた。


「臭っさぁ、獣の匂いがすんなぁ、なんかややこしいもんが居るで」


 すると、バキバキと骨が成る様な音を立てつつ彼の体が徐々に膨らんでゆく、皮膚が伸びまばらになった毛も直ぐ様生えて体を覆い、瞬く間に慧の傍らには牛ほどもあるでっかい三毛猫が現れた。

 黒い羽が何枚も慧と巨大化した虎鉄の前に落ちてくる。見上げればこれまたハングライダーほどに巨大化したアントニオが悠然と空を舞う。

 前方を指差し歩き出す慧、サッと音もなく彼女の前に出て先導する様に行く虎鉄、積み上げられた丸太の間を慎重に進む。

 突然、アントニオの声が頭上から降ってきた。


「虎鉄サイズの犬みたいのがそっちへ向かってる。方向は三時、気をつけろ!」


 虎鉄が身構えたとたん、慧らの右手にある丸太の山を飛び越して白い巨大な影が躍り出る。

 空中を高くジャンプし慧めがけて急降下を仕掛けるその姿は確かに犬。ボルゾイそっくり。しかし四本の足はウロコに覆われ爪は猛禽類そっくりの鋭さ。

 慧にのしかかる寸前で黒い影が横っ腹に激突、巨大ボルゾイはものの見事に吹っ飛ばされ積み上げられた丸太にぶち当たり、一本数百キロはある巨木を派手にぶちまける。

 それでもダメージは大したこと無いのか直ぐ様立ち上がりまた猛スピードで突進してきた。


「虎鉄!アントニオ!ここは任せたで!」


 そう言って走り出した慧の背中に向け、巨大ボルゾイを翼を広げ牽制しつつアントニオが答える。


「おう!」


 虎鉄はアントニオに阻まれ突進を止めた敵を睨みつけつつ。


「綺麗なワンちゃんやなぁ、ウチが足腰立たんようになるまで可愛がったるわ、覚悟しいや!」


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